子犬のしつけを順番に行う時の心構え
犬は、飼い主と上下関係を作るといわれていました。そのため「マズルをつかんで言うことを聞かせる」「仰向けにして押さえつける」などの制圧する方法でしつけをするのが正しいと言われていましたが、現在では関係性を崩してしまうと考えられているため「してはいけないしつけ方」にあげられます。
最近では、犬と飼い主の関係は「親子」が理想だと考えられています。子犬をしつける際にも親犬のような愛情を心がけ、安心して信頼できるような関係性を目指しましょう。
犬が無理なく学べる順番で行う
犬のトレーニング方法には、順序が決められているものが多くあります。もちろん、マニュアル通りにいけばそれが一番いいでしょう。ただし、人と同じく子犬にも個体差があります。「ほかの子ができてうちの子ができない」ということがあるのは当然です。
子犬だって褒められて伸びます。たくさん褒めてあげるためにも、難易度が低く受け入れやすいしつけから始めましょう。
しつけの順番はあくまで「できたらいい」という意味で、正確に行わなければいけないというわけではありません。できることから初めるなどの融通を利かせて、ときにはしつけの順番を変えることも成功するポイントです。
犬と信頼関係を結ぶことを最優先にする
何よりも先に、犬と信頼関係を結びましょう。しつけの内容や順番も大切ですが、信頼関係が築けていないと指示も拒否されてしまいます。
- 犬のための居住空間を準備する
- 十分な食事や水を用意する
上記のことはもちろん、犬とたくさん遊んでスキンシップを取るようにすると信頼が深まるでしょう。
トリミングが必要な犬種の場合は、人との信頼関係がとても大切になってきます。触られることにも慣れておかなければ落ち着いてトリミングを行なうことができません。遊びながらスキンシップを取る際には、足の先や顔の周りなど嫌がる部分にわざと触るようにしましょう。
愛犬が安心して身を任せられると思ってもらえる飼い主になることも大事です。
環境を整えておこう
子犬にとって迎えられた場所には初めて見るものばかりです。危険という概念もなく、興味だけでなんでも咥えたり近づいたりします。
- キッチンや階段など危険な場所には入れないようにゲートを設置する
- 誤飲の危険があるものは子犬の目につくところに置かない
- コードにはカバーを付けておく
など、大きな事故につながらないよう子犬にとって安全な環境を作っておきましょう。
また、スリッパやゴミ箱など噛んで壊したり、いたずらされると困るものは、子犬の届かない場所に片付けましょう。子犬の頃に習慣づいてしまうと、成犬になってからしつけるのは難しくなります。習慣づかせないような環境も大切です。
子犬のしつけを始めるタイミング
子犬のしつけは、お迎えしたその日から始めることが重要です。
お迎えしたその日に信頼関係なんてないだろうと思うかもしれませんが、それでもお迎えした日からしつけを行う理由は、生活するうえで決まりがあることを子犬のうちから教える必要があるからです。
子犬期にしつけを行わないと、成犬になって自分ルールで行動するようになります。そうなってから慌ててしつけをしようとしても、指示された経験がなければ簡単に従ってはくれません。お互いが快適にストレスなく生活するため、しつけを始めるタイミングは早いほうがいいことがわかるでしょう。
子犬に行うしつけの順番
子犬に行うしつけの順番は、性格や各家庭の重要度によって変わってきます。どれを優先するかわからない場合には、何のためにしつけを行うかを考えてみましょう。
まずはトイレトレーニングです。なぜ、トイレトレーニングを行うか想像してみてください。人と共同生活を行う上で必要だからです。トイレの場所は真っ先に覚えてもらいたいですよね。そのようにして順番を決めていくといいでしょう。
ここからは、子犬の成長に合わせたおすすめトレーニングの手順です。
〈おすすめのトレーニングの順番〉- トイレトレーニング
- ボディコントロール(体を触られるのに慣れる)
- 甘噛みの抑制
- クレート(ハウス)トレーニング
- 首輪やハーネス、リードに慣れる
- 「お座り」「待て」「伏せ」
- 社会性をはぐくむ
1.トイレトレーニング
トイレトレーニングは、人が困らないために行うしつけのひとつです。飼い始めてすぐにトレーニングを行いましょう。個体差はありますが、きちんとトイレでできるようになるには時間がかかることがあります。気長にしつけることが重要です。
トイレトレーニングの方法は、排泄の仕草がみられたらトイレに連れていくことです。排泄の仕草には以下のものがあります。
- そわそわする
- 床のにおいをかぐ
- くるくる回る
など、愛犬の行動を観察することが重要です。
トイレが上手にできたら大げさに褒めてあげましょう。ここで排泄をすると飼い主さんが褒めてくれると学ぶことで成功しやすくなります。注意ポイントとして、失敗しても怒らないことです。
叱られてしまうと、「排泄行為がダメなこと」と覚えてしまい「見えないところに排泄をする」「排泄自体を我慢する」ようになります。できていたのに失敗することもありますが、「たまにはそんな日もある」と温かい目で見守るようにしましょう。
2.ボディコントロール(体を触られるのに慣れる)
