過去イチ暑いといわれた夏が終わって、爽やかな秋の気配が急接近してきましたね。
秋といえばやはり食欲。人間はもとより、わんこたちも涼しい季節になると食欲が増し、活動的にもなってきます。そこで気をつけたいのが「誤飲」。
犬や猫の誤飲は、秋から冬にかけて増えてくるという報告もあるんですよ。
誤飲をしても、わんこが自分で吐き出したり、ウンチと一緒に排出されたりすることもありますが、場合によっては手術が必要になってしまったり、中毒を起こすなど、命に関わる事態になってしまうこともあるので注意が必要です。
今回は、わんこが誤飲してしまいやすいものや、誤飲すると危険なものをご紹介するとともに、誤飲対策についても解説しますね。
誤飲しやすい犬のタイプや年齢
どの犬種が誤飲しやすいかということは一概にはいえませんが、シベリアンハスキーやラブラドール・レトリーバー、バーニーズ・マウンテンドッグのような大型犬や、ミニチュア・ピンシャーやビーグル、ジャック・ラッセル・テリアのように好奇心旺盛で活発な犬種は比較的誤飲しやすい傾向にあるといえるようです。
では、わんこの年齢によって誤飲しやすいときはあるでしょうか?
これについては、上のグラフを見れば一目瞭然。1歳までのパピーの時期がダントツで誤飲の可能性が高く、年齢を重ねるごとに可能性が低くなっていることが示されています。
パピーの時期は好奇心が旺盛で、いろんなものを口にしてしまいがち。拾い食いをしたり、おもちゃなどでの遊びに夢中になっているうちにうっかり飲み込んでしまったりといったことが起きやすいので、特に注意が必要です。
犬種や年齢のほか、暑い季節よりも寒い季節、特に12月は他の月と比べて誤飲しやすい傾向にあるという報告もあるので、気をつけるようにしてくださいね。
もしかして、飲み込んじゃった?! 誤飲の症状
飼い主さんが見ていないときに誤飲してしまうこともあります。留守中に物をあさった形跡があったり、以下のようにわんこの様子がいつもと違うような場合には、誤飲を疑ってみてくださいね。
<誤飲の主な症状>
①よだれを垂らしてぐったりしている。
②食欲がない
③しきりにゲップや咳をする
④呼吸が苦しそう
⑤吐く、しきりに吐きたそうな様子を見せる
⑥震えている
もしも、飼い主さんの目の前で誤飲してしまった場合は、無理に吐かせたり、口の中に手を突っ込んで取ろうとするのはNG。水をたくさん飲ませたりすることも避けたほうがよいでしょう。
こんなものが危ない! 誤飲しやすいものランキング
部屋の中や身の回りをちょっとチェックしてみてください。
靴ひも、スマホなどの充電ケーブル、イヤホンのコード、パーカーのひも、ネックレス、手提げ袋の持ち手…。目につくところに実に多くの「ひも状のもの」があることに気づきませんか?
犬や猫が誤飲してしまうものの代表格ともいえるのが「ひも」なんです。ひも状のものやストッキング、靴下、タオルなどの布製品を誤飲してしまうと腸管に大きなダメージを与え、場合によっては腸管閉塞を起こして亡くなってしまうこともあります。
また、椅子やソファ、ラグなどの布製家具からほつれた糸は、わんこの興味の対象となります。石や果物の種なども腸管閉塞を起こすことがあるので注意してくださいね。
犬用ガムやトウモロコシの芯なども危険です。それらが食道につまってしまうと、嘔吐などの消化器症状を引き起こすだけでなく、場合によっては、気管を圧迫して呼吸困難を引き起こすこともあります。
他に、消化管を傷つける「尖ったもの(竹串や鳥の骨など)」や、口にすっぽりと収まってしまうサイズのボールや丸い形状のおもちゃにも注意してくださいね。ワイヤレスイヤホンも危ないですよ。
また、わんこが食べると中毒を起こすものもたくさんあるので、ぜひ知っておいてくださいね。
人用の医薬品やサプリメント、タバコが無造作に置かれていませんか?
人間の赤ちゃんと同じで、わんこも飼い主さんが口にするものはすべて食べ物であると勘違いすることがあるので注意が必要です。
チョコレートやネギ類(ネギを使った加工品やスープも含む)、発酵中のパンがわんこの手に届く場所にありませんか?
