犬の陥る分離不安とその対策について

犬の陥る分離不安とその対策について

飼い主が離れるとペットが陥ることがある心の病気「分離不安」。犬にも人間にも辛い症状ですが、気付けていない飼い主さんもいるかもしれません。ここでは、犬の分離不安について述べて参ります。

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記事の監修

  • 獣医師
  • 平松育子
  • (AEAJ認定アロマテラピーインストラクター・ペットライター )

獣医師・AEAJ認定アロマテラピーインストラクター・ペットライター
山口大学農学部獣医学科(現:共同獣医学部)卒業。2006年3月~2023年3月 有限会社ふくふく動物病院 取締役・院長。ジェネラリストですが、得意分野は皮膚疾患です。
獣医師歴26年(2023年4月現在)の経験を活かし、ペットの病気やペットと楽しむアロマに関する情報をお届けします。

「分離不安」という言葉を知っていますか。ペットを飼っている方なら、耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。

この症状は、犬が抱える心の病であり、完治させるのは根気のいるものです。犬に留守番をさせて出掛け、帰宅すると、部屋のものが破壊されていたりトイレではない場所で粗相をしていたりと、異常な行動が見られる場合には要注意。

この記事では、「分離不安」について、症状や原因、対策についてご紹介します。

分離不安とは

不安そうにブランケットをかぶる黒い犬

分離不安とは人間の乳児にも見られる症状で、愛着を持つ対象者が自分から離れ去ったと感じたとき示す不安反応のことです。

分離不安症の犬は、飼い主が目の前からいなくなると不安反応を示し、ひどい場合はパニック状態に陥ることがあります。落ち着かずにうろうろする、吠える、物を破壊する、トイレ以外の場所で排泄する、自傷行為などの症状が見られます。

分離不安の原因

ベッドの上で犬にキスをする女性

犬の分離不安の原因は大きく分けて下記の5つを挙げることができます。

①飼い主への依存

飼い主が犬と常に一緒にいたり、過剰に甘やかしたりしていると、犬は飼い主に依存してしまいます。そのような状態で、依存の対象が目の前からいなくなると、大きな不安を感じてしまうのです。

②バックグラウンド

以前に飼い主が変わるなど、複雑なバックグラウンドを抱えている犬は、分離不安に陥りやすい傾向にあります。「また飼い主がいなくなってしまうのではないか」「帰ってこないのではないか」と、過去の経験による不安を感じてしまうのです。

③社会性の欠如

外の世界や家族以外の人間、他の犬に接した経験が極端に少ないと、外界への不安感が大きく、分離不安の症状に繋がります。

④留守中のトラウマ

犬が1人で留守番をしているときに、何か嫌なこと・怖いことが起こった経験がある場合も、分離不安の大きな原因になります。雷や地震が主な例。

⑤性格

犬は個体によって全く性格が違うので、より怖がりな性格な子ほど分離不安に陥りやすい傾向にあります。犬種としては、パピヨンやダックスフンドに多いようですが、やはり個体差によります。

他にも犬によって原因は様々

「一人になるにあたって、不安だと感じることがある」ということが原因なのです。

分離不安の対策

寂しそうに窓の外を見つめる犬

対策としては、とにかく犬の抱える「不安」を解消すること。長い目で様子を見ていくことも大切です。

①構いすぎない

日頃から不必要に構いすぎず、犬と適切な距離を保つこと。可愛がらないということではなく、メリハリをつけて接することが大切です。

たまには犬をハウスに入れて一人の時間を持たせること、同じ部屋にいても犬に構わず本を読んだり料理をしたりと、それぞれの時間を持つことなど、同じ家の中でも独立した行動を取る時間を作りましょう。慣れると一人遊びをしたり、寝たり、自分で考えて時間を使うようになります。

②これから1人になるという不安を取り除く

犬の目の前で、出掛ける準備をしたり荷物を持ったりすると、犬が「これから飼い主が出掛けてしまう」と不安を感じてしまいます。犬が気づかないように、鞄をあらかじめ玄関に置いておいたり、おやつを食べさせている間に準備をしたりする等、工夫をしましょう。

また、出掛ける際に声を掛けるのも逆効果。トリーツを入れられるおもちゃにおやつを入れるなどして、夢中になっている隙に、静かに出掛けるようにしましょう。飼い主が行ってしまうという強迫観念を取り除き、いつの間にかいなくなっているという方が犬にはストレスにならないのです。

③留守番中に起こりうる不安対策

留守中に雷が鳴ってしまったら、地震が起きたら、人間と違って状況が理解できない犬にとってはより恐怖を感じるものです。トラウマにさせないためにも、天気が悪化する可能性がある場合には部屋のシャッターを閉める、地震のときに大きく揺れたり、音が鳴ったり落ちたりする不安定なものは、部屋に置かないなど。
テレビや犬に良いヒーリング音楽をつけたまま出掛けるというのも効果的です。

④ハウスに慣れさせる

犬は自分のいる場所を縄張りと認識して守ろうとする性質を持ちます。分離不安の犬は、留守番の際に広い部屋で1人にしてしまうと、大きな縄張りの中で1人という状態に不安を感じてしまうのです。

そこで、ハウスに慣れさせること。日頃から、寝るときやゆっくりと一人遊びをしていてほしいときなどは、ハウスに入れる習慣をつけておくと、狭いハウスの中を自分の居場所として認識します。

もともと洞窟をねぐらとしていた犬なので、狭いスペースはより安心できる空間。留守番中もハウスに入れるようにすると、慣れるに従い不安感が薄れていきます。

⑤帰宅時の対応

帰宅時に大袈裟に褒めてしまうと、犬自身が留守番を「大変なこと」だと認識してしまいます。帰宅時には軽く声をかけるくらいで自然に振る舞い、ゆっくりとコミュニケーションを取りましょう。

代表的な対策を5点紹介しましたが、大切なのは「その犬が不安に思う原因を取り除くこと」。原因は犬によって違うので、自身の犬がどんなことを不安に思っているのか、よく考え観察してあげましょう。

犬との信頼関係を

人の手の上に置かれた犬の手

分離不安は、犬にとっても人間にとっても辛い症状。叱るのではなく、放っておくのでもなく、犬の気持ちに寄り添って、原因の追求に努めましょう。動物病院で相談するのも良いでしょう。

留守番をしても飼い主は必ず帰ってくると、自立した信頼関係を築き、留守番中もリラックスして過ごせるようになると良いですね。

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