愛犬にやさしい床材を選ぼう!
犬にやさしい床材とは、滑らない、段差や凹凸がない、硬くない、冷たすぎない、衝撃を吸収してくれるなど、犬の肉球や足腰に負担がかからないものです。もちろん、清潔面の考慮も必要となるため、お手入れが簡単ということも重要ですね。
みなさんが現在お住まいの家では、どんな床材を使用しているでしょうか?これから家を建てるならまだしも、住んでいる家の床材をまるごと取り替えることは現実的ではありませんが、ちょっとした工夫で愛犬にやさしい床材にしてあげることは可能です。
廊下や階段、愛犬がよくいる場所などの一部分だけ床材を替えてあげるだけでも、犬の足腰にかかる負担は軽減されます。ここでは、「犬と一緒に暮らす」という観点から、それぞれの床材について見てきましょう。
フローリング
現在、多くの家庭の床材はフローリングではないでしょうか。日本の家の7割強のリビングには、床材にフローリングが使用されているのだとか。フローリングは傷に強く掃除がしやすいというメリットがあり、ワックスをかければピカピカと光沢が出て、室内がきれいに見えますね。
しかし、フローリングはとても滑りやすいため、犬の関節トラブルを招きやすい床材です。股関節や肘関節に負担がかかったり、膝蓋骨脱臼(パテラ)の原因となることも。
勢いよく走ってきた愛犬が、止まることができずに壁や家具に激突してケガをする、なんて事故も実際に起きているため、注意が必要です。
また、フローリングは木材なので、愛犬のおしっこが染み込んで床材を腐らせてしまったり、隙間におしっこが入り込んでしまうと臭いの原因ともなります。フローリングの張り替えをするのは大変な作業で、費用も高額といったデメリットがあります。
畳
和室が畳なのは一般的ですが、最近は琉球畳などデザイン性のあるものも多く、洋室の一部に畳を床材として取り入れる家庭も増えています。畳はクッション性に優れているというメリットがあるほか、畳独特の匂いに癒される方も多いでしょう。
最近では防水加工やペット用に加工された畳もあり、そういった畳であればお手入れも簡単ですが、通常の畳は水分に弱く基本は乾拭きです。愛犬が粗相をしてしまったときの掃除が難しく、場合によっては変色したりカビが生えてしまうことも。
畳はイグサから作られているため、定期的に畳干しや交換も必要です。畳の表面のタタミ目に入り込んでいるダニの発生や、死骸やフンによるアレルギーにも注意しなければいけません。
カーペット・絨毯・ラグ
フローリングなどの床材の上に、カーペットや絨毯、ラグを敷いている家庭もありますね。お部屋のインテリアとしても活躍するカーペットですが、犬にとってもカーペットは滑りにくく歩きやすいというメリットがあります。
室内の床材が元からカーペットといった家では、清掃業者にお願いして定期的にカーペットクリーニングを行わなければいけませんが、丸洗いできるカーペットや絨毯、ラグを使用すれば、気になったときにいつでも洗うことができます。
しかし、大きなサイズのものでは自宅の洗濯がむずかしかったり、犬の臭いが染みつきやすい、粗相したときに染み込んでしまう、ダニが発生しやすいといったデメリットがあります。また、畳の上にカーペットを敷くのは、カビやダニの大量発生に繋がるためおすすめできません。
クッションフロア
賃貸物件などでは、クッションフロアの床材を使用していることも多いです。クッション性のある塩化ビニールの素材なので、犬が滑りにくいだけでなく、足腰への衝撃や負担が軽減されたり、お手入れが簡単というメリットがあります。
様々なデザインのクッションフロアのシートがあり、簡単に施行できるためDIY初心者にも人気の床材です。しかし、ビニール素材なので湿度が高いとペタッとしたり、重い家具などを置くと跡が残りやすいというデメリットがあります。
タイルカーペット
タイルカーペットは企業などで使用されることが多かった床材ですが、近年では家庭でも使用されることが多くなってきました。
自宅の床材の上に敷くことができるタイル状のカーペットマットなので、好きな場所に敷くことができたり、汚れた部分だけ外して洗濯・交換することができるというメリットがあります。
犬が滑りにくくなることはもちろん、ペット向けのタイルカーペットもあり便利ではありますが、見栄えを気にすると全面を敷き詰めることとなり、枚数が増えれば必然的にお金もかかるというデメリットもあります。
また、何度も張ったり剥がしたりすれば、吸着が悪くなって剥がれやすくなり、愛犬がつまづいてしまう可能性もあるため、注意が必要です。
コルクマット
コルクマットもタイルカーペット同様に、自宅の床材の上に敷くだけの簡単床材です。コルクマットのメリットは、犬にとって滑りにくいだけでなく、歩きやすさも兼ね揃えています。衝撃吸収性が高いため、犬の関節や足腰にもやさしい床材です。
しかし、コルクマットは犬のおしっこが染み込みやすく、粗相してしまったときの掃除は大変です。日焼けをして色が変わってしまったり、反ってしまうといった劣化しやすいデメリットがあります。イタズラしてコルクを食べてしまう犬もいるため、注意してくださいね。
