犬にフローリングの床が良くない理由
犬の足腰にとってフローリングがよくないということを、多くの飼い主さんが知っていることでしょう。
- 転倒の危険性
- 関節への負担
- 衛生面の問題
犬の体重や年齢、運動量や病気の有無によってリスクは変わりますが、愛犬と安心して生活するためにはフローリング対策は欠かせません。
滑る危険性が高く犬が怪我をしやすい
フローリングは、犬にとって決して生活しやすい環境ではありません。犬の足はスパイクシューズのように土に爪をひっかけて歩くようにできているからです。
硬くて滑りやすいフローリングの床には爪は食い込みません。犬はツルツル滑る床に転ばないよう、常に四肢を踏ん張って歩いています。
人間に例えたら、氷上をスニーカーで歩いているようなもの。滑りやすく転んで怪我をするリスクもあります。
犬の足腰への負担が大きく骨関節疾患や老化が進行する
フローリングの床は犬の足腰への負担が大きいため、関節疾患のある犬や足腰の弱くなった老は、特に歩行を嫌がるようになります。
硬いフローリング材は衝撃を吸収しにくいため、歩行による衝撃が膝や股関節、背骨に強く伝わって足腰に負担をかけてしまうからです。
<フローリングで悪化しやすい疾患>
✔膝蓋骨脱臼
犬の後ろ足の膝が外れてしまう病気です。「パテラ」とも呼ばれ、かかりやすいのは小型犬や超小型犬など。チワワやポメラニアンなどの人気犬種にもよく発症します。
歩行で足に余計な力が入るため膝関節がずれやすくなり、病気の進行が早まったり、症状を悪化させるためフローリングでの生活は避けるよう推奨されています。
✔股関節形成不全
生まれつき股関節が緩く、十分に犬の大腿骨骨頭を覆うことができないためさまざまな症状が出る疾患です。
膝蓋骨脱臼と同じく、強い衝撃により症状が悪化するため体重管理や滑らない環境整備が重要になります。ラブラドールなどの大型犬や超大型犬は特に注意が必要です。
✔椎間板ヘルニア
生まれつきの背骨の変形や、強い衝撃によって背中の骨を繋ぐ軟骨(椎間板)が潰れて組織の一部が飛び出し、神経症状や麻痺を引き起こす疾患。
重度になると下肢麻痺状態を引き起こし、排泄コントロールもできなくなってしまいます。硬い床での歩行やジャンプなど、足腰に衝撃がかかることで悪化する可能性も。
フローリングの床で生活の質が下がるのは、骨格異常のある犬だけではありません。筋力の衰えた老犬は転ばないように足に力を入れるのが難しく、フローリングの床を怖がって歩かなくなります。
- すぐそばにある水飲み場まで歩くのを嫌がって飲水量が減少する
- 排泄場所までたどり着けず粗相が増える
- 足に力が入らず転んで骨折などの怪我を負う
このようなことが原因で老犬の生活の質が落ち、老化が急激に進んでしまう可能性もあります。
犬の尿やよだれでフローリングが傷むと衛生面が悪化する
フローリングでペットと生活することで、衛生面でも問題が発生します。犬が走り回ったり、穴を掘るように床を掻きむしったりすると、フローリングは簡単に傷んでしまうものです。
傷んだフローリングに犬の尿やよだれが染み込むと傷んだ部分が腐り、不衛生になってしまいます。このように、フローリングの上で犬と生活することは、愛犬のためにも飼い主のためにも決してよい環境とはいえません。
多くの方は、既にフローリングが愛犬の足腰に悪いということを知っているでしょう。そのうえで、愛犬にとって最もよい方法はないかと考えているはずです。
次章では、愛犬のためにできるフローリング対策方法について、デメリットも含めて解説します。
犬のためにできるフローリングの滑り止め対策
愛犬の生活の質を上げるためには、以下のような対策が考えられます。
- フローリングの上に滑らない素材のマットなどを敷く
- フローリングにワックスなどの加工を施す
- 愛犬の足に滑らない工夫をする
ここからは、それぞれのメリット・デメリットについて確認していきましょう。
マットや滑り止めシートなどをフローリングの上に敷く
フローリングの上にマットや滑り止めシートを敷くのは、もっとも一般的な方法です。すぐにでも対策したい方や、賃貸物件で床材の取り換えが難しい方でも簡単に設置できます。