最近では、犬の毛をカットしてくれるトリミングサロンの人気が高まっています。連れていく予定であれば、愛犬にストレスがかからないためにも体を触られるのに慣れておくしつけが必要です。
トリミングサロンに行かないという飼い主さんでも、爪切りや歯磨きなど最低限のケアができるように慣れさせておかなければいけません。
ボディトコントロールは、犬とコミュニケーションを取るときに行うと効果的です。遊んでいる時にどさくさに紛れて手足や口周りなど犬が嫌がりそうな場所を触りましょう。遊ぶ度に触っていればいつの間にか慣れているため、トリミングや爪切りの際でも嫌がらずに済むでしょう。
3.甘噛みの抑制
甘噛みをさせないようにするには、噛んではいけないものや危険なものは子犬の届かないところに置くなどの環境の整備が重要です。どうしても動かせないものであれば、ゲートなどで行かせないようにするのも方法のひとつです。
さらに、犬の噛みたい欲求はおもちゃで発散させましょう。噛むことは狩猟本能からの欲求であるため、ロープで引っ張り合いっこして本能を刺激させるのもおすすめ。子犬期に興味を示さないものは、成犬になってもそのままの傾向があります。おもちゃに意識を向けさせて危険なものに興味を持たせないようにしましょう。
4.クレート(ハウス)トレーニング
犬は、暗くて静かな場所を好む習性があります。クレートを安心できる場所にすると愛犬が興奮した時など落ち着かせる際に役立つでしょう。
クレートは、常に出入りできる状態にして人通りの少ない静かな場所に設置しておきます。食事やおやつなどをクレートの中で与えるようにすると徐々に慣れることができます。
クレートトレーニングは、愛犬の安心できる場所だけでなく、災害時の同行避難の際にも役に経つ重要なトレーニングです。
5.首輪やハーネス、リードに慣れる
散歩には、首輪やハーネスが必須です。これらのグッズに慣れておかなければ、ストレスで散歩を楽しむことができません。
最初は、室内で首輪やハーネスを数分ほど装着しましょう。愛犬に無理のない時間で行うことがポイントです。同時にリードもつけて引きずらせたまま自由にしておきましょう。ただし、早く慣れさせようと一日中つけっぱなしは禁物です。皮膚のかぶれや蒸れ、毛玉になってしまうことがあるので注意が必要です。
6.「お座り」「待て」「伏せ」
犬にこれらを覚えさせるのは、決して芸達者にさせたいからではありません。「お座り」「待て」「伏せ」をしつける理由は犬を守るためです。
危険なものから子犬を遠ざけたい時や興奮から落ち着かせたい場合、また、逃走した時のことを考えて、余裕があれば「カム(来い)」まで覚えさせておくと安心です。
散歩など外出時に必要なケースが多いため、散歩デビューまでにしつけておくことが大切です。これらのしつけは食事やおやつの時間など、ご褒美があるほうが成功率が高まります。
「お座り」のしつけ方犬の正面に座り、フードやおやつを握った手を「お座り」の声掛けをしながら鼻先から頭の方へ持っていきます。自然とお座りの形になりますので、できたらご褒美をあげましょう。
座らない場合には優しくお尻を下げたり、後ろに下がる場合には壁際で行うといいでしょう。
「待て」のしつけ方リードを付けてお座りさせたまま「待て」と声掛けします。そのまま一歩下がって数秒待ち、「よし」でご褒美を与えます。徐々に下がる距離や待つ時間を延ばしていきましょう。
「伏せ」のしつけ方飼い主さんは地べたに座り、足を立ててアーチを作ります。アーチの下からおやつなどのご褒美を見せて「伏せ」の声掛けとともに愛犬を誘導します。
ご褒美をもらいに来た愛犬が伏せの体勢になるように、アーチの高さを調節しましょう。覚えたら足がなくても声掛けだけでできるようになります。
7.社会性をはぐくむ
子犬期の社会性は、非常に重要だといわれています。この社会化を養うことによって人との共同生活が快適になるからです。
社会化とは、初めて会う人や他の犬、聞きなれない音などの経験を受け入れることができる状態のことをいいます。その状態ができていないと、新しいことに対してストレスを感じて「吠える」「噛む」などの攻撃性につながってしまううことも。
自宅での来客や公園などで初めて会う犬、掃除機などの大きな音に対して問題行動が起きてしまったり、その対象が飼い主にも向けられるケースがあるため軽視できません。また、人との生活の上で新しい刺激や大きな音は多く、常にストレスを受け続けていると考えると愛犬にとってもかわいそうです。
このことから、社会性が人と犬との暮らしに必要なことがわかります。社会性は散歩やドッグラン、ドッグカフェなどに出かけて、他の犬や人とふれあうことで徐々に身についていきます。飼い主さんの知人とコミュニケーションをとることも効果的です。
愛犬と新しい場所へ積極的に出かけましょう。同時に楽しい経験も増えますね。
子犬のしつけを順番通りに進めるためのコツ
子犬をしつけることは大変です。どれだけ頑張ってもなかなかうまくいかないことは多々あります。実は、しつけを成功させるためのポイントがあるんです。
この5つのポイントをおさえるとうまくいく可能性が高くなります。知らなかったという人はぜひ試してみてください。
- しつけで使う指示の言葉は統一する
- 犬をほめたり叱る時はその場ですぐに伝える
- 楽しいことやうれしいことを取り入れる
- コマンドは一貫しておく
- 指示出しは短い言葉で毅然と!