コンクリート・レンガ・大理石
最近では、スタイリッシュなイメージで室内の床をコンクリートにしたり、海外の雰囲気を味わえるお洒落なレンガにしたり、豪華に一面大理石といった床材を使用した家もありますね。
コンクリートや大理石の床材は、夏場は涼しく過ごしやすいですが、水分や油分を染み込みやすくシミになりやすいです。
硬すぎる床材となるため、犬の足腰への負担が大きいことも問題です。特に大理石は滑りやすいため、床材に一面大理石を使用することはおすすめできません。レンガは滑りにくいですが、凸凹が多くて逆に爪を引っかけやすいというデメリットがあります。
犬の足腰に負担が掛かることで生じるトラブル
日本で飼われている犬の約8割が、程度は違えど足腰に何らかの問題を抱えているということをご存知ですか?そして、驚くべきことにその原因の多くは床材にあり、世界中で見ても床材によって犬の足腰に負担がかかっているのは日本だけとも言われています。
今まで、床材にはそこまで気にしていなかった飼い主さんも少なくないでしょう。しかし、たかが床材、されど床材なのです。犬の足腰に負担がかかることで、生じる可能性のあるトラブルや病気をぜひ知っておいてください。
膝蓋骨脱臼
パテラとも呼ばれることがる「膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)」は、小型犬に多くみられる膝関節の病気です。犬の後ろ足の膝のお皿が、正常な位置からずれてしまうことで発症します。片足でケンケンする、びっこを引いて歩く、足を引きずる、ヨロヨロ歩くといった症状がみられます。
無症状な軽度のものから重度の跛行(はこう)まで様々で、場合によっては外科手術が行われることも。膝蓋骨脱臼は先天性と後天性があり、ほとんどの犬は後天性で、2本足で立ち上がってジャンプしたり、ソファーなどから飛び降りる、フローリングなどの滑る床材で足腰に負荷がかかるといった、膝に過度の負担がかかることが原因です。
関節炎
犬の関節炎は「変形性関節症」とも呼ばれ、飼い主さんが気づきにくい病気の1つです。関節にある軟骨が早くすり減ってしまい、修復が追いつかないことで関節が変形し、関節組織に炎症が起こることで動作時に痛みを生じます。
遺伝や外傷が原因のこともありますが、多くは骨格の歪みや肥満による間接への負担、毎日の生活で繰り返し関節に負荷がかかるといったことが原因となります。
初期では、動作がゆっくりになる、活発性が低下する、跛行(不自然な歩き方)といった症状がみられます。
完治する病気ではなく、進行性の病気ではありますが、早期に治療を始めることで痛みの緩和だけでなく、動作能力が回復する可能性があります。
椎間板ヘルニア
椎間板ヘルニアは、背骨をつなぐゼリー状の組織が、何らかの原因で本来ある場所から飛び出し、神経と脊髄を圧迫する病気です。椎間板ヘルニアは、背骨の通る首から腰のどこで発症するかによって症状は様々ですが、痛みやしびれを伴い、力が入りにくくなります。
椎間板ヘルニアによって、足に麻痺が起こって歩行困難になったり、排泄のコントロールができなくなるといったことも珍しいことではありません。
ミニュチュアダックスフンドやコーギーなどの胴長・短足の犬が特に発症しやすいですが、どんな犬種でも発症リスクはあります。
遺伝的なものであったり、椎間板へ慢性的な負荷がかかることにより発症しますが、滑る床材や二本足で立ち上がること、肥満なども要因となっています。
突然症状が表れることもあれば、ゆっくり進行していることもあり、早期発見、早期治療が重要となる注意すべき疾患です。
骨関節炎
犬の骨関節炎は、関節の軟骨がすり減ったり変形することで、慢性的な痛みが出る病気です。1度発症してしまうと完治することはなく、痛みの緩和と進行を遅らせる治療をしながら、一生付き合っていかなければいけません。
関節に重圧がかかりやすい中型~大型犬に多くみられる病気ではありますが、小型犬でも発症することはあります。歩くのが遅くなる、起き上がりがゆっくり、階段を嫌がる、散歩中に座り込む、関節部分を舐める、といった症状がみられます。
股関節形成不全
遺伝的要因によって発症することが多い股関節形成不全ですが、肥満や激しい運動など環境的要因でも発症する病気です。関節に緩みが生じている状態ですが、進行すれば関節炎となり痛みを伴います。
腰がヨロヨロする、散歩中に座り込む、うさぎ飛びのようになる、座り方がおかしいといった症状がみられます。
大型犬に多く発症しやすい病気で、内科治療と外科治療の2つの選択肢があります。フローリングなどの滑る床材は禁止とされ、滑り止めの対策が必要です。
レッグ・カルベ・ペルテス病
血流に障害が起こることで、犬の大腿骨の付け根が壊死してしまう病気です。小型犬の成長期(生後5~11ヵ月頃)に多くみられ、原因ははっきりわからない病気ではありますが、犬の関節の負担が関係しているのではないかとされています。
