犬の小肝症とは?
犬の小肝症は、肝臓の大きさが平均より小さい事が原因で、肝臓の働きが弱くなってしまう病気です。
「症」と付いていますが、一概に肝臓に関連する病気が原因で小肝症になるわけではなく、先天的に肝臓が小さい犬の場合も、まとめて「小肝症」と診断されます。また、発育不良やその他の病気が原因で小肝症になっている場合は、小肝症の対策だけではなく、そのケースに合わせた対応が必要です。
そのため、小肝症と診断された場合、「先天性」と「後天性」のどちらが原因なのか調べた上で、治療を始めるのが一般的です。
小肝症の原因
小肝症の原因は、「先天性」か「後天性」かによって変わります。
先天性の場合
発育不全で肝臓の大きさが正常に育たなかった場合や、遺伝的に肝臓の大きさが小さい場合など、原因は様々です。また、肝臓の大きさが小さいからといって、その大きさで十分肝臓の機能を補えている場合もあるので、小肝症の症状が出るかは、その犬の健康状態によって変わってきます。
後天性の場合
後天性の小肝症になる原因は様々で、ウィルス感染による影響や、他の病気で処方された薬やその他薬品、また除草剤などを口にした結果、肝臓に影響が出たケースもあるそうです。
なお、これらの要因を取り除く事で、小肝症の症状が改善される場合もあるようです。
小肝症の症状
肝臓の機能低下
肝臓のサイズが小さいと、健康な肝臓よりも機能が低下します。そのため、次のような症状が見られる場合があります。
消化不良や胃腸の調子が悪くなる
胆汁の生成が普通の犬よりも少なくなる事で、消化不良や胃腸の調子が悪くなる場合があります。
疲れやすくなる
老廃物などを解毒する機能が弱くなるので、疲れやすくなったり、倦怠感を覚えたりする場合があります。
血が固まりにくくなる
血液凝固作用物質の生成が少なくなるので、血が止まりにくくなる場合があります。
肝臓に関連する病気の発症
小肝症になると、その他の肝臓に関連する病気を発症する場合があります。次のような病気に注意しましょう。
- 慢性肝炎
- 肝硬変
- 先天性門脈体循環シャント
- 肝臓癌
小肝症の対処法とは?
原因を特定してそれぞれにあった対処をおこなう
小肝症の原因によって対処法や治療法は異なります。まずはその原因を特定する事から始めましょう。
また、小さいからと言って、全ての肝臓の機能が悪いとはかぎりませんので、定期的な血液検査などを取り入れ、「どの機能が弱いのか」「正常なのか」などを調べておくと、愛犬の状態を把握しやすくなります。
肝臓に負担をかけない・負担を下げる
「肝臓が小さい」=「肝臓の機能が弱い」と考えましょう。肝臓が小さくても健康な犬もいますが、小肝症と診断された場合は何らかの症状が見られている場合が多いかと思います。
まずは、肝臓に負担が掛からないように、食事の見直しや薬の処方などについて、獣医さんに相談してみましょう。
犬の小肝症の予防法
先天性の場合
先天性小肝症の場合、予防する方法はありません。
すでに肝臓が小さくなっているため、小肝症の症状が出ないようにコントロールする事が重要になってきます。犬の肝臓機能がどの程度不足しているか調べた上で、肝臓に負担をかけないように対処してあげましょう。
後天性の場合
「ウィルス感染」や「薬物の影響」など、さまざまな原因があるため、それぞれに合った予防をおこなう事になります。
肝臓に影響のあるウィルスなのか、肝臓に影響がある薬なのか、事前に把握しておき、場合によっては薬の使用を控えるようにしましょう。
既に薬を使ってしまっている場合や、ウィルスなどに感染してしまっている場合は、予防する事が出来ないので、小肝症の原因になる薬やウィルスを、獣医さんなどの専門家に確認しておく事が予防に繋がるでしょう。
小肝症の犬が注意すべき病気
慢性肝炎
犬の慢性肝炎の主な原因は、感染症・中毒・遺伝です。
感染症の場合、ウイルスや細菌へ感染したことで急性肝炎を引き起こし、完治することなく炎症が続いたことで慢性肝炎へと進行します。
イヌ伝染性肝炎、レプトスピラ症、好酸球性肝炎などの感染がみられます。
慢性肝炎の主な症状
- 食欲がなくなる
- 元気がなくなる
- 下痢
- 嘔吐
- 腹水(お腹がふくれる)
- 体重が減少する
- 黄疸
治療・対処法
主に、輸液・栄養の補給・安静・食事療法などの対症療法があります。お腹に水がたまってしまっている場合には利尿剤が投与されますが、改善されない場合には注射針によって腹水を吸引することもあります。腹水を抜いた場合、また同じ程度の量が溜まります。 また、肝炎の症状に合わせた投薬が行われることもあります。
肝硬変
犬の肝硬変の主な原因は、慢性肝炎・肝細胞の大量死・突発性です。
慢性肝炎により肝臓に繰り返し炎症が起きると、線維組織が増殖することで破壊された部分を修復しますが、線維が多くなりすぎてしまい、肝臓全体を硬く変質させてしまった状態のことを肝硬変と言います。
何等かの原因によって肝臓内の細胞が大量に死んでしまい、それに対する過剰反応として線維が増えすぎてしまったことでも肝硬変を発症することがありますが、とても稀なケースです。
また、原因がわからず症状だけが進行してしまう状態のことを突発性の肝硬変と呼んでいます。
肝硬変の主な症状
- 食欲がなくなる
- 元気がなくなる
- 体重の減少(少しずつ痩せていく)
- 腹水(お腹がふくれる)
- 黄疸
治療・対処法
肝硬変は完治することがほぼ不可能な病気です。症状の軽減を目的とした対処と治療が行われます。主な対処法には、栄養の補給・安静・食事療法などがあります。
先天性門脈体循環シャント
先天性門脈体循環シャントの主な原因は、遺伝と門脈圧の亢進(後天性)です。
先天性である場合、肝臓の外における肝外性シャントは小型犬に発症することが多く、肝臓の中における肝内性シャントは大型犬に発症することが多いとされています。
後天性のシャント(門脈圧の亢進)である場合の多くは、胃腸と肝臓を結んでいる「門脈」の、異常な血圧上昇によって発症します。
その原因である基礎疾患には、慢性肝炎・肝線維症・肝硬変などがあります。
先天性門脈体循環シャントの主な症状
- 食欲がなくなる
- 尿結石
- 血尿
- 1回の尿の量が少なくなる
- トイレ(尿)の回数が多くなる
- 尿酸アンモニウム血症
- けいれん
- 体格が小さい
治療・対処法
腹水に対する利尿剤、尿石症に対する結石の除去、血液凝固異常に対する血小板の輸血などが対症療法です。また、他の疾患によってシャントが発生している場合には、その疾患に対する治療が行われます。症状がひどい場合には手術を行うことが選択されます。
まとめ
私たち人間の肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれていますが、犬の肝臓も同じです。
肝臓の病気に対して自覚症状があらわれたときには、肝硬変や肝臓ガンにまで進行しているなど、手の施しようのない状態で発見されることが多くあります。
肝炎は私たち人間でも気づきにくく、犬の肝炎であれば飼い主さんが行動しない限り気づけないでしょう。
定期的な血液検査によって肝臓の数値を確認し、愛犬の肝臓の健康を維持するようにしましょう。