犬がトイレを失敗するようになったのはなぜ?
犬をお迎えしたら、正しい場所でトイレができるようにトイレトレーニングをしなくてはなりません。根気よく教えれば、1ヵ月ほどでトイレを覚える犬が多いと言われています。
ところが、一度トイレトレーニングが完了したはずなのに愛犬がトイレを失敗するようになってしまうこともあります。トイレを失敗する理由やトイレトレーニングのやり直しをスムーズにするためにも、まずは一度トイレを覚えたはずの愛犬がトイレを失敗するようになってしまった原因を考えましょう。
生活環境が変わったことへのストレスが原因
犬は、デリケートな一面があり強いストレスを感じてしまうと、トイレを失敗するようになってしまうことがあります。
特に生活環境が変わると気持ちが落ち着かずに粗相をしてしまう犬も少なくないようです。引っ越したばかりだったり、飼い主さんに子どもが生まれた、新しく犬を迎えて多頭飼育になったなど、様々な変化が犬にとって大きなストレスとなります。
愛犬のストレスの原因はできるだけ取り除いてあげたいところですが、このような生活環境の変化があるのは仕方のないことなので、少しずつ慣れてもらうしかありません。飼い主さんが愛犬との信頼関係をしっかり築けていれば、飼い主さんがそばにいるだけで犬は安心して環境の変化によるストレスも軽くなるかもしれません。
引っ越しや模様替えでトイレの場所が変わったため
犬がトイレを場所で覚えている場合、急に設置場所を移動させてしまうと、どこでトイレをすればよいのかわからなくなって失敗してしまうことがあります。
引っ越しや模様替えで犬のトイレの場所が変わった時は、時間をかけて新しいトイレの場所を覚え直してもらわなくてはなりません。また、新しいトイレの場所に対して不満があるために、犬がそこでトイレをするのを嫌がるケースもあります。
野生で生活していた犬は、排泄中は無防備になり敵に襲われる心配があります。ペットとして生活している今でも野生の本能は残っているため、トイレは安心できる場所に設置してあげることが重要です。
人通りの多い場所や人の視線が集まる場所、生活音がうるさい場所では、犬がリラックスできないので犬のトイレを設置するのは避けましょう。
体の大きさに合わないトイレを使っている
犬は、体の大きさに合っているトイレを用意してあげないと上手にすることができません。
子犬のころはちょうどよいサイズでも、成長して体が大きくなるとトイレが狭くなって使いづらくなることで失敗しやすくなってしまうのです。犬は、トレイでくるくると回ってから排泄しますよね。トイレは犬がある程度身動きできるくらいの余裕のあるサイズを選びましょう。
トイレが窮屈になって買い替えたいという場合は、愛犬の体よりも一回り以上大きなものがおすすめ。入り口の広さや高さが犬の負担にならないかどうかもチェックしましょう。
病気が原因の可能性がある
膀胱炎や尿路結石などの泌尿器疾患や、椎間板ヘルニアや神経障害などの病気が原因で排泄のコントロールができなくなっている可能性も考えられます。他にも、多飲多尿の症状が出る糖尿病や、利尿剤やステロイドを使用している犬も、病気や薬の影響で粗相しやすくなってしまうことがあります。
トイレを失敗する原因が病気の場合は、トイレの回数が増えたりトイレに行っても尿が出ていない、排尿時に痛みを感じている様子が見られるなどの異常があることが多いです。愛犬に病気の疑いがある場合は、早めに動物病院を受診しましょう。
高齢になってから粗相をしやすくなったのなら、認知症の可能性もあります。シニア犬は、足腰も衰えるのでトイレまでの移動が長いと間に合わなくなってしまうことも。体の衰えがトイレの失敗につながっている場合は、トイレトレーニングをやり直すだけでなく、犬の負担にならないトイレ環境を整えることも大切です。
マーキングしている
オス犬が家のあちこちで粗相をしてしまう場合は、マーキングをしている可能性が考えられます。
成長すると、縄張りを主張するためにマーキングをしたくなるのは本能的な行動なので、強くとがめたりせずにトイレトレーニングをやり直しましょう。マーキング対策には、去勢や避妊手術を受けさせることが効果的だといわれています。
愛犬に子どもをつくらせる予定がないのなら、去勢や避妊手術を検討してみましょう。
飼い主さんの気を引きたくてわざと失敗している
飼い主さんが忙しくて愛犬をなかなか構ってあげられない日々が続いたり、愛犬の前でイライラした態度をとっていたりすると、犬は飼い主さんからの愛情不足を感じてしまいます。
寂しくなると飼い主さんの気を引くために、わざとトイレを失敗することもあるのです。初めにトイレトレーニングをしていた時は、愛犬がトイレを成功させるたびに飼い主さんもたくさん褒めてあげていたはずです。
犬も褒められることがうれしくて、飼い主さんの期待に応えようと頑張ってトイレを覚えていました。しかし、一度愛犬がトイレを覚えてしまえば、飼い主さんも出来て当たり前と、褒めることはなくなっていませんか?
