犬のカンピロバクター症とは
犬のカンピロバクター症とは、人畜共通感染症の一つでらせん菌というらせん状のカンピロバクター菌の細菌感染が原因で犬の他に、家畜や野生動物も感染し、発熱、下痢、嘔吐を起こし、妊娠中は流産まで引き起こす感染症として以前から着目されていた感染症です。1970年代に人にも感染することが証明され、食品衛生法で食中毒の起因菌に指定されました。
犬のカンピロバクター症の原因
カンピロバクター症のほとんどが経口摂取によるもので、カンピロバクター菌に汚染された飲食物を口にすることによって感染します。そして、カンピロバクター菌に感染している野生動物や、人、ペットや家畜などとの接触による動物由来感染症です。カンピロバクター症は、人から犬に、犬から人に感染する人畜共通感染症です。
犬のカンピロバクター症の感染経路
犬のカンピロバクター症は、カンピロバクター菌に汚染された飲食物を摂取することによって感染します。いわゆる食中毒です。
感染した犬や家畜、野生動物等の排泄物に接した場合や、排泄物を処理している時などに、気づかないうちに指先にカンピロバクター菌が付着してしまうことがあります。
例えてご説明させていただくと、その手でビスケットを取ると、ビスケットから指先に菌が移り、さらにそのビスケットを食べることにより体内に菌が入ってしまうのが経口摂取感染です。
また、空気感染の場合もあります。カンピロバクター菌は空気中ではわずかな期間しか生存できないので、インフルエンザのような空気感染の可能性はかなり低く、ほとんどありません。しかし、他の細菌と比べると比較的強い感染力を持っているので、稀に感染してしまうことがあるのです。
犬のカンピロバクターの症状
犬のカンピロバクターの症状は、発熱、下痢、嘔吐、血便等の細菌性腸炎を引き起こします。潜伏期間は人で2~5日です。成人の場合は、保菌者に十分な体力があればカンピロバクター菌に感染していても発症しないことが多くあります。体内に保菌されている時にストレスや疲労によって、体力の低下から免疫力が低下した状態になると発症します。
幼児や小児、子犬の場合は体が小さく体力も免疫力も低いので、感染力の強いカンピロバクター菌によって発症する可能性は飛躍的に高まります。また、妊娠をしている人や妊娠している犬は、そういった体調不全から流産にもなりかねませんので何よりもお気をつけてください。
そして、カンピロバクター症の説明文に異なる病気の説明を加えるのは申し訳ないのですが、ごく稀に、カンピロバクター症を病院で治療を受けて完治をした後に、カンピロバクター菌への感染が引き金となり、ギランバレー症候群を発病することがあります。
このギランバレー症候群は急激に発症するため、治療も即入院、即治療といった時間との戦いになる病気ですので、付け加えさせていただきますね。ギランバレー症候群
『ギランバレー症候群』とは、末梢神経障害で筋力の低下による歩行困難や顔面の神経麻痺、呼吸不全、痙攣といった筋肉の麻痺を起こす病気です。
簡単に説明すると、自分の抗体が勘違いをして自分の神経を攻撃する病気になり、手足が麻痺する症状が出ることがあります。また、呼吸不全になった場合は人工呼吸器が必要な場合もあります。カンピロバクター症で起こる腸炎が完治してから10日前後で発症しますので、しばらくは様子を見ておいてください。
また、その他にも『虫垂炎、腹膜炎』等を発症することもあります。
犬は話すことはできないので飼い主さんだけが頼りです。カンピロバクター症が治っているはずなのに動こうとしない、痙攣しているように見える、お腹に触れられると嫌がる、お腹を軽く押しただけで顔をしかめるなどの様子が見られたら、ただちに病院に連れていってください。もちろん、愛犬だけでなく飼い主さんも、完治後の体の状態は体感で探ってくださいね。
繰り返しになりますが、犬は傷病があって痛かったり苦しかったりしても言葉で訴えられません。そのため飼い主さんが気がつかないと、カンピロバクター症は治ったのに腹膜炎で死んでしまった・・・そんな悲劇が起こらないとはいえません。完治したと医師に告げられても、しばらくは様子を見ておきましょう。
