老犬になると食事はどう変化する?
犬は、人間と同様に年齢を重ねることでさまざまな身体の変化があります。老化は、当然ながら運動機能にも影響を及ぼしますが、嗅覚や味覚、さらには食事にも変化がみられるでしょう。ほかにも、健康的な成犬に比べると、病気のリスクも高くなります。
今回は老犬の食事について焦点を当てているので、老犬になると食事はどう変化するのかをご説明します。
いままで食べていたフードを食べなくなる
老犬の食事の変化としてはじめに挙げられるのが、いままで食べていたフードを食べなくなるというものです。食べる量も、徐々に減っていくでしょう。飼い主としては、老犬になった愛犬がフードを食べないと、心配になってしまいます。
当然ながら、食事をいつまでも拒否していると、十分な栄養補給ができずに痩せてきてしまうでしょう。
老犬が食事をしなくなる原因はさまざまですが、単純に毎日の運動量が減ったため、そこまでお腹が減らなくなってしまうのかもしれません。
また、甲状腺機能低下症や心臓病、肝臓病や腎不全、癌などの病気が原因で、食欲不振に陥っていることも考えられます。病気で患部に痛みがあるため、犬は食べたくても食べられないという可能性もあるでしょう。
香りが強い食べ物を欲しがるようになる
老犬になると、香りが強い食べ物を欲しがる傾向にあります。これは、嗅覚の老化が原因だと考えられます。
そもそも、犬は人間のように目で見て「これは美味しそうだな」と感じることはありません。人間よりも発達した嗅覚により食欲が刺激されるため、香りの強い食べ物は犬にとって魅力的なのです。
老犬になると、いままで食べていたフードやおやつだと、香りが物足りなくなることもあるでしょう。そのため、老犬になってからはドライフードよりも香りの強いウェットフードのほうが、食いつきが良くなるはずです。
食べたあと、すぐにごはんを要求してくる
老犬は、食べたあとすぐにごはんを要求してくることがあります。朝食を与えて間隔を空けずにごはんのおねだりをする犬は、認知症の疑いがあるでしょう。
老犬の認知症の症状としては、食事の問題のほかに夜泣きや同じ場所をグルグルと回るなどが挙げられます。
老犬の認知症は、人間と同様に完治をすることはありません。そのため、これ以上症状が重くならないような治療や、認知症とうまく付き合っていく気持ちが大切になります。
自力でごはんが食べられなくなる
老犬になると、顎の力や嚥下力が弱くなることで、自力でごはんが食べられなくなることがあります。また、歯周病などにより口内の痛みが強くなることでも、食事がしにくくなるでしょう。
特にいままでドライフードを食べていた犬は、老化によりうまくドライフードが食べられなくなることもあるはずです。食器が低い場所にあるため、食事がしにくく感じる老犬も多くなるでしょう。
当然ながら、老化により寝たきりになってしまうと、自力でごはんが食べられなくなります。その際は飼い主の補助が必要になるため、犬を迎え入れる時には介護をする覚悟を持って飼わなければなりません。
老犬の食事に必要な栄養素とは?