しつけで使う指示の言葉は統一する
しつけで使う言葉は、日本語でも英語でもどちらでも構いません。ただし、家族全員で統一する必要があります。
「待て」と「ウェイト」、上手にできたときの「グッド」など伝え方は様々です。ほかにも「ダメ」「ノー」や、「お座り」「シット」、「ハウス」「お家」「ケージ」など、同じ意味の違う言葉はたくさんあります。
どんな時にどんな声掛けをするか、家族全員で共有して犬を混乱させないようにしましょう。
犬をほめたり叱る時はその場ですぐに伝える
犬をほめたり叱ったりする際は、その直後に行うと理解されやすくなります。逆に時間が経った後では、何のことか犬には理解できません。
例えば、スリッパや靴などを噛んでボロボロにしている最中やその直後に、噛まれたものを指して叱るのが効果的です。ただし、罰としてケージやクレートに閉じ込めることはやめてください。罰にならないうえに安心できるはずのケージやクレートが嫌な場所になってしまいます。
犬がそれまで使っていたケージやクレートを嫌いになって入らなくなるケースもあるため、もし、いたずらをされてもタイミングを逃したらあきらめることが大事です。
楽しいことやうれしいことを取り入れる
楽しいことやうれしいことを取り入れながらしつけを行なうことが大切です。
しつけは、楽しいものだと感じると成功率も高まり意欲も向上します。遊びの中で工夫しながらしつけをどんどん入れていきましょう。ボディコントロールは遊びの中に取り込みやすいしつけのひとつです。
さらに、飼い主さんも一緒に楽しむことがベストです。失敗しても「惜しかったね!」などと笑顔で声を掛けることが大切。「お座り」や「待て」で待機させてボールやおもちゃなど投げると、興味をもって取りに行くこと間違いなしです。楽しいうえにしつけもできておすすめです。
コマンドは一貫しておく
同じコマンドでも、言い方が変わると伝わりづらくなります。特に指示系のコマンドには要注意です。その都度コマンドが変わってしまうと犬は混乱してしまいます。
このようなことが続くと犬のしつけが成り立たないので、コマンドは一貫しておく必要があります。
指示出しは短い言葉で毅然と!
「止まれ!」と「止まれ~」では、指示されているのか否かとらえ方が変わってきます。
「止まれ~」ではただ慌てているだけのようにも感じてしまいます。語尾が伸びるだけでも意味合いが変わってくるため、指示を出すときは短い言葉で毅然とした言い方が重要です。
同じように、ダメと伝えたいときも「こんなことしちゃダメじゃない!」では伝わりません。むしろかまってもらっていると勘違いして犬は尻尾を振っているでしょう。愛犬のしつけを成功させるためには短く毅然と指示を出すことが重要です。
まとめ
犬のしつけは、伝えることが多く簡単ではないというイメージがあるでしょう。しかし、難しく考える必要はありません。出来ることから楽しく行えば、少しずつ自然と覚えてくれるようになります。
飼い主さんが「絶対に覚えさせなきゃ」と気負ってしまうと、愛犬にもその感情が伝わります。そのままだと犬も人も楽しくなく、しつけも身につかない悪循環になってしまいます。できないことは、先延ばしにすることも大切です。成長したらできるようになることもあります。せっかくの愛犬との時間なのでストレスを抱えたままではもったいないです。
「大変だ!」「うまくいかない」と嘆かずに、簡単なことから少しずつ始めて成功する楽しさを犬も飼い主さんも実感しましょう。