治療後はどなたでもホッと一安心するものですが、手足の麻痺や腹痛などの異変を感じないか犬の様子の見方としては、上記した通りです。どうか気を配ってくださいね。
犬のカンピロバクター症の治療法
自然治癒
発症しても感染病とは気づかずに、そのまま自然治癒することも多々あります。
抗生物質の投与
整腸剤、抗生物質の投与で完治します。消耗の度合いと医師の判断によりますが、消耗が激しい場合は輸液で体力を補うと共に水分を補います。
素人判断でお薬やサプリメントを飲んだり、犬に飲ませたりした場合、上述したギランバレー症候群等になってしまった場合に体がどのような状態になっているのかわからなくなり、医師の治療の妨げになります。異常が見られ、「薬を飲んだ方が良いのではないか?」と不安に思われたら、必ず医師にご相談くださいね。
犬のカンピロバクター症の予防法
- 経口摂取をしない
- 清潔を心がける
- 食べ物に気をつける
経口摂取をしない
飲食物を犬に与える際に、飼い主さんの使用するお箸であげたり、口移しであげたりするような過剰なスキンシップを取らないことが有効です。犬はよく人の顔を舐めてくれるので嬉しくなりますが、顔を舐められた後は洗顔されることをお勧めします。
また、口は絶対に舐められないように注意してください。これらの行為はカンピロバクター菌に限らず、多くの人畜共通感染症がうつってしまうので注意をしなければいけません。何よりも怖いのは、小さな子供たちへの感染です。大人の知らないところで、小さな子供がこの様な過剰なスキンシップをとり、病気になる例が非常に多いのです。
そして、両親は子供が犬と過剰なスキンシップをとっているとは気づいていないので、病院に連れていった時に犬を飼っていることを医師に伝えることがなく、『症状は確認できるけれども原因は不明』とされて適切な処置が行われない場合があります。
そして後から、上述した『ギランバレー症候群』や『虫垂炎、腹膜炎』を発症したりしてしまいます。そうならなくても、小さな子供は大人よりも体力がなく悪化させてしまう可能性が高いので、子供がいらっしゃる場合は十分に注意してください。
清潔を心がける
排泄物の処理をした後は必ず手洗いを行い、できれば消毒もしておきましょう。犬のいる室内等は清潔を保ち、トイレの処理もこまめに行ってください。消毒していただけると更に良いです。そして、カンピロバクター菌が埃に付着している場合があるので換気を充分に行い、埃を吸い込まないように注意してください。当然、お散歩時の排泄物は全て飼い主さんが持って帰ってください。尿は水で流しておきましょう。
食べ物に気をつける
カンピロバクター菌は低温に強く、最低温度4度で生存できますので冷蔵庫の中でも生存可能です。犬に肉を与える際は充分に火を通してからあげてください。特に鶏肉は細菌が多く付着しているので、より入念に行ってください。生野菜はしっかりと流水で洗ってから与えてください。
その他注意点
お散歩中など、野生動物との接触は避けてください。飼い主に感染の疑いがある場合は、ただちに医師に受診し、適切な治療をしていただけるように犬の飼育状態も説明してください。犬の感染が疑われる時も、獣医さんに正確に理解していただけるよう、飼育状態を伝えるのことをお勧めします。
まとめ
このカンピロバクター症は、完治後に別の病気が発病するのが恐ろしいところです。人から犬へ、犬から人への感染も大変で、どちらか片方が感染した場合は、もう片方も感染の疑いがあるので検査を受けなくてはなりません。様々な感染症がありますが、多頭飼いをしていると全ての犬と飼い主さんまで検査が必要です。
けれど、感染症は防げる病気です。この犬のカンピロバクター症も防げる病気です。日本は衛生状態が良いので、ほんの少々気を配れば愛犬もご家族も守れます。病気を防ぐには病気をよく知る事が重要です。
恐縮ですが病気のことですので長々と説明させて頂きました。『カンピロバクター症』この病気を知って、防いでくださいね。