材質も価格もさまざまですが、大型犬は耐久性に優れたものを選ぶようにしましょう。足腰の弱い老犬には、滑りにくいうえに柔らかい素材をおすすめします。
ただし、安価なものは傷みやすく頻繁な交換が必要になるというデメリットも。また、ジョイントマットは隙間からゴミや抜け毛がたまるため、清潔に保つには定期的に外して掃除する手間があります。
犬用の滑り止めワックスをフローリングに塗る
フローリングの上に滑り止めワックスを塗る方法は、床の雰囲気を壊したくない場合や、こまめに張り替えたり掃除したりするのが面倒という方におすすめです。
業者に頼まなくても自分で塗ることができますし、部屋の外観を大きく損なうこともありませんが、賃貸物件に住んでいる方はワックスがけをしても問題ないか管理会社に確認してからにしましょう。
ただし、ある程度経つと効果が薄れてくるため定期的に塗りなおす必要があります。また、商品によって滑り止めの程度に差があるため、大型犬や老犬にはもう一工夫必要かもしれません。
犬が滑りにくい床材に張替え・リフォームする
犬が滑りにくい専用の床材への張替えやリフォームする方法は、ある程度お金をかけてでも、愛犬のためにしっかりと対策をしたいという方におすすめです。
マットやワックスよりも耐久性があり、高い効果が長く持続するのが特徴。今ではLIXILやサンゲツなどの大手から、ペット住宅専門の工務店までさまざまな業者が床材の研究・開発をしているので種類も豊富にあります。
ただし、業者に張り替えてもらう必要があり、価格もフローリング対策としては一番高額です。床全体の張替が必要になるため、賃貸物件は不可です。
犬の爪や足裏の毛のお手入れで滑りにくくする
床だけでなく、犬の足に一工夫することで滑り止め効果をアップすることができます。愛犬の爪を短く保ち、足裏の毛を切って肉球を露出させ、滑りにくい状態をキープしましょう。
ただし、足裏を滑りにくいようにお手入れするだけでは対策として不十分です。あくまでも滑らない対策を床に施したうえでプラスアルファの対策と考えましょう。
犬用の滑り止め靴下やシューズをはかせる
犬の足を滑りにくい状態に保つ対策として、滑り止め靴下やシューズをはかせる方法もあります。この方法は、愛犬がフローリングで過ごす時間が比較的少ない方にはおすすめです。
ただし、犬は肉球から汗をかくため、履かせっぱなしにすることで蒸れて皮膚炎になることも。そのため、時間を決めて履かせるなどの工夫が必要です。
また、犬によっては神経の集まる足先を覆われることを嫌がります。愛犬がストレスに感じるようなら別の方法を検討しましょう。フローリング問題を根本的に解決するには、犬の足ではなく床に対策を施すことを考えましょう。
犬のフローリング用滑り止めグッズの選び方
ここまで、フローリングで愛犬が滑らないための対策方法を解説してきました。では、実際にどのような素材のものが自分の愛犬には適しているのでしょうか。
滑り止めグッズを選ぶ際は、滑り止め効果だけでなく掃除のしやすさや設置の手間、防音、消臭などのプラスアルファの機能にも注目しましょう。
滑りにくく柔らかい素材でペット用に作られたもの
滑り止めグッズは、滑りにくく柔らかいペット用のものを選びましょう。ペット用に作られているものは、防音に優れており、走り回ってもずれにくい加工がされています。
また、消臭・抗菌・舐めても安心な素材でできているなど、ペットならではの事情にも配慮されたプラスアルファの機能も期待できます。
掃除がしやすいもの、丸洗いできるものが便利
掃除のしやすさも重要なポイントです。できれば丸洗いできるものが便利でしょう。
「うちの子はトイレのしつけができているから大丈夫」というわけではありません。犬はとても嘔吐しやすい動物なので、犬と暮らしている限り拭き掃除からは逃れられません。
床を清潔に保つためにも普段から掃除しやすく、洗いやすいものを選びましょう。
汚れにくく傷つきにくいものを選ぶ
汚れにくく傷つきにくい素材であるかも重要なポイントです。特に大型犬や多頭飼い家庭では、犬の体重や運動量に耐えうる耐久性に優れた素材を選ぶといいでしょう。
