犬の股関節形成不全について 症状から予防、治療方法まで

犬の股関節形成不全について 症状から予防、治療方法まで

大型犬に多く見られる股関節形成不全。これは、治療も予防も難しく長期的な対応が必要となる、骨と股関節の病気です。この記事では、股関節形成不全についてご説明して参ります。

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記事の監修

  • 獣医師
  • 平松育子
  • (AEAJ認定アロマテラピーインストラクター・ペットライター )

獣医師・AEAJ認定アロマテラピーインストラクター・ペットライター
山口大学農学部獣医学科(現:共同獣医学部)卒業。2006年3月~2023年3月 有限会社ふくふく動物病院 取締役・院長。ジェネラリストですが、得意分野は皮膚疾患です。
獣医師歴26年(2023年4月現在)の経験を活かし、ペットの病気やペットと楽しむアロマに関する情報をお届けします。

股関節形成不全という病名を聞いたことはあるでしょうか。大型犬を飼っておられる方は、耳にしたことがあるかもしれません。

股関節形成不全とは骨と関節の病のこと。慢性的に痛みを伴うこともあり、適した対応や治療が必要となります。

ここでは、股関節形成不全について、その症状や原因、予防策、治療方法などを詳しくご紹介いたします。

犬の股関節形成不全とは?

犬の後ろ足

股関節形成不全とは、犬が発育する過程で、股関節の形成に異常が起こる病気のことです。レトリバー種をはじめとした大型犬に高い発症率を有し、小型犬にはほとんど見られません。

股関節形成不全では、本来丸いはずの大腿骨の先が変形していたり、それを支える骨盤の窪みが浅かったりして、股関節がゆるみやすく不安定になるため、関節がうまく噛み合わずに関節症を引き起こします。通常は両脚に発症しますが、稀に片脚のみに見られることも。

慢性的に関節部分の痛みが伴い、また股関節の動きが制限されるため、下半身を使う動作に消極的になったり、ふらふらと歩行に安定がなくなったりします。

犬が股関節形成不全になっている時の症状

元気が無くておとなしい犬

症状は主に幼齢期に発症すると言われていますが、個体により症状の重さや痛みが違うので、目に見える症状にも違いがあります。股関節の動きが制限されること、痛みがあることを頭において、愛犬の様子を観察しましょう。

下記は一例であり、何か異常が見られた場合は、動物病院を受診しましょう。また、中には症状が出ない場合もあります。

  • モンローウォーク(左右に腰を振るような歩き方)
  • 横座り(真っすぐでなく片脚を伸ばすようにして座る)
  • 兎跳び(後脚を同時に動かして走る)
  • 立ち上がりが遅い
  • 運動を嫌がる
  • 段差の登り降りを嫌がる
  • 脚を引きずるように歩く
  • 内股に見える など

犬の股関節形成不全の要因と予防策

道路の上に座る犬の足

股関節形成不全は、遺伝的な要因による部分が大きいとされていますが、詳しいことはわかっていないのが現状です。しかし、環境的要因としては、成長期の偏った食事や運動が挙げられます。特に大型犬において、幼少期の激しすぎる運動は、股関節形成不全の原因になり得るとされており、注意が必要です。

また、一方で肥満も要因の一つと言われています。骨格に適正な体重を超えていくと、大きく重い体を支えるのに、関節や骨により大きな負担がかかります。

体の負担となるような激しすぎる運動は控えつつ、毎日の適度な運動ときちんとしたカロリー管理で、理想体重を保つことが求められます。また、フローリングなどの滑りやすい床は、犬の身体に負担を与えます。クッションフロアやカーペットをひくなど、滑らない工夫をすることも必要です。

さらに、肉球周りの被毛が伸びていると、肉球の滑り止めが効きにくくなり危険。定期的に、肉球に被毛がかからないようにトリミングしましょう。

犬の股関節形成不全の治療方法

診察台の上の犬とレントゲン写真を見る獣医師

まず動物病院にて、身体検査やレントゲンなどを行い、症状を見極めます。症状が比較的軽度の場合は、獣医師の指導の元、運動を制限し安静に過ごさせます。

具体的な治療が必要と判断された場合は、

  • ①薬による治療
  • ②健康管理
  • ③リハビリ
  • ④手術

といった治療方法が挙げられます。

①薬による治療

鎮痛剤や抗炎症剤、軟骨保護剤を投与する治療。病気を治すというよりは、痛みを管理する方法です。毎日の生活に痛みを伴うということは、犬にとってストレスや負担がかかること。薬で痛みを取ってあげることも必要です。一方、薬には副作用が見られるものもあるので、上手に薬を使うことが大切です。

②健康管理

主に体重管理と運動管理を指します。カロリー計算を行い、肥満を解消もしくは予防し、運動は控えめに制限します。根本的部分の治療にはならないですが、飼い主のできる大切な治療の一つです。

③理学療法など

リハビリテーションによる治療です。

④外科手術

症状が酷い場合や、今後の悪化予防のために、外科手術を行う場合もあります。ひとえに手術といっても、骨を矯正したり人工物で補ったりと幾通りかの方法があり、年齢によって、又は症状によって適した方法は変わってきます。手術となると、犬への負担は大きいものとなり、療養期間も長くなるので、獣医師とよく相談しましょう。

愛犬の様子を普段からよく見ておこう

芝生の上を思い切り走る犬

犬の股関節形成不全について述べて参りました。犬は言葉を話せず、少しの痛みなら日常通りに振る舞うので、飼い主がその症状に気が付かないこともよくあります。そのまま散歩や運動を続ければ、症状が悪化し、愛犬が酷い痛みに苦しむこともあるのです。

予防策を徹底し、毎日の愛犬の様子や違いを、しっかりと見ていてあげることが必要です。

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