犬が散歩を怖がる理由とは
犬が散歩を嫌がっているように見えても、実は散歩自体が嫌いなわけではありません。おそらく、飼い主といっしょに散歩をすることはほとんどの犬が好きなはずです。
それでは、なぜ犬は散歩を怖がるのでしょうか?理由を取り除くことで散歩が大好きになるかもしれません。
首輪やリードをつけるのに抵抗がある
犬が散歩を怖がる理由としてはじめに挙げられるのは、首輪やリードをつけるのに抵抗があるからというものです。これは、子犬の頃に首輪やリードに慣れていない犬に多くみられます。
首輪に慣れていない犬は、首に違和感を感じてしまい散歩に集中できなくなっています。また、装飾がたくさんついている首輪なども首に重みがあることが嫌な犬もいます。首輪を嫌がる犬は、ハーネスをつけるだけで改善することもあります。
ハーネスは首に負担がかからないため、チワワなど首が細い小型犬にもおすすめです。またシニア犬にも良いでしょう。しかし、ハーネスはしつけがきちんとしていないと引っ張り癖の原因となることもあるため注意が必要です。
もともとの性格や臆病な犬種である
犬によっては、もともと臆病な性格の場合もあるでしょう。「外はいろいろな音がするし知らない人や犬が多くて怖い」と考えている怖がりな犬もいます。
特に体の小さい超小型犬にとっては、人間や車、ほかの犬も大きく見えて怖く感じてしまいます。生まれ持った性格を変えることは難しいですが、少し手助けをしてあげることで散歩好きになることもあります。
まずは、散歩は怖くないことを教えていかなければなりません。
外を歩くことに対してトラウマがある
もしかしたら、過去に散歩をした時に怖い思いをしたことがあるのかもしれません。トラウマの原因は、ほかの犬に追いかけられた、噛まれた、知らない人から突然触られたなどさまざまなものが考えられます。
また、散歩中に交通事故に遭ってしまったなど直接命にかかわるような経験をしたことがある犬は、トラウマによって散歩を怖がることがあります。たとえ人間にとって些細なことでも、犬にとっては「二度と散歩に行きたくない!」と感じるような怖い出来事だったのかもしれません。
夜の散歩だけ怖がる犬は、遠くから歩いているほかの犬や人の姿が見えにくくて不安を感じるのでしょう。特定の場所に来たときに急に怖がる場合は、その場所で過去に何か怖い経験をした可能性が高いと考えられます。
社会化不足で人やほかの動物が怖い
子犬の頃に十分に社会化を学ぶことができなかった犬は、ほかの人や犬とどうやって接すれば良いのかわからずに散歩を怖がっているのかもしれません。
普通であれば、兄弟同士でじゃれ合っているうちに社会化を学びます。「どれくらいの力で噛んだら痛いのか」、「大きな声で吠えたらダメなのか」など、ある程度社会で生きていく上で必要なことを兄弟犬たちとの遊びを通して学んでいきます。
しかし、何らかの事情で子犬の頃に社会化が学べないこともあります。ペットショップで売れ残ってしまった犬や、保護犬などは社会化が十分に学べていない傾向にあるでしょう。
人通りが多い
散歩を怖がる犬でも、広々とした場所であれば問題なく散歩をすることがあります。そのような場合は、普段の散歩コースの人通りが多いことが散歩を怖がる理由として挙げられます。
犬は、ほかの犬や人と一定の距離を保とうとする習性があります。そのため、散歩コースの道が狭くてほかの犬や人が多いことが、犬が散歩を怖がる理由かもしれません。特に交通量が多い道は大きな車の音が苦手に感じる犬も少なくありません。
日頃散歩を怖がる犬であっても、散歩コースを変えるだけでのびのびと楽しんで散歩をしてくれるかもしれません。
散歩を怖がる犬が上手に散歩できるようになる4つのステップ!