トイレを成功させるよりも、失敗するほうが飼い主さんからのリアクションが返ってくるので構ってほしくて粗相をする犬もいます。飼い主さんからの愛情不足や褒めてもらえないことも、犬にとってトイレの失敗を引き起こすほどのストレスになることを忘れないでくださいね。
トイレトレーニングをやり直す方法
犬のトイレトレーニングをやり直す際は、愛犬がトイレを失敗するようになった原因も考慮して適切な方法で行いましょう。
基本的な犬の習性や、愛犬の性格を理解することでトレーニングを効率よく進めることに繋がります。ここでは、トイレを失敗する原因ごとにトイレトレーニングをやり直す方法を解説します。
犬が抱えているストレスを取り除いてあげる
ストレスが原因で愛犬がトイレを失敗してしまう場合は、ストレスを取り除くことでトイレの失敗を減らすことができます。まずは、何が愛犬にとってストレスになっているのかを考えてみましょう。
「犬が満足するほど構ってない」「犬に冷たい態度をとっている」「お留守番の時間が長い」など、犬が愛情不足や寂しさを感じている場合は、積極的にスキンシップをとってしっかり愛情を注ぐことが大切です。飼い主さんが忙しくて一緒に過ごせる時間が十分にとれなくても、声をかけたり撫でたりするだけで愛犬は嬉しい気持ちになります。
生活環境の変化が犬のストレスになっている場合は、ストレスの原因を取り除くことが難しいです。引っ越し先でも、愛犬の匂いがついたものを使うことで安心できるようにしたり、室温が快適になるように調整するなど、できるだけ犬がリラックスできる環境を整えましょう。また、愛犬が新しい環境に慣れるまで、飼い主さんが優しく寄り添ってあげることも大切です。
散歩で体を動かしたりおもちゃで遊んだりするのも、ストレス発散に有効です。毎日散歩に連れて行ったり、一緒に楽しく遊んだりして愛犬のストレスを緩和してあげましょう。
ペットシーツを利用してトイレを覚えてもらう
トイレの場所が変わったことでトイレを失敗するようになってしまった場合は、ペットシーツを利用することでもう一度トイレの場所を覚え直してもらいましょう。
犬は、ニオイでトイレを覚えるので愛犬のおしっこを染み込ませたペットシーツをトイレに置いておくことで、ニオイからそこでトイレをすればよいのだということを理解できます。犬がペットシーツでトイレをしてくれたら、しっかり褒めましょう。次第に新しいトイレの場所を覚えて、おしっこが染み込んでいない状態でも正しい場所でトイレをしてくれるようになるでしょう。
カーペットの上など、間違った場所でトイレをしてしまった時は、しっかりおしっこのニオイを消すことが重要です。ニオイが残っていると、同じ場所で粗相してしまう可能性が高いので注意してください。犬は、一度トイレと認識した場所でトイレをする習性があります。頻繁に模様替えをしてトイレの場所をコロコロ変えていると、犬の負担になってしまうので気をつけましょう。
トイレ環境を整えて快適にトイレを使えるようにする
犬のトイレの失敗の原因がトイレの大きさが合っていないことや、環境に不満がある場合は、愛犬が快適に使えるようにトイレ環境を整えることで改善できます。
犬が成長してトイレが狭くなってしまっているのなら、愛犬の体より一回り以上大きいトイレに買い替えましょう。また、安心できない場所にトイレを設置してしまっている場合は、静かでプライバシーが守られる場所に移動してみることをおすすめします。
トイレの設置場所は、部屋の隅や家具の陰など、静かで落ち着ける場所が良いでしょう。犬は、寝床や食事をする場所とトイレが近くにあることを嫌がるのでその点も考慮してくださいね。
愛犬に気持ちよくトイレを使ってもらうには、常にトイレをきれいな状態に保つこともポイントです。汚れているトイレを使いたくないという理由で、他の場所に粗相してしまう犬もいるので飼い主さんはこまめに掃除することも重要ですよ。
犬が排泄するタイミングでトイレに連れて行く
1日の中で犬が排泄するタイミングは、ある程度決まっていますよね。朝起きた時や食事の後、寝る前など犬が排泄するタイミングに合わせてトイレトレーニングをすると効率よくトレーニングすることができます。
