犬の銅貯積肝障害の症状や原因、注意したい犬種について

犬の銅貯積肝障害の症状や原因、注意したい犬種について

犬の銅貯積肝障害は、特定の犬種で発症することがある、肝障害の一つです。この記事では銅蓄積肝障害とはどういった病気なのかについてと、注意したい犬種をまとめました。

お気に入り登録
SupervisorImage

記事の監修

  • 獣医師
  • 平松育子
  • (AEAJ認定アロマテラピーインストラクター・ペットライター )

獣医師・AEAJ認定アロマテラピーインストラクター・ペットライター
山口大学農学部獣医学科(現:共同獣医学部)卒業。2006年3月~2023年3月 有限会社ふくふく動物病院 取締役・院長。ジェネラリストですが、得意分野は皮膚疾患です。
獣医師歴26年(2023年4月現在)の経験を活かし、ペットの病気やペットと楽しむアロマに関する情報をお届けします。

犬の銅蓄積肝障害とはどのような病気なのか

横を向いて立つベドリントンテリア

銅は、犬の必須微量栄養素であり、身体の健康な機能を維持する働きをしています。食事から摂取された銅は肝臓で処理され、酵素や補酵素として使われたり、貯蔵されたりしています。使われなかった銅は、肝臓から胆汁の形で排泄されています。

銅蓄積肝障害は、銅が何らかの原因で排出されず、過剰に貯蔵されてしまうために起こります。肝臓に過剰に貯蔵された銅が、肝臓の細胞を傷つけ、傷ついた肝細胞が炎症を起こし、やがて慢性化、最終的には肝硬変を引き起こします。

犬の銅蓄積肝障害の症状

症状は、肝疾患の際に現れる、体重減少・食欲減退・多飲多尿・下痢・嘔吐などです。重症化すると、黄疸・腹水・肝性脳症・溶血といった症状をおこす場合もあります。また、症状に現れる前に、健康診断などの血液検査で、肝臓機能の異常から発見される場合もあります。

犬の銅蓄積肝障害の原因

犬の銅蓄積肝障害の原因は何でしょうか。
この病気は、その名の通り「銅が蓄積してしまうこと」が原因で起こります。

銅は犬の身体にとって重要な栄養素であり、多くの犬では問題なく代謝されます。ですが、銅蓄積肝障害を発症した犬では、銅の貯蔵機能の異常、又は、銅の排泄障害が起きています。これらの異常の原因は、犬種特有の遺伝的な問題であると言われています。

犬の銅蓄積肝障害の診断と治療

犬の銅蓄積肝障害の診断の際には、まず、血液検査と超音波検査を行います。血液検査では、肝酵素(GPT・GOT・ALP・GGT)や、肝機能(ビリルビン・アルブミン・BUN・Cre・血糖値・コレステロール)の確認を行います。

超音波検査では、肝臓の大きさや炎症の有無、胆管の状態を確認します。血液検査と超音波検査で、肝臓の状態を確認した段階では、銅蓄積肝障害の確定診断はできません。これらの検査で銅蓄積肝障害の疑いがあると判断された場合は、肝臓の細胞を採取して行う、肝生検を行い確定します。

治療には、蓄積された銅を除去するキレート剤や、銅の吸収を阻害する亜鉛製剤を用いる他、肝臓の状態を改善するための治療が行われます。

銅蓄積肝障害に注意したい犬種

並んで座る三匹のウエストハイランド・ホワイト・テリア

この病気は遺伝上の問題により、かかりやすい犬種がいくつか知られています。

べドリントン・テリア

銅蓄積肝障害を起こしやすい犬種として、まず挙げられるのは、ベドリントン・テリアです。ベドリントン・テリアは遺伝的な問題から、銅を胆汁に排泄することができなくなってしまうことがあり、その因子を持って産まれてくる子は、全体のなんと7割に及びます。このため、因子を持っているベドリントン・テリアには、肝機能の検査が、欠かせません。

ベドリントン・テリアが銅蓄積肝障害を発症すると、肝細胞の障害・壊死が広く起こることで、急性肝不全となって昏睡状態となることがあります。症状は、肝臓の銅の蓄積量が問題になってくる2~4歳頃から出始め、治療を行わなければ2~7歳で死に至ります。

その他の犬種

ベドリントン・テリア以外にも、銅蓄積肝障害を引き起こす可能性がある犬種があります。

  • ウェストハイランドホワイトテリア
  • スカイテリア
  • ダルメシアン
  • ドーベルマン
  • ラブラドールレトリバー

これらの犬種では、肝臓に何らかの障害が起きた際に、胆汁の流れが滞り、それにより銅の貯蓄が起こると考えられています。このため、どんな年齢でも発症する可能性があります。

肝臓の銅貯蓄量と症状の重さには関係がなく、銅貯蓄量がベドリントン・テリアと比べて少なくても、重度の肝障害を起こすことがあります。

まとめ

床に伏せるドーベルマン

犬の銅蓄積肝障害についてまとめました。この病気は、特定の犬種で発症する可能性がある病気です。特にベドリントン・テリアと暮らしている方は、必ず頭に入れておかなければならない病気ではないでしょうか。

銅蓄積肝障害を早期発見するためには、症状が出るよりも前から定期的な血液検査を行い、肝臓の状態を確認しておきましょう。

動物病院での定期的な健康診断をお勧めします。

はてな
Pocket
この記事を読んだあなたにおすすめ
合わせて読みたい

あなたが知っている情報をぜひ教えてください!

※他の飼い主さんの参考になるよう、この記事のテーマに沿った書き込みをお願いいたします。

年齢を選択
性別を選択
写真を付ける
書き込みに関する注意点
この書き込み機能は「他の犬の飼い主さんの為にもなる情報や体験談等をみんなで共有し、犬と人の生活をより豊かにしていく」ために作られた機能です。従って、下記の内容にあたる悪質と捉えられる文章を投稿した際は、投稿の削除や該当する箇所の削除、又はブロック処理をさせていただきます。予めご了承の上、節度ある書き込みをお願い致します。

・過度と捉えられる批判的な書き込み
・誹謗中傷にあたる過度な書き込み
・ライター個人を誹謗中傷するような書き込み
・荒らし行為
・宣伝行為
・その他悪質と捉えられる全ての行為

※android版アプリは画像の投稿に対応しておりません。