人間の発症はしばしば耳にしますが、犬も「てんかん」を発症する場合があることをご存じですか。てんかんは痙攣発作を伴います。突然の激しい症状に、パニックになってしまう飼い主さんも少なくないでしょう。
しかも、このてんかん発作は突発性のものが多く、急に発作を起こします。だからこそ、いざという時のために「てんかん」についての知識や対処を知っておきたいものですね。ここでは、犬のてんかんについて、その症状や原因、対処方法など詳しくご紹介いたします。
犬のてんかんとは
てんかんとは、発作や意識障害を主な症状とする慢性的な脳疾患のひとつで、脳を形成している神経細胞の異常により発症します。ふだんは、普通の生活を送ることができますが、突如発作が起き、それを繰り返します。その間隔は個体によって違い、頻繁に発作を起こす個体も、年に1回程度の個体もいます。
発作は基本的には自然と治りますが、症状の状態によっては止まらなくなる場合も。発症割合は、犬では100頭に1匹、猫ではそれ以下と言われています。
犬のてんかんの症状とは
上記の通り、主な症状として発作が挙げられます。全身が痙攣する場合や、身体の一部分だけが痙攣する場合など、その症状は様々であり、脳のどの部分に疾患があるかによって変わります。よって、毎回身体の同じ部分に、痙攣反応が出ることが多いとされます。
全身の発作
脳全体が興奮状態に陥ると、全身に発作が出ます。この場合、痙攣が起こる前にも様子に異常が見られ、そわそわと不安そうにしたり、涎を垂らしたり、嘔吐したりすることがあります。
痙攣に陥ると、瞳孔が開き、全身がかたまったように震え、手足を動かすといったような様子が見られます。
これは見た目にかなり激しい痙攣で、体を仰け反らせたり、口から泡を吹いたり、失禁症状が見られたりすることも。このとき、犬は意識をなくしていることが多く、痙攣が治まった後も少しの間意識障害が見られます。
数分で治ることが多いですが、症状によっては短い間隔で繰り返したり、止まらなくなったりすることも。
部分的な発作
脳の一部分の反応による発作で、身体の一部分に起きます。前脚だけ、顔面だけが痙攣するというふうに。尾を追ったり、見えないものを追いかけるような不自然な動きをしたり、攻撃的になったりと、意識はあるものの、異常な行動を起こすことがあります。
犬に発作が起こったら?
てんかんによる発作が起こったときの、飼い主からの処置としては、「犬には触れず周囲から保護し、様子を細かく観察しておくこと」です。愛犬が発作を起こすのを目の当たりにすると飼い主は驚いてしまうでしょうが、とにかく落ち着いて対処することが大切です。
そして、抱き上げたり体を押さえたりしないようにしましょう。このとき犬には意識がないため、噛まれたり痙攣の激しい動きで怪我をしてしまうことがあります。
また、激しく動く犬が怪我をしないようにスペースを作り、毛布やクッションで周囲を保護します。後から動物病院で説明できるよう症状や時間を細かく確認し、動画を撮っておくのも良いでしょう。また、獣医師に電話で支持を受けるのもひとつです。
ただ、発作が何分もの間治らず、何度も頻発する場合は、直ちに病院へ。あまりに発作が続くと、脳の酸素不足や脳を構成する細胞が異常をきたすことにより後遺症の恐れも出てくる為、発作を止める処置が早急に必要です。事前に知識と情報を持ち、いざという時に落ち着いて冷静に対処することが求められます。
犬がてんかんになる原因は?
病気や外傷
水頭症、脳炎、脳腫瘍といった脳の病気や、何らかの原因による脳の外傷により引き起こされる場合。
遺伝
遺伝的要素による場合。犬種によっててんかん発症率に差があります。
環境
ストレスによる場合。これはあくまで、てんかん発作を起こしやすくする原因のひとつとして挙げておきます。(ストレスがかかるとてんかん発作を起こしやすくなりますが、ストレスがてんかんという病気を発症させる原因になるとは言えないでしょう。)
不明
検査をしても異常は見つからず、原因不明の場合。
犬のてんかんの治療方法は?
CTやMRI、脳波などにより、状態を検査します。てんかんの元となる病気や外傷など原因を特定できれば、それに対する治療を始めます。てんかん自体の治療は主に薬を用いて行われ、抗てんかん薬を処方されることが殆どです。
ただし、これは発作を抑える薬であり、てんかんそのものを治すものではありません。そして薬には副作用が見られるものもあるので、獣医師と相談しながらの投与が必要です。長期的に様子を見ながら、検査や薬治療を行う必要があります。
犬のてんかんへの対策は?
てんかんは突発性のものが多く、予防策がないと言われています。飼い主にできることは、毎日の健康管理やストレス原因の除去、そしてもし発作が起きた場合は、そのときの状態や環境、きっかけとなり得るものなど情報を事細かに残しておくことです。
また、日頃から犬の様子をよく観察しておくこと、毎日の健康チェックや定期的な動物病院での健康診断も効果的です。
異変を感じたら病院に相談しよう
てんかんを患う犬でも、発作以外は日常と変わりなく生活を送ることができます。疾患があるからと暮らしを制限しすぎず、犬が幸せな毎日を送れるよう、飼い主が気を配ってあげましょう。
また、部分的な発作の場合は、犬の癖として見られ、飼い主がてんかん発作だと気づかない場合も多いそうです。気づかないということは、言葉でコミュニケーションを取ることができない人間と犬にとって、大きなリスクとなります。もし愛犬に何か気になることがあった場合は、些細なことでも動物病院に相談しましょう。
愛犬の異常に早期段階で気づき、より良い対処方法を取るようにしたいですね。