犬の鼻腔狭窄って、どんなもの?
あまり聞き慣れない名前かもしれませんが、短頭種と暮らす飼い主さんには、ぜひ知ってほしいものです。
愛犬が短頭種ではなくても、犬の暮らす上での知識として知っておくと、役立つときがあるかもしれません。
鼻腔狭窄は「びくうきょうさく」と読みますが、短頭種の場合は、「短頭種気道症候群」とよばれる病態の一つに含まれています。
鼻腔狭窄とはどのような状態なのか、原因や症状、鼻腔狭窄になりやすい犬種などをご紹介します。
鼻腔狭窄の病状について
ポメラニアンの鼻のアップ写真と、フレンチの鼻のアップ写真を比べてみてください。
フレンチブルドッグの鼻の穴がキュッと狭くなっていることがお分かりいただけると思います。
この状態のことを鼻腔狭窄と呼んでいます。
鼻の穴だけではなく、その奥に繋がっている鼻腔という空間も狭くなっている状態です。
鼻腔狭窄の原因とは
鼻腔狭窄はいわゆる先天性の奇形です。いくつかの犬種、つまり鼻が短いといわれている犬種の特徴でもあります。
- フレンチブルドッグ
- ボストンテリア
- パグ
- ブルドッグ
- ボクサー
- ペキニーズ
- シーズー
- キャバリアキングチャールズスパニエル
などが、鼻腔狭窄になりやすい犬種であるとされています。
短頭種気道症候群
短頭種である犬は、短期間で選択繁殖されてきたことが原因となり、骨が短くなっています。
骨は短くなっているのに、その骨を覆っている軟部組織は短くなっていません。
内側と外側のサイズ感が違うことによって、皮膚がたるんでしまったり、軟骨形成不全をおこし鼻腔が狭くなってしまったりするのです。
フレンチブルドッグやパグの顔のシワはとても愛らしいものですが、そんな事情が隠されています。
鼻腔狭窄になるとあらわれる症状
鼻の穴が狭くなる
これは、すぐに気づくことのできるものです。
愛犬が短頭種である場合、鼻の穴は狭くないかな?とチェックしてあげると良いです。
狭いのではないか、鼻腔狭窄なのではないかと感じたら、すぐに獣医さんに相談しましょう。
同じ短頭種である犬種と、鼻の穴の大きさを見比べてみるのも良いと思います。
鼻を鳴らす
呼吸をしているだけなのに、グーグーと鼻を鳴らしたり、まるで豚さんがブーブーと鳴いたりするような音を鼻から出すことがあります。
病院の待合室で、フレンチブルドッグの男の子と会ったことがあるのですが、鼻をグーグーと激しく鳴らしており、「治療中なの」と飼い主さんがおっしゃっていました。
あまりにも大きな音なので、周りに迷惑をかけてはいけない、事情を説明しなければならない、と感じたのかもしれません。
呼吸が荒くなる
重度である場合、呼吸が荒くなり、とても苦しそうになります。
これも病院の待合室であったパグの男の子のお話なのですが、真冬の凍えるくらい寒い日、ずっと苦しそうにパンティングをしているんです。
まるで激しい運動を長時間したかのような感じでした。
暑くてパンティングをしていたわけではなく、鼻腔狭窄によってうまく呼吸できず荒い呼吸だったのです。
見ている方も苦しくなってしまうくらい、つらそうにしていました。
呼吸困難とチアノーゼ
鼻腔狭窄の引き起こすものに呼吸困難もあります。
呼吸がしづらいことで酸素が不足し、チアノーゼを伴うこともあります。
平常時や寝ている間にも鼻からグーグーと音が鳴っていたり、苦しそうに荒い呼吸をしたりしているのが、鼻腔狭窄の特徴です。
呼吸困難やチアノーゼを引き起こす前に、対処しなければなりません。
鼻腔狭窄の治療法
保存療法
軽度である場合には保存療法が用いられます。
今以上に悪化してしまわないよう現状維持をするといった治療法です。
正常な状態である犬と比べて、呼吸をすることが大変です。
パンティングによって体温を調節することが苦手です。
そのため、熱中症にかかりやすいという点に注意が必要です。
外科手術
重度であり、呼吸困難をおこす場合や症状の悪化を防ぐためには、外科手術が用いられます。
鼻腔を広げるための外科手術では、鼻の軟骨や周辺の皮膚を切除することで、鼻の孔を広げるのだそうです。
何だかとても痛そうですが、呼吸が楽になるのであれば選択するしかないですよね。
まとめ
原因が先天性の奇形である以上、予防することができません。
生まれつき重度である犬もいるようです。
肥満になってしまわないように食事の管理をしたり、呼吸困難やチアノーゼや熱中症になってしまわないように運動の管理をしたり、軽度である場合にもお世話することには大変なことも多いようです。