犬が散歩中にわがままで歩かない理由
犬が散歩中に歩かなくなるのは、本当にわがままなだけなのでしょうか?もしかしたら、ほかにも理由があるのかもしれません。言葉を話すことができない犬だからこそ、歩かないことで飼い主に何かを伝えようとしていることも考えられます。
もしもわがままなら、どのような理由が挙げられるのでしょうか。まずは、犬が散歩中に歩かない理由についてご説明します。
匂いを嗅いで確かめたいものがある
犬が散歩中に立ち止まって歩かなくなるのは、匂いを嗅いで確かめたいものがあるという理由が挙げられます。
犬の嗅覚は人間に比べて100万倍優れているとも言われているため、人間が嗅ぎ取れない匂いも感じとっています。草木やほかの人や犬、食べ物などの匂いを犬は気にしていたり、特にオスは本能的に発情期のメス犬の匂いを嗅ぎ取ります。
犬の本能なので仕方ないことではありますが、散歩中の飼い主の指示を無視して匂いを嗅ぎすぎてしまうというのは信頼関係を構築する上で良くありません。犬が自分の要求を優先することがないように、日頃からきちんとしつけをしておく必要があります。
歩かないと良いことが起きると覚えている
犬は、過去に起こったことをいつまでも覚えているものです。
過去に立ち止まったことで犬の気を惹こうと優しく声をかけたりおやつを与えたり、または抱っこをしたりカートに乗せたりなどしたことはありませんか?それらの行動が犬が歩かなくなってしまう原因になるのです。
犬は、犬は、散歩中に歩かないことで良いことが起きると覚えてしまい「立ち止まったらおやつがもらえる」「抱っこしてもらえる」と期待しているのでしょう。
抱っこされて甘えたい気持ちが強い
甘えん坊な性格の犬は、飼い主に抱っこされたいという気持ちから、あえて散歩中に歩かなくなっている可能性が考えられます。個体差はありますが、チワワやミニチュアダックスフンド、ポメラニアンなどの犬種は甘えん坊であることが多いです。
また、飼い主に依存する「分離不安症」の犬にも多くみられます。分離不安症は、飼い主と離れることで無駄吠えなどの問題行動を起こす精神的な病気で、多くの原因は飼い主にあるといわれています。
肥満気味で体力がない犬も、「もう歩き疲れたから、抱っこしてほしいなぁ」と甘えたい気持ちになっていることが多く見られます。
行きたいお散歩ルートがある
もしかしたら、犬の行きたい散歩ルートがあるのかもしれません。特に柴犬やチワワ、ジャックラッセルテリアなどの気が強いといわれる犬種は、自分の行きたい散歩ルートに飼い主を引っ張って行こうとすることもあります。
また、ラブラドルレトリバーやボーダーコリーなど、頭が良いといわれる犬種は、過去に良い思い出が多い場所を積極的に歩こうとします。飼い主にとっては、平たんで歩きやすい道が良いと考えるかもしれませんが、犬は草むらなどの歩きにくい場所を好む傾向にあります。
飼い主と犬の好む散歩ルートは合致しないことが多いですが、「犬の散歩」はあくまで飼い主が主導してコントロールすることが大切です。
身につけるアイテムが気に入らない
犬は、散歩時に身につけるアイテムが気に入らない時にも歩きたがらないことがあります。犬が散歩時に嫌がるアイテムとしては、
- 装飾の多い服
- 重い首輪
- 雨具
- ハーネス
- 犬用の靴
などです。特に雨具や犬用の靴は、身につけることが少ないアイテムなので慣れていないものに犬は嫌がることは少なくありません。また、重い首輪は犬が嫌がるだけでなく、首にも大きな負担をかけてしまうため、シンプルで負担の少ない重さで丈夫なものを選ぶと良いでしょう。
散歩中に服を着せたいと考えているなら、なるべく子犬の頃から室内で少しの時間だけ着せるなどして、徐々に慣れさせていくのが良いでしょう。成犬になってからでも服を着せることはできますが、違和感などから嫌がってしまったり、固まって動かなくなってしまう子もいるため、無理強いはNGです。
