がんの3大療法
犬も人も同じですが、がんの治療法として3大療法がスタンダードな治療法です。すなわち外科手術、放射線治療、化学療法(抗がん剤治療)の3つです。
これらは古くから用いられており、どれもスタンダードな治療法として一般的に用いられている方法です。
近年、これらに加えて、人間のがん治療と同様に4つめの治療法としてさまざまな治療法が開発されてきております。これらについては改めて解説することにします。
外科手術
外科手術は、がんの部分を手術で取りきってしまう治療法であるため、がんの治療法の中でもっとも根治を得られる可能性のある治療法です。
しかしがんが進行していてすでに転移している場合や、がんが周囲の組織に浸潤している(広がっている)場合は、外科手術のみで取り切ることはなかなか難しいため、残ったがん細胞をさらに減らすために、放射線療法や化学療法などと組み合わせる必要があります。
もちろん早期に発見でき、外科手術により十分なマージン(がんの部位を切り取る際の周囲のゆとり)が確保できれば、外科手術のみで根治に近い状態を得られることもありますが、とくに動物の場合は自覚症状の訴えに周りが気づけないことが多いため、ある程度進行してから見つかることも多く、そうした場合は外科手術のみで根治に近い状態を得ることは難しくなります。
放射線治療
放射線治療は、がんの種類によっては犬のがんに対しても十分効果の認められる治療法です。
とくに上記にあるように外科手術の術後補助療法の一つとしては非常によい選択肢の1つになります。しかし放射線治療は、放射線が当たっている部位において効果を示すため、遠隔転移(もともとのがんとは離れた部位への転移)があるような場合は治療対象とならない場合もあります。
また犬のがんに対する放射線治療を実施できる施設は限られます。日本の動物病院で用いられている放射線治療装置には、オルソボルテージ照射装置と高エネルギーX線治療装置(リニアック)があります。
両者は同じようにX線を発生しますが、リニアックの方がより高いエネルギーを有するため体の内部のがんなどに対しても治療効果を発揮するとともに正常な部位に対する影響を極力小さくすることができます。
しかしリニアックは、その設備費用や維持が大変なため、保有している施設は、大学や大きな動物病院など全国で15弱しかないのが現状です。
化学療法
化学療法は、いわゆる抗がん剤治療のことです。
動物用の抗がん剤というものはほとんどないため、多くの場合は人用の抗がん剤を利用しているのが現状です。抗がん剤治療というと悪いイメージを持たれる方が多いと思いますが、抗がん剤も、使い方によって、またどういったがんに対して用いるかによって様々なことを考慮する必要があり、なくてはならない治療法です。
上記の外科手術や放射線治療が局所(体の一部)に対する治療であるのに対し、抗がん剤治療は全身に対する治療法であるため、遠隔転移している場合や、血液のがんなど全身にがんが広がっていると思われる場合には適応となる治療法です。
ただし人のがんでも同じですが、抗がん剤が効きやすいがんと効きにくいがんがあるため、どのようながんでもとりあえず抗がん剤をやればいい、ということであると、かえって動物のからだを痛めつけるだけになってしまいますので、抗がん剤の知識をもった獣医とよく相談して抗がん剤治療を受ける必要があります。
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実施期間
- 2018年4月18日(木)〜2018年6月28日(木)
目標金額
- 200万円 (内訳)研究費の一部