ペットはどの程度、どんな風にメンタルヘルスの問題をサポートするのか?
ペットやコンパニオンアニマルと呼ばれる人間と暮らす動物、中でも犬が飼い主の精神的な健康をサポートしたり、時には治療の役割さえ果たすかもしれないという期待は高まってきています。
けれども実際にペットが長期的に飼い主の精神の健康に、どの程度どのような働きをするのかは今までは解説されていませんでした。
先ごろイギリスのリバプール大学の研究チームが、診断済みのメンタルヘルス疾患を持つ人々の健康状態にペットが果たす役割の程度や性質を分析した結果を発表しました。
ペットが精神の健康に及ぼすプラス面とマイナス面
研究チームは、メンタルヘルスの問題とペットの所有の関連について過去に発表された17の国際的な研究論文を体系的に分析することで、ペットと暮らすことが精神の健康に及ぼすプラスの面とマイナスの面を特定しました。
プラス面
分析された17の論文のうち、15の研究がメンタルヘルスの問題を抱えている人がペットと暮らすことのプラスの面を報告していました。
具体的には
- 犬と散歩することで人との接触が増え、社会に受け入れられているという感覚を持てた
- ペットがそばにいることで、不安感が和らぎ孤独感が緩和された
- ペットの世話をすることで、自分が価値のある人間だと感じることができた
ペットと暮らすことで感情に豊かさをもたらし、精神の安定につながることが伺えます。特に犬との暮らしでは社会的なやりとりや接触のきっかけになることが多く見受けられます。
マイナス面
17の論文のうち、プラス面と同時にマイナス面の報告をしているものも9件ありました。
具体的なものとしては
- 金銭的な負担
- ペットの世話が上手くできなかった場合の罪悪感
- ペットのために外出や旅行など行動が制限される
この研究では診断済みのメンタルヘルスの問題を持つ人が対象になっているため、上にあげたような問題は、一般的な場合よりも精神的なダメージが大きく症状の悪化につながった例もありました。
研究の結論と、心しておかなくてはいけないこと
研究の結論としては、ペットと暮らすことはメンタルヘルスの問題を抱える人々にプラスの面があることを示しています。
同時に見過ごすことのできないマイナス面もあり、ペットの存在を医療の一部として確立するためにはさらに厳密な研究が必要とされています。
研究そのものと結論については、私たち一般の人間にも「そうだろうな」とうなずけるものだと思います。ペットと暮らすことが精神の健康につながるならば、それも良いことだと思います。
メンタルヘルスに限らず「犬と暮らす人は心臓病のリスクが低い」「犬と暮らしている人は平均余命が長い」など、身体の健康面でも犬と暮らすことのプラス面を発表した研究は多くあります。けれども忘れてはいけないこと、特にこれから犬を迎えようと思う人が心しておかなくてはいけないことがあります。
それはペットを迎えるなら、自分の側のメリットだけでなくペットの方にもメリットのあるものでなくてはいけないということです。
「人間の感情は豊かになったけれど、ペットの方はストレスを感じている」「人間の運動量は増えたけれど、犬としては全然運動が足りていない」「ペットに必要なケアを与えるだけの金銭的負担ができない」というようなことが起きないよう、十分なリサーチと準備をしなくてはいけません。
動物は人間の健康を増進するためだけに存在しているのではないということを、常に心に置いておかなくてはいけませんね。
まとめ
リバプール大学の研究チームによる「メンタルヘルスの問題を抱える人々をサポートするコンパニオンアニマルの力」という研究についての概要をご紹介しました。
メンタルヘルスの問題を持つ人々がペットと暮らすことについては精神の健康面をサポートするプラスの面が多くあるが、同時にマイナスの面もあり、今後の厳密な研究がさらに必要というものでした。
研究者ではない私たち一般の飼い主も、犬と暮らすことで精神と身体の両方でサポートを受けていると感じる面は多々ありますが、それが人間が受け取るだけの一方的なものでなく双方向のサポートやメリットでなくてはならないと思います。
犬と一緒に暮らすことでwin-winの関係を作り上げられたら素敵ですね。
《参考》
https://bmcpsychiatry.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12888-018-1613-2