犬がトイレを失敗するようになった理由
犬と一緒に生活していると、トイレの場所を知っているにも関わらず、突然おしっこを失敗するようになることがあります。
「トイレトレーニングもきちんと終えているのになぜ?」と、不思議に思う飼い主さんもいることでしょう。また、外での散歩の時しかしなかったのに、急に室内でもトイレの失敗をするようになれば、不安や心配に駆られる飼い主さんも多いはずです。
トイレの失敗が続くのは、犬の気持ちの変化や病気などの原因が必ず潜んでいます。犬のおしっこの失敗には、どんな理由が隠れているのかを探ってみましょう。
トイレが近くなっている
トイレの失敗をしてしまう原因のひとつは、おしっこの量や回数の増加によるものです。
- 冬の寒さによる体の冷え
- ステロイドなどの投薬による副作用
- 食事内容の変化(ウェットフードや手作りご飯など)
気温の変化や、摂取するものによって一時的に飲水が増えたしまうことで、トイレの間隔が短くなって失敗してしまうことがあります。また、加齢や病気によって膀胱におしっこを溜めておける時間が短くなることで、慢性的にトイレに行きたくなるタイミングが増え、定められたトイレの場所に行く前にしてしまうわんちゃんもいます。
ストレスを感じている
長時間のお留守番や、飼い主さんとのコミュニケーション不足などによるストレスで構ってもらいたいばかりにわざと違う場所におしっこをすることもあります。
この場合は、トイレの失敗をした後に飼い主さんが発した騒ぎ声や、目を合わせて注意されたことを犬が覚えていて「別のところでおしっこをしたらまた構ってくれるかも」という意識が働き繰り返してしまうことが多いものです。
飼い主さんがそばにいない不安や恐怖が強い犬は、お留守番時の分離不安として現れます。「飼い主さんがもう戻ってこないのでは」という不安から、たとえ住み慣れたお家でも、あちこちに粗相をしたり、声が枯れるほど鳴いてしまうこともあります。
トイレ環境の変化で場所がわからなくなっている
引っ越しや部屋のリフォームなど生活環境の変化があった時には、同じ場所にトイレを設置したつもりでも、「いつものトイレ場所と違う」と感じ、どこにおしっこをすれば良かったのかわからなくなってしまうことがあります。
他にも、ペットホテルでの長期の預かりなど、一旦別の場所でのトイレ環境に慣れてしまうと、自宅に戻っても元々のトイレのルールを忘れてしまっているせいで、失敗につながってしまうことも少なくありません。
散歩の時間間隔が長すぎる
外でのトイレ習慣を持つ犬の場合、朝の散歩から夜に飼い主さんが帰宅するまでトイレに行けない時間が長くなると、限界を迎えた時点でおしっこをしてしまいます。 トイレの間隔が近くなっていたり、たまたま飲水量が多くなってしまった日など、わざと失敗しようとしているわけではないことがほとんどです。
子犬の場合、おしっこを我慢できる時間は月齢+1時間とされています。生後6ヶ月の成犬に近い体格に成長していたとしても、我慢できるのは約7時間が最長です。そのため、トイレは外でするものと思っていたとしても、飼い主さんが散歩に連れて行ってくれるまでに限界を迎えてしまう子が多い傾向にあります。
マーキング
成犬期になると、オスは「自分の縄張り」を周囲に知らせたいという本能の欲求が高まマーキングをします。犬にとって自分の縄張りを周囲に知らせるためにおしっこを情報源にします。
自分の生活範囲に匂いづけをしたい本能が勝ってしまうことで、覚えたはずのトイレのルールを忘れてしまうことはよくあることです。発情期を迎えたメスの場合も一時的におしっこの回数が増えることがあり、失敗につながってしまう子もいます。
何らかの病気を患っている
腎臓から尿道までの尿を作って排泄する泌尿器系に問題が生じると、おしっこを我慢することができなくなったり、排泄する時に痛みを伴い少しずつしか出せなくなることがあります。