外が怖い
犬が散歩時に歩きたがらないのは、単純に外が怖いからかもしれません。
子犬の頃に十分に社会化ができていない成犬は、見慣れない景色や音、人や他の犬との接し方も経験したことがなければどうして良いのか分からずに恐怖などから動かなくなってしまったり、パニックを起こしてしまう場合も。
また、社会化不足によりほかの犬や人に対して攻撃的になってしまう場合もあるため、無理に散歩させようとしたり、歩かないからと叱るのは逆効果になります。まずは、色々な音や物、人や他の犬などにも少しずつ慣らしていくことから始め、散歩は毎日少しずつ距離を延ばしていくなど、愛犬のペースに合わせて徐々に散歩を好きになってもらいましょう。
犬が散歩中にわがままで歩かない時の対処法
次に、犬が散歩中にわがままで歩かない時の対処法をご紹介します。間違った対処をしてしまうと、犬がさらに散歩嫌いになってしまう可能性があるため慎重に対処することが大切です。
犬にとって毎日の楽しみはごはんと散歩。飼い主といっしょに室内で過ごす時間も大好きですが、運動不足や退屈などからストレスが溜まってしまいます。運動と気分転換のためにも毎日の散歩は欠かせません。
また、ストレス解消や筋肉の維持など犬の健康を維持する上でも散歩はとても大切です。飼い主と犬がともに散歩を楽しめる環境づくりをしましょう。
散歩と良い思い出を結びつける
犬が散歩に対して何らかのトラウマがあるなら、「散歩=怖くて嫌なこと」から「散歩=良いことが起こる」とポジティブなイメージに変えてあげましょう。
犬にとって良いことは、
- 歩いたら飼い主に褒めてもらえた
- 歩いたら飼い主からご褒美をもらえた
- 散歩をしていたら知らない人(協力者の知人)からおやつをもらえた
など、飼い主や他の人から褒められたり、ご褒美がもらえることで「散歩すると良いことが起こる」とポジティブな記憶に上書きされ、自分から散歩をおねだりするようになるかもしれません。
基本的に犬は飼い主から褒められることが大好きです。散歩中に「今日はいい天気だね、きちんと歩けて偉いね」などと話しかけながら歩くだけでも犬は散歩が楽しいものだと認識するでしょう。
また、ご褒美としておやつを与えるのは、犬の性格によっては逆効果になることも。頭の良い犬であれば、飼い主からおやつを与えられるまで歩こうとしないことがあります。歩くことがおやつ目的にならないよう、与えるタイミングが大切です。
ご褒美に毎回おやつを与えるのではなく、しっかり褒めることや、おもちゃで一緒に遊ぶなども犬にとってご褒美になりますので様子を見ながら使い分けて上手にしつけましょう。
散歩ルートを毎日変える
犬が特定の場所だけ歩かないのであれば、散歩ルートを変えるのもひとつの方法です。その場所に何か怖いものがあるのか、そのルートに苦手な犬がいるのかなど、何に対して恐怖を感じているのかも確認しましょう。
毎日同じ道を歩くより、たまには違う道を散歩することで、新しい景色や初めての人や犬などに会うことも良い刺激となり犬の気分転換にもなるでしょう。「今日はどんな場所を歩くのかな?」と、犬は毎日の散歩が楽しみになるかもしれませんよ。
走ったり歩いたりして、飼い主の動きに注目させる
犬がわがままで散歩中に歩かない時は、飼い主の動きに注目させるのも効果的です。
犬の「疲れた」や「こっちの道は行きたくない」などの要求を「飼い主がいつもと違う、次はどんな動きをするのかな?」と興味を示す対象を変えてしまうのです。
飼い主がダラダラと歩いているだけでは犬も楽しいと感じません。飼い主が急に走り出したり、方向転換をしたりすると犬は自然と飼い主の動きに注目するようになります。この飼い主の急な動きは、散歩時に引っ張る犬のしつけにも効果的です。
