犬と暮らせば【第202話】「着陸」

ガチで叫んだよね。
着陸の衝撃と同時だったから、隣に座ってた母以外には聞こえてなかった…はず。

搭乗前はもちろん、乗ってる間もずっとエマのことが気になって仕方なかった。
気圧で気分悪くなってないか。
音はうるさくないか。
心細くないか。
泣いてるんじゃないか…。
でも飛行機というのは一度飛び立つとしばらく静かになるもので…。
乱気流もなく、いたって平和な空。
これだけ快適ならエマも寝てるだろう…と思った矢先。
「着陸！！！！」
やばいっしょ。
何も知らない犬に「着陸」は。

ところで、たまに着陸がめちゃくちゃうまいパイロットがいて、着陸と同時に客席から拍手が起こることがある。
シャイな日本人はなかなかそこまでしないが、国際線や外国人の多く乗る便で私が遭遇した出来事だ。
コンソメスープがフレンチシェフのシグネチャーだとしたら、パイロットにとって自分を印象付けるのは着陸テクニックかもしれない。

作者：おおうちまりこ

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