おしりや太ももを触られることを嫌がったり、後ろ足を上げたまま立つ、びっこを引いて歩く、足を引きずるといった症状がみられます。
治療には、外科手術が一般的となっており、再発防止のためにも犬の関節に負担がかからない生活環境が必要となります。
愛犬にやさしいおすすめ床材〇選
犬の足腰に負担がかかることで生じるトラブルは、思っている以上に多く存在したのではないでしょうか。それらを予防するために、愛犬にやさしい床材は何を選んだらいいのか考えてしまいますね。
賃貸マンションやアパートに住んでいる場合、リフォームすることはできません。持ち家であっても、床材全部取り替えるというのは、ちょっと考えてしまいますね。ここでは、犬にやさしいおすすめの床材をご紹介しますので、参考にしてくださいね。
東リ ニュークレリスシート
壁紙や床材を専門とする、「東リ」が開発した機能性クッションフロアです。厚さ2.5mmのペット対応商品で、ペット臭やおしっこ臭、食べもののニオイといった気になるニオイを軽減してくれる消臭機能がついています。
通常のクッションフロアよりも傷がつきにくいほか、滑りにくくなっています。フローリング調のデザインですが、目地の凹みがないのでお手入れも簡単。1m以上から10cm単位で注文できるため、無駄がでないのも嬉しいですね。
ただし、クッションフロア用両面テープや接着剤で貼り付けなければいけないため、賃貸物件での使用は注意が必要です。
富双合成 ニューペットマット
床材専門の「富双合成株式会社」が開発したニューペットマットは、厚さ2.3mmのペットに特化したクッションフロアです。表面に適度な凸凹をつけることで滑りにくいだけでなく、汚れが落ちやすいように考えて作られています。
もちろん傷がつきにくいというほか、ペット臭やおしっこ臭、生活臭などの消臭機能がついており、その効果は抜群です。1m単位で注文できるため、使い方は自由自在ですね。ただし、こちらも本来の床材に貼り付けるために、クッションフロア用両面テープや接着剤が必要となるため、注意してくださいね。
富双合成 貼ってはがせるフロアマット
クッションフロアは魅力的だけど、本来の床材に貼り付けるのはちょっと...と思っている方には、微粘着で床材を傷めることなく使用できる「貼ってはがせるフロアマット」がおすすめです。厚さ3mmで表面は凹凸のあるエンボス加工になっているため、わんちゃんが歩きやすいです。
消臭、防炎、保温、防カビ加工が施されているほか、お手入れも簡単です。タイル状になっていて、好きな色を組み合わせることも可能です。カーペットと畳以外の床材に対応しています。もちろん賃貸物件でも使用できるのは嬉しいですね。
テラオ コルクマット
コルクマットはいろいろありますが、「テラオ」のコルクマットは安心・安全にとことんこだわって作られていておすすめです。
原材料のコルクは世界最大のコルクメーカー社の最高級コルクを使用し、ダイオキシンの心配がないEVAクッションを裏打ちして、犬の体にかかる衝撃や負担を低減させています。
愛犬がイタズラ好きでコルクマットを食べてしまうかも...なんて心配もいりません。食べてしまっても無害な材料で作られており、汚れてしまったときのお手入れも簡単です。水拭きできるだけでなく、ジョイントタイプなので、汚れた部分だけを外して軽く水洗いもOK。
本来の床材の上に置くだけなので、設置も簡単ですね。夏はサラサラ、冬はポカポカという、愛犬が過ごしやすいコルクマットです。
SANKO おくだけ吸着 ペット用撥水タイルマット
裏面のアクリル樹脂が床材に吸着してくれるので、置くだけでOK。わんちゃんが上を走っても、ズレたり動いたりしない優れモノです。カーペット素材ですが、撥水加工とアンモニア消臭加工が施されており、汚れてしまったら洗濯機で丸洗いができます。
掃除機をかけても吸いあがらないので、ストレスなくお掃除ができます。タイル状で厚さが4mm程度なので、愛犬がつまづく心配もありません。ケージの中だけ、廊下だけ、といった部分使いもできるのは嬉しいですね。床暖房にも対応しているので、部屋の床一面に敷き詰めることも可能です。
まとめ:床材選びで愛犬の足腰を守ろう!
今回は、愛犬のための床材選びについてご紹介しました。床材による愛犬への足腰の負担は、飼い主さんが思っている以上に大きいことがおわかりいただけたのではないでしょうか。犬にとって滑りやすい床材は、常に力を入れて足を踏ん張って歩いている状態です。
私たち人間でも、凍った路面を歩くのはとても大変なことですね。我が家の愛犬は、フローリングの上をわざと滑って遊んでいたことがありましたが、頸椎の椎間板ヘルニアと膝蓋骨脱臼を発症しました。幸い軽度で大事には至りませんでしたが、もっと早く対策をとっていればと後悔しました。
知人宅のわんちゃんは、フローリングで滑ってタンスに激突し、前足を骨折するというケガを負ったことも。滑る床材は、人間が思っている以上に危険なのです。ちょっとした工夫をしてあげることで、そういったトラブルを防ぐことはできます。ぜひ、愛犬にやさしい床材を選んであげてくださいね。