時には休憩させてもOK
犬が散歩中に疲れた様子を見せたら、少し休憩させましょう。特に、老犬や肥満気味の犬は、休憩をしながらゆっくり散歩をしないと体に負担をかけてしまうこともあります。
犬が疲れた様子を見せたら、動かなくなる前に休憩させるのがポイント。犬が疲れて立ち止まったり動かなくなってから休憩をとってしまうと、ちょっと疲れたら動かなく良いんだと犬が勘違いして逆効果になることもあります。
散歩は飼い主さん主導で、休憩のタイミングも飼い主さんが決めることが大切です。犬が疲れてしまう前に適度に休憩を入れながら、体に無理なく散歩を楽しみましょう。
散歩グッズを変える
首輪やリード、犬の服などの散歩グッズを変えることで、歩いてくれるようになることがあります。
首輪が重かったり、ハーネスを嫌がるなら、軽くて丈夫な首輪やリードに変えてみたり、服や雨具を着せると窮屈だったり違和感がある様子なら、自由に動けて足を通さないタイプのものに変えてみるだけで、スムーズに歩いてくれるようになることもあります。
雨や寒さ対策などで服を着せたいと思うのは当然のことかもしれませんが、ダブルコートの犬種など寒さを苦手としていないのであれば無理に服などを着せる必要はありません。嫌がるようであれば無理強いはせず、愛犬にとって快適な散歩にしてあげましょう。
犬が散歩中にわがままで歩かない時にしてはいけないこと
犬が散歩中にわがままで歩かない時に、してはいけない注意点があります。飼い主との信頼関係に溝ができてしまったり、犬の健康面に悪影響を及ぼすことも。注意点に気をつけることで、犬が散歩中に歩かなくなっても落ち着いて対処できるでしょう。
犬の体を無理やり引きずる
犬が散歩中にわがままで歩かなくなったからと、リードを引っ張って無理やり体を引きずるのはNGです。犬の体を無理やり引きずることは、体に悪影響を及ぼす可能性があります。
- 肉球が傷つく
- 首輪で首が絞まって苦しい
- 喉に負担をかける
- ハーネスの場合は体に食い込んで痛い
- 犬に恐怖心を与える
など。特にアスファルトの上で犬を無理やり引きずってしまうと、肉球が擦れて怪我をしてしまいます。デリケートな肉球が傷ついてしまうと、犬は痛みなどからさらに歩かない原因になってしまいます。
また、飼い主に対して恐怖心を持ってしまえば、散歩だけでなく家の中でも落ち着いて過ごすことができなくなることもあります。ほかにも、首が絞まって苦しかったり、喉に負担をかけてしまうので、動かなくても無理に引っ張っるのはやめましょう。
犬のわがままを受け入れ続ける
犬が散歩中にわがままで歩かない時に、犬の要求を受け入れ続けてはいけません。
犬が歩かないからと、抱っこしたり、動くまでなだめたりなど、犬の要求に応えてしまうとなんでも思い通りになると勘違いしてさらに歩かなくなる原因になります。飼い主に主導権があること、思い通りに要求は通らないことをしっかりとしつけましょう。
イライラして犬を感情的に叱る
犬が散歩中にわがままで歩かない時に、イライラしてしまうこともあるでしょう。しかし、犬を感情的に叱るのは絶対にしてはいけません。
歩かないからと、「ダメでしょ」などと感情的になっても、犬は恐怖を感じてトラウマになることも。散歩で歩かなくなるだけでなく、散歩自体も嫌いになってしまったり、飼い主に不信感を抱いてしまえば、信頼関係も崩れてしまいます。
散歩が嫌いになってしまえば、運動不足やストレスなどから病気に繋がってしまう恐れもあり、犬にとって何も良いことはありません。しつけのつもりでも感情的になるのは「怒る」ことです。冷静にいけないことを「叱る」のがしつけです。
犬が散歩で歩かない理由はわがまま以外にもある?