また、全身の倦怠感や足腰の痛みがなどが原因でトイレまでの移動が大きな負担となってしまう時も、おしっこの失敗が続きやすくなります。このように、さまざまな病気の影響などによる排泄の異常がトイレの失敗として現れるのです。
体が老化している
老犬期になり脳の老化による影響で認知機能が低下すると、トイレの場所やルールを忘れてしまうことがあります。また、膀胱や尿道周りの筋肉が衰えることでおしっこを一度に出しきれずに頻尿になったり、咳やくしゃみなどのささいな刺激が原因で膀胱から漏れ出てしまうことがあります。
また、全身の筋肉量が落ちてくると痛みの有無に関わらず立ち上がるのが億劫になるため、トイレまで行けずに近くでおしっこをしてしまう場合もあります。
- トイレの失敗はおしっこの異常や犬の気持ちを飼い主さんが知るためのバロメーター
- 飼い主さんにとっては掃除の手間が増えるだけのトイレの失敗も、犬にとっては切実な感情や病気のサインを訴えていることも
- 原因が一時的なものなのか病気が関わる慢性的なものなのかをしっかり見極めよう
犬がトイレを失敗するようになったときに考えられる病気
おしっこの失敗が病気が隠れている場合は、犬の心のケアやトイレトレーニングのやり直しでは改善しません。
特に、おしっこの異常が現れる病気の中には、放っておくほど進行して重症化するものも少なくありません。犬の病気を早期発見してあげるために、おしっこの失敗が見られる可能性のある病気を知っておきましょう。
尿管・膀胱・尿道の病気
- 膀胱炎
- 尿路結石
- 膀胱腫瘍
- 膀胱アトニー
結石や腫瘍がおしっこの通り道や膀胱にできてしまうと、圧迫されて今までと同じ量のおしっこを溜められなくなったり、出口がなくなって排尿ができなくなってしまうと命に関わることもあります。また、粘膜が傷ついて炎症を引き起こすため、頻尿をはじめ、痛みや不快感、出血なども伴います。
下半身の麻痺などで排尿の指示がうまく伝わらない時には、膀胱におしっこが溜まりすぎた状態が続くことで膀胱の筋肉がうまく収縮できなくなる膀胱アトニーという状態になることも。この場合は自分で排尿をコントロールできず、膨らんだ膀胱に収まりきらない分が尿漏れとして出てきてしまいます。
腎臓の病気
体のろ過機能としての役割をもち、水分量を調節している腎臓は、ダメージを受けると尿量が極端に増えたり減ったりします。老犬に多い慢性腎臓病は、腎臓の機能が75%まで低下しないと症状が現れないことも多い病気。体に留めておくべき水分までおしっことして出て行ってしまうため、尿量が増える傾向にあります。
発見が遅れてたり治療が遅くなってしまうと、腎不全を起こしてしまいおしっこ自体を作る機能が失われ、体の中に老廃物が溜まる続けて尿毒症を引き起こしてしまうこともあります。
生殖器の病気
- 前立腺肥大
- 前立腺炎
- 子宮蓄膿症
去勢手術を行っていないオスに多い前立腺肥大は、加齢ととも発症することが多く、尿の通り道である尿道を大きくなった前立腺が圧迫してしまうことから、頻尿がみれられるようになります。
また、膀胱に侵入した細菌が前立腺に入ってしまうと前立腺炎を起こしてしまい、おしっこをしぶる様子や発熱、痛みが伴うこともあります。どちらも去勢手術を行うことが根本的な治療法となる病気です。
避妊手術をしていない出産経験のないメスに多いのは、子宮が細菌感染することにより膿が溜まる子宮蓄膿症です。主な症状に多飲多尿がみられます。中高齢期の未避妊のメスがぐったりして元気がない場合は、この病気を疑うことも多いでしょう。
内分泌の病気
- 糖尿病
- 副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)
血糖値を下げる役割を持つインスリンがうまく出なかったり体内で働かなくなる糖尿病や、コルチゾールというホルモンが過剰に分泌されてしまう副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)も、水をたくさん飲んでその分おしっこの量も増える多飲多尿の症状が現れます。