子どもがお菓子などを食べた手で触ったコインやアクセサリーなどがテーブルにのっていたりしませんか?
わんこにとって毒となる植物が家の中や庭にありませんか?
ポトス、アイビー、ポインセチア、アロエ、スイセン、スズラン、アジサイ、チューリップ、クリスマスローズ、ユリ、シクラメン、ハイビスカスなど、犬や猫にとっての危険性が確認されている植物が多くあります。家庭内では、安全性が確認されている植物だけを置くようにしましょう。
誤飲対策4ヶ条
誤飲は、「危ないものがある」→「危ないものに関心を持ってしまう」→「口にしてしまう」→「飲み込んでしまう」という4つのステップで事故に至ってしまうと考えられます。つまり、これらのうちのどれかを止めることができれば、誤飲による事故は防げるのです。そこで、「誤飲対策4ヶ条」です。
【第1条】無造作に置かない!
誤飲の危険性があるものは、できるだけわんこの手の届かない場所に収納するか、危ないものが多い場所には、わんこが立ち入れないようにする工夫をしましょう。
【第2条】関心を持たせない!
わんこがいろいろなものに関心を持つ背景には、犬が元々持っている能力や欲求(探す・くわえる・追いかけるなど)が満たされていない場合があります。散歩の回数や時間を増やしたり、スポーツなどで運動不足を解消することも有効です。かじりたい、くわえたいという欲求に対しては、飲み込めないサイズのものを与えるようにしましょう。
【第3条】口にしても騒がない!
誤飲で受診した飼い主さんからよく聞く言葉に「取り返そうとしたら飲み込んでしまった」が挙げられます。犬が口にしたものを奪おうとすることは、「奪い合いゲーム」として認識されてしまう可能性があります。わんこが危険なものを口にしたときは、慌てず騒がず冷静に対応しましょう。おやつとの交換もNG。危ないものを口にするとおやつがもらえると思われてしまいますからね。
【第4条】口から出させる!
日頃から「オフ(Off)」や「貸して(ちょうだい)」のトレーニングをしておくとよいでしょう。日常の遊びの中で、くわえたものを口から離すと「よいことがある」と認識させることが重要です。遊びを通して、口にくわえるよりも口から離すほうがよいことが起こるということを教えてくださいね。
まとめ
誤飲は、飼い主さんが注意することで、完全ではないかもしれませんが、ある程度防ぐことができます。普段から危険なものはわんこの手の届く場所に置かないようにしたり、遊びを通じて口からものを離す練習をしておくようにしてくださいね。
万一誤飲をしてしまった場合には、冷静に速やかに動物病院へ行くようにしましょう。
これは猫での話なのですが、飼い主さんの皮膚や枕カバーを舐めた猫がミノキシジル(発毛剤や育毛剤に用いられる薬品)によって中毒症状を起こしたという報告があり、死亡例もあります。もしかしたら、わんこもうっかりオトーサンの頭を舐めたりしないほうが無難なのかもしれませんね。
◎写真:大相模動物クリニック 小沼 守先生(治療写真)、ほりまさゆき(風の犬たち)
次回開催予定
★第15回 インターペット東京
◎会期:2026年4月2日(木)~5日(日)
[一般公開日]4月3日(金)~5日(日)
◎会場:東京ビッグサイト 東1、2、3、7、8ホール
★第4回 インターペット大阪
◎会期:2026年6月19日(金)~21日(日)
[一般公開日]6月20日(土)・21日(日)
◎会場:インテックス大阪
連載では、ペットの健康のことや人とペットの暮らしについての「正しい」情報を発信していきますので、”ウチの子” との幸せな暮らしのヒントにしてくださいね。
ペットフード協会のウェブサイトではペットに関する多くの情報を見ることができますので、ぜひのぞいてみてくださいね!

- 一般社団法人ペットフード協会 新資格検定制度実行委員会委員長
- 一般社団法人ペット栄養学会 理事
- 有限会社ハーモニー 代表取締役
- 日本獣医生命科学大学、帝京科学大学、ヤマザキ動物看護専門職短期大学非常勤講師