ここからは、散歩を怖がる犬が上手に散歩できるようになる方法をご紹介します。
犬に散歩を楽しんでもらわなければ、運動不足はもちろん気分転換もできなくなってしまいます。むしろ苦手な散歩に出かけることがストレスの原因となることもあるでしょう。
これからご説明する4つのステップを踏んでいくだけで、犬は散歩が楽しみになってくれるはずです。
<ステップ1 > 散歩コースを考える
まずは、散歩コースを考えましょう。特定の場所だけ嫌がるのであれば、過去のトラウマによるものが考えられるため、その場所を避けた散歩コースを考えます。
また、ほかの犬や人が苦手な犬の場合は、人通りの少ないコースから始めましょう。狭い道を歩くことが苦手な犬には、広々とした道の多い散歩コースが良いでしょう。広々とした道であれば、ほかの犬や人と出会ってもトラブルには発展しにくいです。
<ステップ2 > 歩けたら褒める
散歩コースを決めたら、次は犬が一歩でも多く歩けるようにしましょう。散歩を怖がる犬はそもそも歩くこと自体を嫌がるはずです。
まずは、散歩が楽しいものだと認識してもらう必要があります。犬がリードをピンと張っている時には、優しく声をかけて犬を呼んであげましょう。そして、犬が一歩でも歩くことができたら思い切り褒めましょう。褒めた後には、ご褒美としておやつなどを与えるのも良いでしょう。
褒めてご褒美を与えることを繰り返し行うと、犬は「歩けば飼い主に褒めてもらえて、しかもご褒美までもらえる!」と認識します。犬は飼い主に褒められることを喜びに感じるため、飼い主に褒めてもらうために意気揚々と歩くようになるでしょう。
<ステップ3 > 徐々に環境に慣れさせる
犬が人通りの少ない場所や広々とした道の散歩に慣れたら、徐々にほかの犬や人の多い場所、狭い道のある散歩コースに変えてみましょう。
ただし、犬が多少散歩に慣れたからといって急に人通りの多い場所に行くのは良くありません。まずは、ほかの犬や人が遠くに見える場所を探してみましょう。遠くに見えるほかの犬や人のことを怖がらなくなったら、はじめて犬や人のいる場所を歩きましょう。
人通りの多い場所を上手に歩けたら、きちんと褒めてご褒美を与えましょう。これを繰り返し行えば、犬は散歩を怖がらなくなるはずです。大切なのは、犬の状態を見ながら徐々に環境に慣れさせることです。
<ステップ4>解決しない場合はプロに依頼するのもおすすめ
犬によっては、どれだけ対処しても散歩を怖がることがあるでしょう。そんな時には、プロのドッグトレーナーなどの専門家に依頼するのもおすすめです。
犬の専門家であれば、犬が散歩を怖がる理由がわかるでしょう。さらには、正しい対処をして犬を散歩好きにしてくれるかもしれません。また、犬に関する問題は多くの愛犬家が抱えているため、ドッグランなどでほかの愛犬家の意見を聞くのも良いでしょう。
散歩を怖がる犬に飼い主がやってはいけないこと
愛犬が散歩を怖がっていると、飼い主としてはどうしても救いの手を差し伸べてしまいたくなります。もちろん、散歩中にほかの犬と喧嘩した時は愛犬のことを助けることは悪いことではありません。
しかし、散歩に限っていえば飼い主が手助けしてはいけない場合もあります。これからご説明することを行うことで、さらに犬の散歩嫌いを加速させてしまうことも。
ここでは、散歩を怖がる犬に飼い主がやってはいけないことを解説します。
怖がるたびに抱っこしたり、散歩を中止したりしてはいけない
犬が散歩を怖がるたびに抱っこをしたり、散歩を中止したりするのは絶対にやめましょう。
それらの行動をすることで、犬は「怖がれば散歩をやめてもらえる」と飼い主に甘えるようになってしまい、さらに散歩に行かなくなってしまいます。大切なのは、犬に「散歩は怖いものではない」と学習させることです。一歩でも歩いた時にきちんと褒めれば、必ず犬は散歩を嫌がらないようになります。
ただし、犬が散歩を怖がっている時に「大丈夫だから、いっしょに歩こう」などと慰めながらおやつを与えるのはNG。慰める意味でおやつを与えると「散歩を怖がったら褒めてもらえた!」と勘違いするようになります。
散歩が上手にできなくても叱らない
臆病な性格の犬であれば、散歩が上手にできない時もあるでしょう。そんな時にも、絶対に叱ってはいけません。散歩が上手にできない犬を叱ってしまうと、犬は散歩を「飼い主に叱られて嫌なもの」だと学習してしまいます。
犬にとって、散歩は1日の最大の楽しみでなくてはいけません。犬が散歩を上手にできなくても、叱らずに気長に取り組みましょう。
飼い主の不安や焦りは犬に伝わる
犬が散歩を怖がって歩かないようであれば、飼い主としては不安を感じてしまいます。また、「早く散歩を普通に楽しんでもらいたい」と焦ってさまざまなことを試したくもなるでしょう。
しかし、飼い主の不安や焦りは、犬に伝わるという調査結果が2019年にサイエンティフィック・リポーツという学術誌で発表されました。これにはさまざまな理由があるでしょうが、人間が考えている以上に犬はその場の空気を読んでいます。
ちなみに、愛犬家には多く知られていることですが、犬の嗅覚は人間の100万倍といわれています。そのため、犬は飼い主の少量の汗のにおいも感じ取ることが可能です。人間が不安や焦りを感じると多少ながら汗をかき、それを犬に察知されてしまい、犬もつられて不安を感じているのかもしれません。
犬と散歩をする際は、「上手に散歩できるかな」、「ほかの犬に吠えたらどうしよう」というネガティブな感情を持たずに、「失敗したら次またチャレンジしたらいいか!」と楽しみながら散歩に臨みましょう。
▼「犬の散歩の基本」を知りたい方はこちら
まとめ
犬が散歩を怖がる理由は、過去のトラウマや社会化不足などが挙げられます。また、臆病な性格の犬なら、ほかの犬や人、車などが怖くて散歩をしたがらないこともあるでしょう。
犬に散歩を楽しんでもらう上で大切なことは、飼い主自身が楽しもうという気持ちです。飼い主が不安や焦りを感じると犬にも伝わってしまうため、犬が怖がりにくい散歩コースを考えましょう。そして、犬が歩けたら褒めてご褒美を与えたり、犬に話しかけながら楽しく散歩に取り組むことが大切です。
時間はかかるかもしれませんが、犬が散歩に対してポジティブな感情を覚えたら必ず散歩好きになってくれるでしょう。