コルチゾールはインスリンを抑える役割も持つため、副腎皮質機能亢進症になると糖尿病にもなりやすく、2つの病気が併発することもあります。他にも、コルチゾールの分泌が過剰になると免疫機能も抑えられてしまうため、細菌感染による膀胱炎からおしっこを頻繁にしてしまい、飼い主さんからトイレを失敗したと受け取られてしまうことも少なくありません。
脳の病気
老犬期に発症する認知機能不全症候群(認知症)が進行すると、トイレトレーニングをすっかり忘れてしまうといった症状がよく現れます。認知症は進行性の病気で明確な治療法がなく、できるだけ進行を遅らせることしかできません。
トイレの場所がわからないだけでなく、「おしっこがしたい」と思って立ち上がったはずなのに、その瞬間に自分が何をしようとしたのか忘れてしまい、トイレの失敗につながることもあります。
- おしっこの異常を知らせる病気の中には命の危険を伴うものも多い
- おしっこの異常はおしっこが作られる腎臓など泌尿器系以外の病気の可能性もある
- 進行性で治らない病気もあるため、早期発見、早期治療が大切
犬がトイレを失敗するようになったときの対処法
犬が急におしっこの失敗を繰り返すようになった時には、まずはかかりつけの動物病院で病気の可能性がないかどうかを調べてみましょう。
健康状態に問題ないようであれば、犬のトイレの失敗原因に合わせて飼い主さんができる対処方法を探してあげることをおすすめします。ちょっとした工夫や気遣いで犬にとって快適なトイレ環境を作ることで失敗を減らせる可能性もありますよ。
おしっこの量と頻度をチェックする
犬がおしっこをトイレ以外の場所でしてしまった時には、
- 1回にどれくらいの量をするのか
- 失敗する頻度はどれくらいか
- どんなタイミングで失敗しているか
- 失敗することが増えていないか
などをチェックしておきましょう。
少量ずつ頻繁にあちこちにしてしまう時にはマーキングの可能性や、飼い主さんのいない間にだけ失敗するのであれば、分離不安や散歩間隔が長すぎるといった原因も考えられます。
トイレの失敗が起こる状況を整理することが、原因を突き止めるための大切なポイントとなるため、繰り返し失敗する時にはその都度記録しておきましょう。
トイレのスペースを広げる
老犬期で足腰が弱り、排尿姿勢がうまく取れずに失敗してしまうようであれば、トイレのスペースを広く取ってあげるとはみ出すことが減ります。
キレイ好きで汚れた場所には繰り返しおしっこをしたくないというわんちゃんの場合は、お留守番中も数か所にトイレを設置するといいでしょう。
ペファミ トイレマット04 ワイド
段差を乗り越えられなくなった高齢犬のトイレスペースを広げる場合は、シリコン製のトイレマットをつなげてあげるのがおすすめ。
こちらの商品はペットシーツの端が立つように挟みこめるようになっていて、おしっこ後の漏れを防ぐ仕組みがあるのも嬉しいポイント。万が一ペットシーツから漏れても水洗いできてお手入れが簡単で、お出かけ先にも気軽に持ち運ぶことができる軽量設計です。
ペットシーツを噛みちぎってしまういたずら癖があるわんちゃんには不向きのため、誤食に注意してくださいね。
トイレのスペースを区切って分かりやすくする
トイレのスペースがどこからどこまでなのかよくわかっていないわんちゃんには、トイレコーナーに仕切りを作ったり、トイレと床の境目がわかりやすいものを選びましょう。
おしっこのタイミングでくるくると回る行動をすると、いつのまにか体がはみ出してしまうことも多いものです。また、トイレトレーニングを行う時にも、トイレの場所がどこなのか犬にも伝わりやすいですよ。
リッチェル しつけ用 ステップ壁付きトイレ ワイド
プラスチック製のトイレケースが3面壁付きになっています。ペットシーツをいたずらされないようにメッシュも付属しているため、トイレの場所を足裏に伝わる感触からも認識しやすくなっています。メッシュ部分は不要であれば取り外した状態のまま使用することもできるので、犬のトイレ事情に合わせることが可能です。
