犬がトイレで寝る理由
子犬は、何をしても可愛らしく、一日中ながめていても飽きません。そんな可愛い子犬ですが、子犬の困った行動に悩まされることもあります。その一つが、トイレで寝ているのを度々見かけることです。
隣には、子犬のために寝床が用意されておりベッドもきちんと整えてあるにもかかわらず、何故かトイレで寝てしまう。そのような経験をしたことがありませんか。
子犬がトイレで寝てしまうのは、何故なのでしょうか? それには、いくつかの理由が考えられます。稀に、成犬がトイレで寝ているのを見かけることもありますが、それとは少し事情が違うようです。
子犬をトイレで寝させないようにするには、何故トイレで寝ているのか、まず、その理由を知る必要があります。
理由1.自分の匂いで安心できる
子犬に限らず犬には、自分の匂いが付いたものが側にあると、安心できるという性質があります。そのため、自分の排泄物や自分自身の匂いが付いたトイレは、犬にとって安心できる場所であるといえます。
排尿後きちんと処理したつもりでも、嗅覚が優れている犬は、少しでも自分の匂いが残っていれば嗅ぎ取ることができるのです。逆に、犬は安心できない場所では、排泄しないのが普通です。
理由2.トイレであることを認識できていない
子犬を迎える時には、ご家庭に子犬の専用スペースとして、ゲージの中に寝床とトイレを用意されることが多いと思います。
ですが、ゲージ内に置かれた寝床とトイレの距離が近過ぎると、まだ幼い子犬には、寝床とトイレの区別がつきにくい場合があります。
それとは反対に、寝床とトイレが離れ過ぎていると、遊び過ぎて疲れている時や眠気が勝ってしまっているような場合、用を足した後、そのままトイレで寝てしまうということもあるようです。
理由3.飼い主にかまってもらいたい
ほとんどの飼い主さんは、子犬がトイレで寝ている姿を見ると、大慌てで子犬をトイレから連れ出そうとするのではないでしょうか。
その行為が、子犬に「飼い主さんにかまってもらっている」「遊んでもらっている」と勘違いさせてしまい「もっとかまってもらいたい」という気持ちから、わざわざトイレで寝ている、ということも考えられます。
理由4.寝床よりもトイレの方が快適な環境になっている
トイレに敷くシートは、吸湿性がよく肌触りも良いので、ついついそこで寝てしまうということもあります。
夏の暑い日には、シートがひんやりと心地良く、逆に冬の寒い日には、ぽかぽかと温かく感じて、寝心地の良さからトイレで寝ることがあるようです。
成犬の場合は、そのことをよく分かっていて、わざわざトイレで寝ている姿を見かけることがあります。
また、トイレの形状や大きさが自分が寝る時の姿勢に合っていたり、周りが囲われていたりすることで、寝心地が良く感じているのかもしれません。
理由5.使っている寝床が気に入らない
犬は本来きれい好きな動物です。あやまって寝床で排尿してしまい、そのためにベッドが湿っていたり汚れているような場合、寝床よりトイレの上で寝ることを選んでしまうということもあります。
また、子犬が落ち着けない場所に寝床がある場合や寝床の感触が気に入らない場合、寝床よりトイレの近くで寝る、またはトイレで寝る、というようなことがあるようです。
理由6.体調が悪く不安な時
成犬になると、病気など体調の悪い時や、何らかの原因で心理的に不安な時に、トイレで寝ているのを見かけることがあります。
これは、犬の習性により安心できる場所を求めていたら、一番安心できる場所が、部屋のすみにあるトイレだったから、と考えられます。
トイレで寝るのには習性が関係している
子犬がトイレで寝てしまうのには、上記のような様々な理由が考えられますが、そこには犬の習性が大きく関係しています。
犬の習性や本能は、生まれながらにして持っているものなので、そう簡単に人間がどうこうできるものではありません。そのことをよく理解したうえで、子犬をトイレで寝かせないように工夫することが大切です。
犬には縄張り意識がある
犬の祖先であるオオカミは、自分や仲間を外的から守る為に、集団ごとに縄張りを持って生活しています。縄張り意識は犬の中にも本能として残っており、犬も自分の縄張りを主張します。
強弱の差はありますが、雄犬と雌犬のどちらにも縄張り意識はあるのです。犬は、排尿し自分の臭いを付けることで縄張りを主張します。
そのため、自分の臭いが付いている場所は自分の縄張りだと考えて、その場所では安心して落ち着くことができます。また、自分の臭いが付いているものが自分の側にあると、同じように落ち着くことができるのです。