そろそろトイレの時間かなと思ったら、間違った場所でトイレをしてしまう前に、飼い主さんが愛犬をトイレまで連れて行ってあげましょう。連れて行った場所でトイレができたら十分に褒めてあげてくださいね。
トイレの失敗を防いで成功体験を積み重ねることで、犬のトイレトレーニングは上手くいくようになります。
トイレトレーニングをやり直す時のポイント
トイレトレーニングのやり直しは、できるだけ順調に進めたいですよね。また、毎日トレーニングを繰り返すうえで、犬にも飼い主さんにも負担の少ない方法を選ぶことも大切です。
トレーニング成功のポイントを押さえておけば、効率よくトレーニングをしながら愛犬と飼い主さんの絆をより深めていくことも可能でしょう。トイレトレーニングをやり直す時に意識したいポイントをご紹介します。トレーニングを開始する前にぜひチェックしてください。
叱ってはダメ!たくさん褒めて教える
犬のしつけの基本は、成功した時にしっかり褒めることです。
トイレトレーニングは、正しい場所でトイレができた時にたくさん褒めることで、愛犬が「トイレを上手にできると褒めてもらえる」「トイレトレーニングを頑張ると飼い主さんが喜んでくれる」と学習します。
犬がトイレを失敗した場合に叱るのはNGです。失敗するたびに飼い主さんが叱ると、犬はトイレをすること自体を叱られているのだと勘違いして「排泄はダメなこと」だと覚えてしまいます。
その結果、愛犬が飼い主さんの前ではトイレを我慢してしまったり、隠れて排泄するようになってしまうこともあるのです。叱られてばかりだとトイレトレーニングに対するモチベーションも低下するので、トレーニングの成功も遠のいてしまうでしょう。
トイレの失敗が続いても、叱らずに広い心で愛犬を応援してあげてくださいね。トイレの成功時には、笑顔で大げさなくらい褒めてあげることで、犬のやる気が持続し効率よくトレーニングが進むようになります。
トイレトレーニング用のグッズを利用する
トイレトレーニングをやり直す時は、グッズを利用すると犬がトイレを覚えやすくなります。トレーニング用のグッズでおすすめなのが、トイレトレーとしつけ用スプレーです。
段差や囲いがあるトイレトレーを使用すると、ペットシーツだけを敷いているよりもそこがトイレであることがわかりやすいので犬がトイレの場所を比較的簡単に覚えてくれます。また、トイレのしつけ用スプレーも、ペットシーツにスプレーしておくとニオイで犬がトイレだと認識しやすいです。
愛犬のおしっこをペットシーツに染み込ませておくのは、おしっこのニオイや見た目の汚さが気になるという場合は、ぜひスプレーを活用してみてみましょう。
コマンドで排泄させる方法もある
犬にトイレの場所を覚えてもらうことも大切ですが、飼い主さんがトイレに誘導した時や外出する前など、愛犬にトイレをして欲しいタイミングでトイレをしてもらえるようにコマンドを教える方法もおすすめです。
コマンドで排泄を促すためには、排泄の合図となる掛け声を決めます。トイレのコマンドとしてよく使われる掛け声には「トイレ、トイレ」「ワンツー・ワンツー」など。ただし、コマンドが変わると犬が混乱するので、家族全員が同じコマンドを使うことが重要です。掛け声が決まったら、愛犬が排泄をしている時にコマンドをかけ続けます。
何度も繰り返すうちに犬の中で排泄行為とコマンドが結びつき、最終的にはコマンドをかけることで排泄をするようになるでしょう。コマンドで排泄のタイミングをコントロールする方法はすぐには身につかないので、数ヵ月かけて根気よく覚えさせてくださいね。
失敗しやすい場所は撤去する
野生時代に外で暮らしていた名残で、犬は草や土のような感触の場所で排泄することを好む傾向があります。草や土に感触が近いふかふかしたカーペットの上や毛布の上などは、犬がトイレを失敗しやすい場所なのです。
飼い主さんが正しいトイレの場所を教えようとしても、カーペットの上など気に入った場所が他にあると、いつまでも間違った場所でトイレをしてしまいます。トイレトレーニングをスムーズに進めるために、犬がトイレを失敗しやすい場所は撤去してしまうことをおすすめします。