ヨガマットのような素材は柔らかく足腰の負担は軽減されますが、消耗が早いのがデメリット。活動量の多い犬や体重の重い犬のためには、耐久性のあるものを選びましょう。
設置しやすく交換しやすいものを選ぶ
床材自体をリフォームで変えてしまう方法以外は、どの商品も基本的に消耗品です。マットやカーペットは交換が必要ですし、ワックスは塗り替えなければなりません。
素材や犬の活動量によっては、数か月で交換することも視野に入れ、交換しやすいものを選ぶようにしましょう。
価格は犬の寿命の長さを考えて比較する
安い素材は手軽ですが、愛犬の一生を考えると長い目で見て決して安価とはいえません。
フロアコーティングや床材のリフォームの中には、値段は高くても愛犬の一生涯効果が続くものもあります。その時の価格だけでなく、犬の一生にかかる価格を考えるようにしましょう。
犬のフローリング用滑り止めグッズおすすめ5選
愛犬家の間でたびたび話題になるフローリング滑り止め対策グッズ。ほかの飼い主さんからすすめられたものでも、
「ジョイントマットはすぐに汚れてしまいそう」
「うちは賃貸だから滑り止めワックスは無理」
「確かに滑りにくいけど、硬くて老犬のうちの子には合わない」
このような理由から、ピッタリ合うものに出会えていない方は多いでしょう。
この章では、実際に愛犬の足腰に配慮する飼い主に選ばれている滑り止めグッズ5つをご紹介します。いずれも飼い主の評価が高いものばかりです。
ただし、愛犬の体重や運動量、年齢によって合うもの、合わないものがありますので、実際の口コミを参考にデメリットも含めてお伝えしますので、参考にしてみてください。
Dogzariドッグザリ
おしゃれでインテリアにも配慮した、楽天人気No.1のペット用マット。柔らかいクッション素材で、関節炎予防から老犬の弱った足腰の保護まで、オールマイティに使えます。
〈おすすめポイント〉
犬との生活に特化して作られており、専門機関で安全性を実証済みの商品です。
表面の特殊コーティングで傷にも強く滑り止め効果も万全。床暖房にも対応しているので犬だけでなく人間も快適に過ごすことができます。
マットの表面は耐久性に優れ滑り止めと防水効果のある素材、二層目は柔らかな弾力性のあるクッション、三層目はぴったりと床に密着する、フラットフィルムの三層構造。大型犬や老犬の足腰もしっかり保護できる理由は、この構造にあります。
〈商品の特徴〉
この商品はとにかく高級感があるのが特徴。他にはないタイル模様で、敷くだけで大理石のようなラグジュアリー空間を演出してくれます。インテリアにこだわる飼い主さんにも満足できる仕上がりになるでしょう。
高級感があるしっかりした作りの反面、値段が高いという口コミも多くみられました。サイズは220cm×110cmで、繋げて自由自在に拡張して使用できます。
マルチマットMUNYU
人間工学に基づいて開発された特許構造で、弾力性と耐久性に優れたマルチマットです。大型犬や足腰の弱い老犬にも安心して使用できます。
高品質なドッグフードやグッズ販売で有名な「帝塚山ハウンドカム」で受注生産しています。
〈おすすめポイント〉
肉厚のマットで衝撃を吸収し関節を守ってくれるので、大型犬や老犬、活動量の多い犬の飼い主さんにピッタリです。簡単に切れるので好きな場所に好きな量だけ敷くことができます。
〈商品の特徴〉
弾力性と耐久性に優れているのが大きな特徴。アメリカのルドロー社で人間工学に基づいて開発され、滑りにくさと衝撃吸収には定評があります。
サイト内の写真を見ると、指で押したマットが非常に深く沈み込んでおり、柔らかく弾力性があることがわかります。また、表面を拡大した写真から表面に凹凸のある加工が施されているのも特徴。
この柔らかさと表面加工により衝撃吸収と弾力性が実現されているため、大型犬や運動量の多い多頭飼い家庭でも安心して使えます。
ただし、粗相をすると染み込みやすいという口コミも。粗相の多い子犬や老犬のいるお宅は別のタイプを検討してもいいでしょう。
リンレイ スリップ軽減ワックス
