トレーニングには犬のお気に入りトリーツが一番?
犬をトレーニングするときに「〇〇をするとこんな良いことがある」という条件付けを行うポジティブ強化の方法は、トレーニング方法の世界のメインの流れになっています。「良いこと」として断然効果的なのは食べ物で、報酬用のトリーツをいろいろ準備している方、何が一番良いのだろう?と試行錯誤している方も多いのではないでしょうか。
トレーニングされる犬のモチベーションを上げ、効果を高めるために報酬用トリーツの選択は重要な要素です。そんなトレーニングの際に効果的なトリーツについて、スイスのベルン大学の研究者が発表した研究結果があります。その興味深い実験の内容と結果をご紹介します。
どのトリーツが好き?犬はどれを選ぶ?実験の内容
実験に参加したのは16匹の家庭犬たちです。オスとメスが半々ずつで年齢は2〜12歳、様々な犬種が含まれていました。大部分の犬はオビディエンスやアジリティなどを介してトレーニングを受けていました。実験に使われたトリーツは3種類で、ソーセージ(人間用)ゴーダチーズ(人間用)レバートリーツ(犬用)で、どれも犬にとっては魅力的な「高価値」トリーツです。犬たちは1匹ずつそれぞれのトリーツを与えられた後に、中身が見えて匂いも嗅げるけれど食べることはできない金網のコンテナーに入れたトリーツを見せられます。そのときにそれぞれの犬が最も長い時間見つめていたトリーツがそれぞれのお気に入りと認定されました。
実験装置にはフードディスペンサーが備え付けられており、犬がターゲットにタッチするとトリーツが出てくる仕組みになっています。犬たちはあらかじめ、ハンドラーがリリースするとターゲットに走り寄りタッチしてトリーツを得るという訓練を受けています。準備のための訓練の際に使われたトリーツはドッグフードでした。
犬たちが走り寄るターゲットは2種類用意されており、片方からはその犬のお気に入りトリーツが出てきて、もう片方からは3つのトリーツのうちどれかが出てくるという仕組みです。以降、前者を「お気に入り」と呼び、後者を「バラエティ」と呼びます。
実験の結果と結論は?
実験の結果は面白いものでした。6匹の犬は継続してお気に入りを選び続け、別の6匹の犬はバラエティを好み、残りの4匹は特にどちらということもなく両方を選んでいました。犬にもこだわりの強い子、何でも喜んで食べる子がいるのは皆さんもご存じの通りかと思いますが、かなりはっきりと3つのタイプに分かれていますね。
しかし、同じ実験を継続して時間が経ってくると、全ての犬においてバラエティの人気が高くなってきました。これはいくらお気に入りのトリーツでも、ずっと同じものを食べていると犬のモチベーションが下がってくることを示しています。
犬は受け取る報酬の質に敏感で、それに応じてトレーニングのパフォーマンスを変えてきます。平たく言うと、つまらないトリーツでは求められた行動をする気になれないと言うことですね。犬にとって高価値なトリーツの種類をいくつか用意して報酬にバラエティを持たせることで、犬のやる気とパフォーマンスを長期間に渡って保つことができると結論付けられました。
まとめ
犬のポジティブ強化トレーニングに使う報酬トリーツは、お気に入りだけを好む犬、バラエティがある方が嬉しい犬、気にしない犬と様々な好みがあるが、長期的に見るとトリーツにバラエティを持たせた方がより効果的なトレーニング結果を期待できるという研究の結果をご紹介しました。
トレーニングは犬も人もストレスを感じないで楽しくできることが大切です。その重要なパーツを占める報酬トリーツについて、このような研究が行われるのは有り難いことです。研究の結果は、家庭犬はもちろんのこと専門的なドッグトレーニングについても大いに参考になるものです。日常のちょっとしたトレーニングがより楽しくなるよう、愛犬のお気に入りのトリーツを探すのもまた楽しみですね。
《参考》 https://www.nature.com/articles/s41598-018-28079-5