トイレトレーニングをやり直す時の注意点
犬のトイレトレーニングをやり直す時に、気をつけたいことがいくつかあります。間違ったやり方でトレーニングを続けてもトイレの失敗はなかなか減らせないうえに、犬も飼い主さんもストレスが溜まってしまうでしょう。
また、病気が原因で粗相をしている場合は、いくらトレーニングを頑張っても失敗の原因が取り除けないので意味がありません。原因ごとに適切な対応をすることが大切なのです。ここでは、トイレトレーニングをやり直す時の注意点を解説します。正しい方法でトイレの悩みを改善するために参考にしてください。
焦ってはダメ!時間をかけてトレーニングする
飼い主さんは、トイレトレーニングを早く完了させたいかもしれませんが、トイレトレーニングは焦らずに根気よく時間をかけて行うものだと考えましょう。
子犬のころは比較的簡単にトイレを覚えられますが、成犬になってからトイレトレーニングをやり直すと、以前のようにスムーズに覚えられないことが多いです。成犬は、子犬のように頻繁にはトイレをしないのでトレーニングの機会が少ないですし、成長すると頭が固く性格も頑固になりやすいので、何かを学習するのに時間がかかるのは仕方がありません。
飼い主さんが焦ったりイライラしたりすると、それが犬にも伝わってトレーニングへのモチベーションが低下してしまいます。成犬のトレーニングは、子犬のトレーニングの倍の時間がかかることを覚悟して、気持ちに余裕をもって臨みましょう。
諦めずにじっくりトレーニングに励む姿勢を見せることで、愛犬の飼い主さんに対する信頼も深まり、少しずつトイレトレーニングが上手くいくようになるでしょう。
病気が疑われる場合は動物病院を受診する
思い当たる原因がないのに急に粗相をするようになるなど、愛犬の様子が普段と違う場合は、病気の可能性を考えてすぐに動物病院を受診しましょう。
トイレの失敗が目立つようになったり、尿の量や回数が増えたりなど、ちょっとした異常に飼い主さんがすぐに気づくことで、病気の早期発見につながるケースも少なくありません。病気は手遅れになる前に適切な治療を開始することが回復の鍵です。愛犬の些細な変化も見逃さずに、獣医師に相談することが大切です。
トレーニングは毎日、一貫した態度で行う
飼い主さんにも、忙しい日や疲れている日はあるかと思いますが、トイレトレーニングをやり直している間は、毎日トレーニングを行うことが大切です。
その日によってトレーニングをしたりしなかったりすると、犬は「トイレの場所を覚えなくてもいいのかな?」と戸惑ってしまいます。犬が混乱せずにトレーニングに励むためには、毎日欠かさずにトレーニングを続ける必要があるのです。
また、その時々で飼い主さんの態度が変わることも、犬を混乱させてしまうので注意してください。トイレを成功したらいつも褒めてくれるのに褒めてもらえない時があったり、トイレを失敗しても普段は叱られないのに叱られる時があったりすると、愛犬は飼い主さんが何を望んでいるのかがわからなくなってしまいます。
機嫌次第で態度が変わる飼い主さんのことを、犬が「信頼できない」と感じてしまう可能性もあります。常に一貫した態度で根気よくトレーニングができる飼い主さんは、愛犬にも信頼してもらえるのでトレーニングによい影響を及ぼすでしょう。
▼「トイレのしつけの基本」を知りたい方はこちら
まとめ
一度トイレを覚えた犬が、何らかの原因でトイレを失敗するようになってしまうことは珍しくありません。その時に大切なのは、飼い主さんが愛犬を厳しく叱るのではなく、失敗の原因を考えて理由ごとに適切な方法でトイレトレーニングをやり直すことです。
子犬よりも時間はかかるものの、成犬になってからでもトイレトレーニングのやり直しは可能です。トイレが成功した時には、愛犬をたくさん褒めてモチベーションを維持しながらコツコツとトレーニングを続けましょう。
トイレの失敗の原因は様々ですが、愛犬に病気の疑いがある場合は迅速な対応が求められます。トレーニングは必要ですが、まずは愛犬のちょっとした変化も見逃さずいつもと違ったら早めに動物病院を受診していつまでも愛犬の健康を守ってあげましょう。