業務用・家庭用の樹脂ワックスなどを中心に、自社で製品開発しているワックスメーカーのリンレイがペット用に開発した滑り止めワックス。特に小型犬のヘルニアや関節炎予防に最適です。
〈おすすめポイント〉
ペットの滑り止めのために開発され、抜群の滑りにくさを実現。柔らか樹脂加工で足腰に優しく、乾いた後は愛犬が舐めても安心。引っ掻き傷にも強く美しい艶が続きます。
無垢材やタイルなど一部塗布できない床材がありますので、ご家庭の床が商品に対応した床材かをチェックしてから購入しましょう。
〈商品の特徴〉
ワックスブランドシェアNo.1メーカーにより開発されたワックスで、とにかく他のワックスと比較して滑り止め効果が高いのが特徴です。
柔らかい樹脂から設計されているため滑り止め効果が長く続き、自社従来品の1.5倍以上の耐久性を備えています。
ただし、ワックスはどうしても塗りなおしが必要。耐久性があるといっても、6ヵ月程度を目安に塗布することが必要です。使用方法によっては2ヵ月程度で塗りなおしが必要という口コミも。
体重の重い大型犬や足腰が極端に弱った老犬には、柔らかいマットタイプや滑り止め効果の高いカーペットタイプがベターでしょう。
おくだけ吸着 ペットマット 消臭保護マット
特別な設置不要、置くだけでずれないペット用の吸水マットです。若くてとにかく家じゅうを走り回る元気な愛犬のケガ予防におすすめです。
〈おすすめポイント〉
置くだけで簡単に設置できるため、賃貸物件でも使えるペット用のマットレス。マットの裏側に特殊な加工がされており、犬が走り回ってもずれません。
このマットは、とにかくお手入れが簡単だということ。表面に撥水加工がされているので、粗相をしてしまっても簡単に拭き取れるだけでなく、洗濯機で繰り返し洗濯して使えるのがポイント。
ただし、カーペットをかじる癖のある犬だと端を噛んではがしてしまうこともあるため注意が必要です。また、老犬のためにはもう少しクッション性のある素材がいいという声も。
〈商品の特徴〉
60㎝×120㎝のペットマットで置くだけで簡単に設置が可能です。ハサミで簡単にカットしたり、何枚も繋ぎ合わせたりするなど用途や広さに合わせて使えます。
床暖房にも対応しているので、特に冬は犬だけでなく人間にも快適な空間となるでしょう。
貼ってはがせるフロアマット
裏のフィルムをはがして床に貼り付けるだけの簡単接着クッションフロアマット。微粘着でフローリングを傷つけたくない賃貸マンションにもおすすめ。
簡単に貼れてずれにくいので、小型犬から大型犬、多頭飼いで運動量の多い犬にも対応できるでしょう。
〈おすすめポイント〉
この商品の特長は、簡単に貼れて床を傷つけないことです。
粘着力のあるフロアマットははがすとき床を傷つけてしまうことがあり、賃貸物件には難しいですが、このフロアマットは微粘着で好きなところに貼って簡単にはがすこともできるので、賃貸の床を傷つけることが少なく気兼ねなく貼り付けることも可能。
ペット用に作られているので、消臭効果もあり掃除も簡単。全4種類の柄から部屋の雰囲気や好みに合わせて使えます。ただし、床の材質によってははがれやすかったり、はがすときに粘着力が強くて床がはがれてしまうという口コミも。
〈商品の特徴〉
表面に凹凸があることからペットが歩きやすく、厚さが3mmあるクッションフロアで足腰の弱った老犬にも優しい作りになっています。好きなところに貼ってはがせるタイプなので、賃貸物件でも安心して使えます。
▼「床・フローリング用品」の基本を知りたい方はこちら
まとめ
フローリングの滑り止め対策は、愛犬の体重や年齢、運動量に合わせて選びましょう。もちろん、住居が賃貸か持ち家かによっても対策方法は変わってきます。
- 室内での運動量が多い多頭飼いには広範囲をカバーできる滑りにくい素材
- 足腰の弱った老犬には滑り止め効果が高く弾力性のある素材
- 大型犬には滑りにくく丈夫な素材
- 家全面を覆う場合はワックスや床材のリフォーム
フローリングの滑り止め対策は、そのときの値段だけではなく丈夫さや交換頻度、掃除のしやすさも考慮し、バランスの良いものを選びましょう。フローリングの改善は、愛犬と飼い主の生活の質を改善してくれるでしょう。