どんな動物でも、安全で安心だと感じる場所でなければ、ゆっくり寝ることはできません。子犬のために用意された寝床であったとしてもです。
環境が整っていないと、排尿し自分の臭いが付いているトイレの方が落ち着いて安心できると感じて、トイレで寝るようになってしまいます。
穴蔵のような場所が好き
かつてオオカミは、雨や外的などから身を守るために穴を掘り、そこを巣として暮らしていました。そして犬にもその習性が本能として残っています。
穴を掘るのが大好きですし、周りが囲まれた穴蔵のような場所は、犬にとって安心して過ごすことができる場所なのです。
人間と暮らす犬が、安心して落ち着ける場所には「周りに危険なものがなく、人の出入りがあまり気にならない」「日当たりがよく、風通しがよい」「周囲が囲まれている」などいくつかの条件が必要です。
それらが整っておらず犬が落ち着けないと感じると、その寝床では寝なくなってしまいますので、できる限り条件に沿った場所を提供することが大切です。
犬は習慣で行動する
犬は、習慣で行動する動物です。トイレで寝ることが続いてしまうとそれが習慣になってしまい、寝床ではなくトイレで寝ることを当たり前のことだと思うようになってしまいます。
犬がトイレで寝ないための4つの対策
子犬は、トイレで寝るのを自然にやめるようになるのでしょうか?それとも、トイレで寝ないようにしつけをする必要があるのでしょうか?
子犬の時にトイレで寝るようなことがあっても、ほとんどの場合、成犬になるとそのようなことはしなくなります。
ですが、多くの飼い主さんは「できるだけ早い時期に、トイレで寝るのをやめさせたい」と考えておられるのではないしょうか?では、どうすれば、トイレで寝るのをやめさせることができるのでしょう。
子犬は、自分の寝床が落ち着ける場所であれば、安心して寝床で寝ることができます。まず、寝床の環境を見直し、その上で、トイレの環境も見直してみる必要があります。
対策1.寝床の環境を見直す
子犬が快適に安心して眠ることができるように、以下の条件を満たすように環境を整えてみてください。
- 清潔で、ふかふかと柔らかい
- 周りが囲まれている
- 安心できる匂いがする
- 夏は涼しく、冬は温かい
- 静かで人の行き来が気にならない
これらの条件が揃っている寝床において、犬は安心して眠ることができます。まず、子犬がトイレではなく寝床で寝たいと思えるように、寝る場所の環境を整えてあげることが必要です。
対策2.トイレと寝床の位置を入れ替える
寝床のチェックが終わったら、トイレと寝床の位置を入れ替えて、それぞれを少し離れた場所に設置してみましょう。そうすることで、子犬がトイレと寝床をはっきりと区別しやすくなります。
対策3.トイレトレーを買い替える
トイレトレーを違った形状、違った大きさのものに替えてみましょう。たとえば、周りの囲みが低いものや周囲が囲まれておらずフラットなものなどです。
また、トイレの中で寝られないような小さなものなど、自分にとって快適な形状でなければ、トイレで寝なくなる可能性が高くなります。
対策4.トイレトレーニングを見直す
トイレトレーニングを見直してみることも重要です。
- 上手にできた時には、大袈裟に誉めてあげる
- トイレをいつも清潔に保つ
- 失敗した時は、叱らず、速やかに処理する
トイレで用を足すことを完全に理解できている子犬は、トイレで寝ることはあまりないようです。
トイレの場所をしっかり教え、トイレで用を足すことを子犬の習慣にさせるトイレトレーニングには、時間と根気が必要です。焦らず気長に子犬のトレーニングに付き合っていきましょう。
▼「トイレのしつけの基本」を知りたい方はこちら
まとめ
犬は自分の気持ちを言葉にして伝えることができません。普段から犬のことをよく見て観察し、今、犬が飼い主さんに伝えようとしていることは何なのか、飼い主さんが犬の気持ちを汲んであげることが大切です。
また、子犬には、トイレで寝てはいけない理由が分かりませんし、それを言葉で説明しても理解することはできません。
トイレで寝ることをやめさせたいのであれば、飼い主さんが、寝床で寝ることを子犬に習慣として身に付けてあげることが必要です。
子犬に学習させるには、時間と根気が必要ですが、これから子犬が人間と共に快適に暮らしていけるように、無理をせず、子犬と一緒に楽しみながら頑張りましょう。