老犬の食事に必要な栄養素は、はじめに良質な動物性たんぱく質が挙げられます。年齢を重ねるにつれて筋肉量が徐々に減っていくため、運動量低下による夏バテなどを避けるためにも、良質な動物性たんぱく質を摂取して筋肉をつける必要があります。
特に本来は肉食動物である犬にとって動物性たんぱく質の摂取をすることは、筋力アップのほかに健康を維持することに繋がるでしょう。
また、グルコサミンやコンドロイチンなど、関節の健康維持に期待できる成分も含まれているフードがおすすめです。
ちなみに、老犬になると1日の運動量が低下するため、比例して必要なカロリー量も減ります。そのため、低脂肪低カロリーのフードを与えると良いでしょう。
ただし、小型犬であれば14~15歳、大型犬は10歳以上の老犬になると、高カロリーの食事で体重維持をしたほうが健康維持に繋がるという考えが一般的です。低脂肪のフードは、皮膚や被毛の乾燥にも繋がります。
老犬の摂取カロリーについては飼い主の考えによって左右されることもあるため、一度獣医師に相談してみても良いでしょう。
ほとんどの場合は、老犬用として販売されているドッグフードを選んでおけば間違いありません。しかし、愛犬に無添加で健康的な食事を与えたいと考えているのであれば、手間かもしれませんが手作りフードにチャレンジしても良いでしょう。
インターネットで検索すれば、老犬用手作りフードのさまざまなレシピが見られるはずです。
老犬に食事を与える際のポイント
老犬に食事を与える際は、いくつかのポイントがあります。特に歯がない犬やミニチュアダックスフンドなどの特徴的な体型をした犬であれば、食事がしやすくなるように工夫をしてあげる必要があるでしょう。
これからご説明するポイントをきちんと守ることで、老犬になっても食事を難なく楽しめるようになるはずです。
ドライフードはぬるま湯でふやかしてから与える
老犬にドライフードを与えている場合は、ぬるま湯でふやかしてから与えると良いでしょう。ドライフードをぬるま湯でふやかすことで、柔らかくなって食べやすくなることはもちろん、香りも強くなり食欲促進に繋がります。
熱湯でふやかすとすぐにドライフードが柔らかくなるでしょうが、栄養素を失う可能性があるため避けましょう。
また、ドライフードをぬるま湯でふやかすことで、水分補給もできるでしょう。運動量が減った老犬は、室内でも水を飲むために動くことが億劫になります。そのため、食事で水分補給ができれば一石二鳥です。
ちなみに、ドライフードをふやかしても食べられないくらい顎の力が弱くなっている老犬には、ウェットフードや老犬用のペースト状になったフードがおすすめです。とろみのあるペースト状のフードであれば、歯がない老犬でも食べられるでしょう。
食事の回数を増やして食事量を確保する
老犬には、食事の回数を増やすのもおすすめです。老犬は食が細くなっているため、一度の食事で量を食べることができません。そのため、1日に3~4回と食事の回数を増やして、十分な食事量を確保する必要があります。
食事を与える時間帯に決まりはないですが、だいたい4~5時間の間隔を空けて食事をあたえると良いでしょう。
ちなみに、チワワなどの小型犬やゴールデンレトリバーなどの大型犬でも、食事回数は変わります。小型犬は運動量も少ないため食事の回数も1日3回程度で良いですが、大型犬は運動量が多いこともあり、1日4~5回に分けて与えることがおすすめです。
当然ながら柴犬やボーダーコリーなど、中型犬でありながら必要な運動量が多い犬種は、食事回数を多くしたほうが良いでしょう。
食べる時の姿勢に注意する
老犬の食事は、食べる時の姿勢にも注意しなければなりません。食器が地面に近いと、頭を下げながら食事をしなくてはならなくなります。
頭を下げて食事をすると飲み込みがしにくくなり、食事後に吐くこともあるでしょう。また、頭を下げて食事をするのは、首への負担にも繋がります。
そのため、老犬の食事をする際は、食器台を用意してあげると良いでしょう。食器台があれば、頭の位置を高くして食事ができるため、食後に吐く心配や首への負担も少なくなります。
老犬に上手に食べさせるコツ
老犬に上手に食事をしてもらうには、さまざまな工夫をする必要があります。
まずは食べさせ方に配慮して、先述したような食器台を使用して首への負担を減らしましょう。首への負担を減らすことは、犬が食事を楽しめることにも繋がるでしょう。
もしもすぐに食器台を用意できないようであれば、飼い主が犬の口元まで食器を持っていってあげます。食器から食べることも難しい場合には、直接手で与えても良いでしょう。
犬が自力で立ち上がることも難しくなってきたら、ハーネスなどの介助グッズを使用するのもおすすめです。
嚥下力が弱くなってきた老犬のために、食べやすい小粒のドライフードにしたり、柔らかいウェットフードやペースト状のフードに変えたりするのも検討しましょう。
まとめ
犬の年齢が重なり老犬といわれるようになると、いままで食べていたフードを食べなくなったり香りの強いものを食べたくなったりするなど、食事の変化がみられます。
また、筋肉や嚥下力の低下により、ドライフードをぬるま湯でふやかすなどの対策をする必要があります。食器台などを使用して、食事をしやすくなる工夫をするのもおすすめです。
食べさせ方やフードに配慮して、老犬になった愛犬がより食事をしやすい環境づくりをしてあげましょう。