マーキングとおしっこの違いとは?
犬のマーキングは、おしっことは意味が異なります。マーキングは「縄張りを主張するための行為」で、おしっこは排泄です。
マーキングは高い位置にしますが、おしっこは低い位置にします。マーキングを高い位置にすることで、自分の体の大きさを周囲にアピールしていると考えられ、特に縄張り意識の強いオス犬はマーキングをすることが多いです。
ただし、オス犬であってもマーキングしない犬もいます。するかどうかは個体差や性格によりますが、ほとんどのオス犬は散歩中にマーキングをすると考えていいでしょう。おしっこは排泄の意味があるため、溜まった分だけ全て出しますが、マーキングはにおいを縄張りに付けることから少量ずつ排出します。
このように、犬の散歩中のマーキングとおしっこは尿を排出しているということは同じですが、意味合いはまったく異なるものになります。
犬が散歩中にマーキングする理由
犬が散歩中にマーキングをするのには、さまざまな理由があります。飼い主としては、「なんでいつもこまめにマーキングするの?」と感じるかもしれませんが、理由がわかれば愛犬の気持ちを理解できるかもしれません。
次に、犬が散歩中にマーキングをする理由について解説します。
自分のテリトリーを主張するため
犬の祖先といわれるオオカミは、縄張り意識が強い動物です。そのため、犬もオオカミの血を引いて縄張り意識が強いといわれています。
犬はマーキングをすることで、周囲の犬に自分の存在を主張しているのでしょう。より高い位置にマーキングをしようとするのも犬の強い縄張り意識によるものです。また、尿を少量ずつ排出することで自分のにおいを様々な場所に付けることができます。よりたくさんの犬に「ここに大きな体の犬がいるぞ!」と伝えているのかもしれません。
他の犬とコミュニケーションをとるため
犬の散歩中のマーキングは、他の犬とのコミュニケーションの意味合いも込められています。
犬は嗅覚が優れているため、他の犬のマーキングのにおいを嗅ぐことで、相手の年齢や性別などが判別できるといわれています。
犬は、散歩中にさまざまな場所にマーキングをすることで、「ここにこんな犬がいますよ」とメッセージを送っているのでしょう。このように、コミュニケーションの意味が込められているのも、犬のマーキングの特徴です。
発情期を相手に伝えるため
発情期を迎えたメス犬は、子孫を残すためにも多くのオス犬に自分の存在をアピールします。
通常、メス犬はマーキングをすることはあまりありませんが、半年に1度を目安に訪れる発情期になると、メス犬もマーキングをするようになります。犬のおしっこは、性別や年齢の他に、発情期かどうかもにおいを嗅ぐだけで相手に伝わるため、いつもよりも多くマーキングをしてオス犬にアピールをするのです。
いつもの散歩道に自分のにおいを付けて安心したいため
犬によっては、いつもの散歩道で自分のにおいを付けて安心したいということも考えられます。
特に警戒心の強い犬は、散歩中に自分のにおいがしなければ緊張してしまうこともあるでしょう。散歩中にこまめにマーキングをすることで、いつもの散歩道に自分のにおいが付いて、安心して散歩を楽しめるという犬もいるはずです。
また、ドッグランなどの慣れない場所でマーキングを繰り返してしまう犬も同様の理由です。犬がいつもよりもマーキングが多くなった時は、ストレスに配慮しなければなりません。
マーキングをやめさせる方法はある?
