犬の歯石はペンチで取れる?自宅で取る方法やデメリットを解説

犬の歯石はペンチで取れる?自宅で取る方法やデメリットを解説

犬の歯石はペンチで取ることができますが、実はリスクが多くあります。本記事では、ペンチの使い方、ペンチによる歯石除去のデメリットについて解説します。

犬の歯石の原因とは

歯石の付いた犬

歯石とは、歯に付いた歯垢が石灰化して硬くなったもののことを言います。歯についた歯垢を放置すると、唾液に含まれるカルシウムやリン酸が沈着して歯石となります。一般的に、犬では歯垢から歯石になるのに3日程度かかると言われています。

歯石の予防として、日頃の歯磨きが重要です。しかし、歯磨きで取り除くことができるのは、歯石になる前の段階である歯垢です。歯石となると、歯磨きで取り除くのは困難になります。では、付いてしまった歯石を取らないとどうなるのでしょうか。

実は、歯石を取らないとそこに歯周病菌が繁殖し、歯や骨を溶かしてしまいます。場合によっては、頬や眼の下辺りに穴が空くことや、顎の骨が弱くなり骨折することもあります。

また、影響は口腔内に留まらず、血流にのり全身に運ばれた歯周病菌によって、心臓や腎臓などに悪影響を及ぼすと言われています。

犬の歯石をベンチで取るデメリット

ペンチ

歯石を取るためには、動物病院で麻酔をかけた状態で行う方法が最も確実です。しかし、麻酔をかけるリスクが伴うため、持病のある犬はできないこともあります。

獣医領域では推奨されていませんが、麻酔をかけずに歯石除去を行う方法もあります。その一つがペンチによる歯石取りです。

家庭でも歯石除去ができるように、飼い主さん向けの歯石除去用ペンチも売られていますが、ペンチによる歯石除去はデメリットが多くあります。

ここでは、ペンチによる歯石除去を行う場合のデメリットについて紹介します。

歯石取りを嫌がる犬には使えない

犬は歯石取りを理解することができないため、口を触られることが苦手で、歯石取りを嫌がる犬には使えません。

嫌がる犬を押さえつけて歯石取りを行うことは非常に難しいだけでなく、危険を伴います。口に手を近づける必要があるため、咬まれる危険があるのです。

また、嫌がる犬を無理に押さえつけてしまうとトラウマになる可能性があります。日頃から顔周りを触られることが苦手な犬は、咬まれる危険があること、トラウマになる可能性があることなどから、実施しないほうが良いでしょう。

愛犬にケガをさせる恐れがある

歯と歯肉の境目についた歯石まで除去するためには、歯肉ギリギリのところにペンチをあてる必要があります。そのため、少しずれてしまうと歯肉を傷つけてしまう危険性があります。

また、顔の近くにペンチを持っていく必要があるため、犬が急に動いくことによって、目や鼻などをペンチで傷つけてしまう危険性もあります。これらの危険を回避するために、犬が動かないように押さえれば良いのではないか、と考えがちです。

しかし、愛犬が歯周病に罹患していた場合には、歯周病菌により口まわりの骨が弱くなっている可能性があります。そのため犬を力任せに押さえつけてしまうと顎の骨を骨折するなどのリスクがあります。

歯周ポケットの歯石は取れない

歯石は、歯と歯肉の間の歯周ポケットと呼ばれる箇所にも多く付着しています。しかし、ペンチによって除去できるのは、見える範囲に付いている歯石のみであり、歯周ポケットに付着した歯石は取ることができません。

歯周ポケット内にある歯石を取るためには、動物病院にて麻酔をかけた状態でスケーリングを行う必要があります。歯周ポケット内にスケーラーを入れ、歯石を掻きだす必要があり、痛みを伴うことが多いため、麻酔なしで実施することはできません。

つまり、歯周病を予防するために歯石除去を行うのであれば、ペンチによる歯石除去は不十分であると言えます。

歯磨きを嫌がるようになる

ペンチでの歯石除去で痛みを経験した場合や、嫌がる愛犬を無理やり押さえて実施した場合、ペンチでの歯石除去だけでなく、口の周りを触られること自体がトラウマとなってしまう可能性があります。

犬は歯磨きと歯石除去の区別がつかず、口の周りを触れることと痛みがイコールであると認識してしまうと、例えペンチでの歯石除去を行うまで歯磨きをさせてくれていた犬であっても、歯磨きを嫌がるようになります。

歯石予防には、歯垢のうちに歯磨きによって取り除くことが大切です。そのため、歯磨きができなくなってしまうと、より歯石が溜まりやすくなってしまうのです。

歯石が付きやすい歯になる

ペンチで歯石を取る場合、歯の表面には小さな傷が無数にできます。動物病院で歯石除去を行う場合にも歯の表面に小さな傷はできますが、歯石除去した後にポリッシングと呼ばれる歯の表面を整える工程があるため、歯の表面に傷は残りません。

しかし、自宅で行う場合には、ポリシングの工程がないため、歯には小さな傷が残ったままになります。凹凸があると、そこに汚れが溜まりやすく、結果的に歯石の付きやすい歯になってしまいます。

犬の歯石をペンチで取る方法

口を開けられる犬

前述したとおり、飼い主さんがペンチで歯石を取ることは、多くのリスクを伴います。

歯石除去を行うために、動物病院を受診することをお勧めしますが、どうしてもペンチで歯石を取らなくてはならない場合には、リスクやデメリットを理解した上で行いましょう。

もし愛犬が嫌がった場合や、歯石がたくさん付いている場合には獣医師に相談し、無理にペンチによる歯石除去を行うのは避けたほうが良いでしょう。これらのことを理解し、以下に示すペンチの使い方を参考にしてみてください。