出入口が長辺の関係上、胴長の犬種では「体がうまく収まりきらずにおしっこができなかった」という口コミもあるため、ダックスフンドなどを飼育している飼い主さんは注意してくださいね。
室内トイレのトレーニングをする
外でしかトイレができない犬の場合、加齢とともにトイレの我慢ができなくなってくると、間に合わずに室内で漏らしてしまうことも少なくありません。トイレの場所にこだわりを強く持つ犬なら、室内でのトイレを失敗だと認識し、落ち込んでしまうこともあります。
無理に我慢しようとすると、泌尿器のトラブルが増えて体調を崩してしまいます。また、後ろ足の筋肉が衰えたり病気により麻痺が現れた時に、何が何でも外でトイレをしたいというわんちゃんの排泄の介助は、飼い主さんの大きな負担となりがちです。
室内でトイレをすることも正しいことだと教えてあげるためにも、犬が高齢化する前にできるだけ早く室内でトイレをさせることを習慣づけていきましょう。
トイレを失敗した場所は丁寧に拭き取る
犬は、自分の排泄物の臭いがついた場所はトイレだと認識する傾向があります。そのため、間違っておしっこをしてしまった場所の掃除は念入な拭き掃除と消臭効果のあるスプレー等を利用してしっかりと臭をとりましょう。
掃除以外にも、嫌いな匂いがするなど気に入らないトイレ環境であれば、そこでおしっこをしたいと思わないこともあります。そのため、トイレ以外でおしっこを繰り返してしまう場所があれば、あえて犬にとって不快な匂い・環境の場所へと変えてみるのもひとつの方法です。
飼い主さんの中には、本来のトイレ付近に家族が香水を使ったことでトイレ以外の場所でおしっこをするようになったという失敗談もあるため、それを逆手にとってみるのもいいかもしれません。
バイオウィルクリア スプレー 1L
飼い主さんの様子をよく観察している子が粗相を繰り返す傾向があるため、たとえ目の前でおしっこを失敗しても、犬とは目を合わせず淡々と静かに片づけましょう。
また、分離不安や老化による筋力低下や認知症などが原因の場合は、トイレの失敗を叱られてもなぜ飼い主さんが怒っているのかが理解できず、ただのストレスになってしまうことも。おしっこをすること自体がいけないことだと認識してしまうと、飼い主さんに見えないところで隠れてするようになることも多いため、
- 成功したら褒める
- 失敗しても無言で淡々と手早く片付ける
を常に意識して行動しましょう。
散歩に行く回数を増やす
室内でトイレトレーニング中だったり、どうしても外でのトイレ習慣を変えられない場合は、短時間でも散歩に行く回数を増やしてトイレの機会を作ってあげましょう。
仕事などで朝から夕方までの間に増やすことが難しくても、夜眠る前に5分でも連れ出してあげることができれば、夜間に溜まるおしっこの量をコントロールしやすくなります。人が1日にトイレに行く回数を考えてみると、トイレが近くなる冬や老犬では、1日2回のトイレタイムでは足りないかも…と犬に寄り添って考えてあげることが必要です。
- トイレの失敗がなぜ起こるのか原因を探るには、普段失敗している状況を整理してパターンを知ってみよう
- トイレの場所を外だけに限定すると後々のトイレの失敗や体への負担、飼い主さんの介護のお困りごとにつながることがある
- トイレの失敗を叱ると、犬のご褒美やストレスになるだけ。静かに淡々と片付けよう
▼「トイレのしつけの基本」を知りたい方はこちら
犬のトイレの失敗を放置しない!
おしっこの失敗は、犬の体や心の変化などの理由がありどれも飼い主さんが理解してあげたいものです。
失敗が治らないから掃除を頑張るというだけでは、間違った場所におしっこをする回数が増えるだけだったり、病気を原因とする場合は後々の治療に影響を及ぼす危険もあります。
急にトイレを失敗し始めた時には、犬が飼い主さんに理解してもらいたい何かがあるのだと理解して原因を調べて適切な対応をしてあげてくださいね。