飼い主によっては、犬の散歩中のマーキングをやめさせたいと考える人もいるでしょう。マーキングは本能的なものであるため、しつけでやめさせるのは難しいかもしれません。
ですが、いくつかの注意点を守れば犬のマーキングはやめさせることができます。散歩中のマナー違反を避けるためにも、犬にマーキングさせるのは避けたほうが良さそうです。
また、マーキングをやめさせなければ犬のほうが優位に立ってしまい、部屋でのイタズラや無駄吠えなどの問題行動に発展する可能性もあります。一見問題のなさそうな広々とした公園でマーキングをするのも、公園で遊ぶ子どもたちに悪影響を及ぼすことが考えられるでしょう。
次に、マーキングをやめさせる方法をいくつかご紹介します。
マーキングする前にリードを引いて犬をコントロールする
犬がマーキングをする前は地面のにおいを嗅ぎます。また、他の犬がマーキングをした跡があるとその上からマーキングをしようと試みるでしょう。
それらのマーキングのサインがみられたら、リードを引いて足早に歩きます。早めに歩くことで物理的にマーキングをさせないようにします。特に、他人の家まわりや自転車、車などトラブルに発展しそうな場所では、足早に歩いてマーキングを予防すると良いでしょう。
おやつやおもちゃを利用してマーキングから気をそらす
そもそもマーキングは本能的な行動であるため、しつけで完全にやめさせるのは難しいです。そのため、他のことで気をそらせるのが効果的でしょう。
犬にマーキングのサインがみられたら、おやつやおもちゃを出して気をそらしましょう。他のことで気をそらすことで、しつけのようなストレスをかけずにマーキングをやめさせることができます。
ちなみに、犬は食事まわりの場所で排泄をすることは少ないです。その習性を利用して犬のマーキングを予防するのも良いでしょう。
避妊・去勢手術で高確率で予防できる
犬の散歩中のマーキングは、縄張り意識によるもので避妊や去勢手術をすることで高確率で予防できます。特にオス犬の場合は、去勢手術でマーキングをやめる可能性は高いでしょう。
しかし、一部の犬は避妊や去勢手術をしてもマーキングをやめない場合があります。手術後の犬のマーキングが直らないのは、ストレスが大きな原因だといわれています。もしも避妊や去勢手術をしたにも関わらずマーキングが直らないのであれば、飼い主との信頼関係や生活環境の変化など、マーキングの原因となりそうなものを考えてみると良いでしょう。
ちなみに、避妊や去勢手術をした犬がドッグランなど他の犬が多くいる場所でのみマーキングをする場合は、他の犬のマーキングを見て真似をしている可能性もあるといわれています。
マーキングはNG!飼い主が知っておくべき散歩のマナーとは
基本的に、自分の家や庭以外で犬にマーキングをさせるのはマナー違反です。誰であっても自宅の前で他の犬にマーキングをされるのは迷惑でしょう。もちろん、電柱や壁にするのもマナー違反です。
犬のマーキングは本能的な行動ではあるものの、飼い主に止められてストレスに感じることは少ないため、基本的にはさまざまな対策をして散歩中のマーキングをやめさせなければなりません。
犬の散歩で大切なのは、飼い主が主導権を握るということです。あくまで、飼い主の散歩に犬がついて行くという考えでなくてはいけません。犬が主導権を握ってしまうと、いたるところでマーキングをしてしまいます。基本的には飼い主の行きたい場所を歩きたい速度で歩くようにして、犬が地面のにおいを嗅いでいても構わずに歩きましょう。
しかし、本能的な行動であるマーキングを完全に予防することはできません。もしも犬がマーキングをしそうになったら、トイレシートを敷いてその上にさせましょう。また、いつも同じ場所でトイレをさせたり、自宅できちんとトイレをさせてから散歩にでかけるのも大切なマナーです。また、トイレシートを敷く前に犬がマーキングをしてしまったら、すぐに上から水をかけましょう。
犬の散歩にはビニール袋はもちろん、ペットボトルに入れた水やトイレシートなどを持ち歩くことが最低限のマナーといえます。
▼「犬の散歩マナーの基本」を知りたい方はこちら
まとめ
犬のマーキングは、おしっことは異なり縄張りを主張するという意味が込められています。また、嗅覚が優れた犬ならではのコミュニケーションツールとしての側面もあります。
犬にとって、マーキングは本能的な行動なので完全に予防することはできませんが、「足早に歩いて物理的にマーキングをさせない」、「おやつなどで気をそらす」など、飼い主の気遣いである程度マーキングをやめさせることは可能です。
マーキングをやめさせても、犬のストレスとなることは少ないでしょう。もしも完全にマーキングを予防させたいのであれば、避妊や去勢手術をおすすめします。また、日頃から犬の散歩にはトイレシートや水などを持ち歩くようにしましょう。
散歩時のマナーを守って、近隣住人とのトラブルを避けることも飼い主としての努めといえます。