犬の口元を保持する

利き手とは逆の手の小指を愛犬の首輪に引っ掛け、親指がマズルの上、その他の指はマズルの下から、口元を支えるように持ちます。この時、利き手で愛犬の口元を支えると、スムーズに行うことができます。

口元を触られたくない犬は、この時点で嫌がる素ぶりを見せることが多いです。嫌がっているにもかかわらず無理に続行すると、ケガやトラウマにつながりかねません。必ず愛犬の様子を確認し、大丈夫そうな場合のみ、次のステップにうつりましょう。

奥歯の歯石を取る

説明

まず、口元を保持しているほうの親指で口唇をめくりあげ、歯が見える状態にします。

ここで、歯石が大量に付着している場合には、抜歯も必要になる可能性があるため、ペンチでの歯石除去は行わないほうが良いでしょう。動物病院を受診し、獣医師に相談してください。

歯石の付き方が軽度だった場合には、開いた状態のペンチの先を歯と歯肉の境目にあて、ペンチの先を閉じながら、歯石を引っ掛けるようにして取り除きます。

歯石が残っている場合には、ペンチの先で擦り取ります。最後に歯石の削りカスはガーゼで優しく拭き取ります。

前歯の歯石を取る

前歯も奥歯と同様に、口唇をめくりあげ、歯と歯肉が目視できる状態にしてから始めます。前歯は奥歯に比べて歯石が付いていないことが多いですが、忘れずにチェックしましょう。

前歯は小さい歯が多いので、力加減は十分に注意しましょう。

犬の歯石をペンチで取るときの注意点

指イラスト

ペンチでの歯石取りを安全に行うためには、注意すべきことがあります。しっかりと把握し、決して無理をしないことが大切です。

少しでもリスクや不安がある場合には、自身で行わず、獣医師に相談しましょう。それでは、注意点について説明します。

嫌がらずにじっとしていられる犬のみできる

ペンチの先は鋭利のため、犬が嫌がって動いてしまうと、ケガをする恐れがあります。

また嫌がる犬を無理やり押さえこんで歯石除去を強行することは、ケガのリスクだけでなく、犬にとってトラウマになり、飼い主さんとの信頼関係に影響を与えてしまう可能性があるため、お勧めできません。

歯石除去中は少しでも動いてしまうとリスクが大きいため、長時間じっとしていられる犬に限られます。

歯石の付着が軽度の場合に限られる

ペンチにて歯石が除去できるのは、軽度の場合です。歯石の付着が重度の場合、歯周病によって歯が抜けかけていることがあります。そのような状態に対して、歯を支えていた歯石を取ってしまうと、歯が抜けてしまう可能性があります。

歯が抜けて穴が開くと、獣医師による処置が必要になります。そのまま放置すると、その穴にばい菌が入り、悪影響を与えるため、すぐに処置する必要があります。そのため、歯石の付き方が重度の場合には、自分で行うのは避けたほうが良いでしょう。

歯肉を傷つけないように注意する

歯と歯肉の境目ギリギリにペンチをあてますが、その時に歯肉にペンチがあたってしまうと、痛みを伴います。一度痛い想いをすると、その行為が嫌いになり、歯石除去を拒否するようになる可能性があります。

ペンチを歯と歯肉の間にセットするときは、歯肉にあたらないように十分に気を付けて行いましょう。

犬の歯石を予防する方法

歯磨き犬

歯石は、付いてから取るのではなく、付かないように予防することが大切です。そのためには、歯石になる前の歯垢を除去することが重要です。

犬では3日程度で歯垢が歯石へと変わり始めると言われています。ヒトでは約20日かかると言われているので、比べると犬はとても歯石になりやすい動物です。

よって、毎日のデンタルケアが非常に重要となります。歯石を予防するための方法は次のようなものがあります。

  • 歯ブラシ
  • 歯磨きシート
  • 歯磨きガムトリーツ
  • 療法食

最も効果的な方法は、歯ブラシによる予防です。歯垢の溜まりやすい隙間もケアすることができます。

しかし、注意しなければいけないのが、歯ブラシは慣らす時間が必要ということです。まずは口の周りを触られることからトレーニングする必要があります。

その後、歯や歯肉を触られる練習をし、飼い主が手で触れても大丈夫になったところでやっと歯ブラシに慣れさせる段階に移行します。つまり、始めようと思ってから実際に始められるまでには、少し時間が必要となります。

歯石を予防するための療法食もあります。歯ブラシなどの方法が難しい場合には、獣医師に相談し、療法食を処方してもらいましょう。

基礎疾患があり、その疾患用の療法食を与えていて、フードの種類を変えられない場合には、フードの形状をドライフードにすると、ウェットフードに比べて歯に汚れが付着しにくくなります。

愛犬と飼い主さんの負担にならない範囲で、歯石予防を始めてみると良いでしょう。

まとめ

歯石のついた犬と手

犬の歯石をペンチで取り除くことは可能です。専用のペンチも販売されているので、飼い主さんが自宅ですることができます。

しかし、ケガをする恐れや愛犬への精神的負担など多くのリスクがあることを理解しなければいけません。

また、ペンチで取ることができるのは、じっとしていられて、歯石の付き方が軽度の犬に限られます。絶対に無理をしてはいけません。実施が難しいと少しでも感じた場合には、獣医師に相談し、他の方法を検討する必要があります。

歯石は予防が肝心です。愛犬と飼い主さん、両方に負担が少ない方法で予防を心掛け、愛犬の健康を守りましょう。

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