犬が散歩で歩かない理由は、すべてがわがままなのでしょうか?もしかしたら、他の理由や原因があるかもしれません。
すべてを犬のわがままだと決めつけてしまうと、信頼関係に溝ができてしまうだけでなく、歩かない理由が分からなければ改善することもできません。理由によっては、無理に散歩に行く必要はありません。まずは理由を確認することが大切です。
老犬は体の不調や体力の低下に注意
老犬の場合は、体調不良や体力の低下により歩きたくても歩けなくなっている可能性が考えられます。たとえ元気に見えても体は老化による影響を受けています。
筋力が低下し、足腰が弱くなってしまえば、今まで平気だった距離も疲れてしまうでしょう。また、歩く速度も遅くなり時間もかかってしまうかもしれません。無理をさせてしまえば、体調不良を引き起こす原因にもなります。
対処法
老犬の散歩は、運動や楽しみだけではなく、筋力維持やリハビリ、認知症予防、ストレス発散などの意味でも必要ですが、量ではなく質を重視しましょう。
老化の散歩は絶対に必要ではなく、状況や体調に合わせて時間や距離、散歩コースを変えてもいいでしょう。また、行きたがらなければ無理に散歩する必要もありません。老犬と散歩を楽しむ時は、補助的な役割を持つハーネスを使用したり、疲れたらカートに乗せてあげたり、愛犬に合わせて散歩を楽しみましょう。
散歩ルートに嫌な思い出がある犬もいる
もしかしたら、いつもも散歩ルートで嫌な思い出があるのかもしれません。知らない犬に吠えられたり噛まれたりした、車にクラクションを鳴らされたなど、犬にとって嫌なことがあった場所は、いつまでも覚えているものです。
トラウマになってしまうと、完全に払しょくすることは難しいですが、犬にいつまでも特定の場所やものを怖がらせるのも良くありません。そのため、きちんと対処することをおすすめします。
対処法
犬の過去の嫌な思い出は、良い思い出で記憶を上書きしてしまうことが良いでしょう。
過去に嫌な思い出がある場所で犬が立ち止まりそうになったら、犬の名前を呼んでおやつを与えます。それを繰り返すことで、犬は苦手である特定の場所を「嫌なことがあった場所」から、「飼い主からおやつをもらえる場所」と学習するはずです。
しかし、どうしても犬が嫌がるようであれば、別の散歩ルートに変えて楽しく快適に散歩してもらいましょう。
夏の暑さや冬の寒さが苦手な犬は多い
犬は、特に暑さに対する体温調節が苦手です。人間は暑いと汗を流して体温調節をしますが、犬は汗腺が肉球と鼻にしかないため、暑くても十分に汗を流すことができずに体内に熱がこもってしまいます。
また、チワワなどの小型犬やミニチュアダックスフンドなどの胴長短足の犬種は、地面との距離が近くなるため、アスファルトにこもった熱もより多く浴びることになり、熱中症のリスクが高くなります。
体毛が二重構造のダブルコートで長毛種のゴールデンレトリバーやシェットランドシープドッグや、寒冷地出身のシベリアンハスキーなども寒さには強いですが、暑さに弱いとされています。
対処法
夏の散歩は熱中症対策が重要です。こまめな水分補給や冷感グッズなどで体を冷やすなど、また太陽の出ている日中を避け、早朝や夜など比較的気温が低い時間帯に散歩することも大切。飼い主が道路の温度を確認してから散歩するのが良いでしょう。
冬の散歩は、日差しのある比較的温かい時間帯にするのがおすすめ。イタリアングレーハウンドなど短毛種で寒さに弱い犬種には、防寒具なども利用すると良いでしょう。
▼「犬の散歩のしつけの基本」を知りたい方はこちら
まとめ
犬が散歩で歩かないのは、飼い主に抱っこされたい、行きたい散歩ルートがあるなど要求によるわがまが原因の場合が多いです。
散歩中のわがままにいつも応えていては、さらに状況が悪化してしまうため、しっかりとしつけをする必要がありますが、無理やり引きずったり叱ったりしてはいけません。犬との信頼関係に溝を作らないように、なるべく犬に散歩を楽しんでもらうように対処しましょう。
また、歩かない理由には、体調不良や過去のトラウマが原因の場合もあります。日頃から愛犬の様子をよく観察し、いつもと違う少しの変化にもすぐに気づけるようにしましょう。
散歩は犬にとって大きな楽しみのひとつです。歩かなくなったり、嫌がっているようなら、散歩ルートを変えたり、週末にはドッグランに出かけて一緒に遊んだり、体調に合わせて時間や距離も変えてみるなど、愛犬から散歩に行きたがるような楽しい散歩にできるのは飼い主さん次第です。