犬の歯石とは歯垢が石灰化したもの
犬の歯石というと歯の周りに固着した黄色い石のようなものを想像するかもしれません。しかし初めから固い石のような歯石が付くわけではありません。
最初は歯垢が付きます。歯垢は名前の通り歯に付着する垢のようなもので歯ブラシなどでこすることで落とすことができます。
しかし歯垢が付いたまま時間が経過すると塊となって歯石に変化しこすっても落とすことができなくなります。
こすって落とすことができなくなった時にはすでに石灰化してしまっているので動物病院などで削って歯石をとる処置が必要になります。
犬の歯石取りをせずに放置するとどうなる?
歯垢には細菌が多くついています。そのため歯石にも細菌は多く含まれていて、歯石の75%が細菌だといわれています。細菌の塊である歯石は放置しないほうがいいことは明らかだと思われます。
では歯石を放置した場合具体的にどんなことが起きてしまうのでしょうか。
- 口臭が悪化する
- 歯肉炎がおこり歯肉が後退する
- 歯根に膿がたまる
- 全身感染の原因となる
どれも歯石に付着した細菌が原因となって発生することです。それぞれのことに関して詳しく説明していきます。
口臭が悪化する
歯石はついてから時間経過とともに口から悪臭がしてくることがあります。愛犬は可愛いのに近くによると口から悪臭がするのは辛いものです。
ひどい場合はお家全体に悪臭がこもることまであります。この臭いは歯石をとる以外に解決方法がありません。
歯肉炎がおこり歯肉が後退する
歯肉炎はその名の通り歯肉におこる炎症であるため、食べ物などがあたると痛く食欲低下の原因となります。
さらにその炎症は歯肉を後退させ歯が抜けてしまいます。歯肉炎が酷いと老犬になったときに歯が一本もない子もいます。
歯根に膿がたまる
歯石は歯肉と歯の間に入り込んでいって、次第に歯根まで歯石がたまり始めます。すると歯根付近で細菌は膿となり溜まります。それが溜まりすぎると頬に穴が開いて膿が出てきたり鼻炎の原因となったりします。
全身感染の原因となる
歯の周囲には血管が豊富に存在しています。細菌が常に血管のそばに存在している状態で、免疫力が落ちると血管内に細菌が入り込み全身感染を引き起こす可能性があります。
全身感染をおこすと敗血症や心筋炎などから死亡するリスクもあります。
犬の歯石の取り方4つ
犬の歯石の取り方を紹介します。歯石除去は基本的に2つの作業が行われます。
- スケーラーを使って歯石を除去するスケーリング
- 歯の表面を磨いてツルツルにするポリッシング
まずはスケーリングで歯石を除去します。しかしそれだけでは歯の表面がデコボコしてしまい歯石が付きやすい状況になってしまいます。そのためスケーリングの後に歯の表面をツルツルにして歯石が付きにくい状態にするポリッシングを行います。
それでは歯石の取り方を4つ紹介いたします。
- 動物病院で全身麻酔でおこなう
- 動物病院で麻酔を使わずにおこなう
- 自宅で歯石取りグッズを使用しておこなう
- 自宅で歯磨きグッズを使用する
それぞれのメリットやデメリット、気を付ける点も併せて紹介します。
動物病院で全身麻酔でおこなう
全身麻酔を使って犬が寝た状態で歯石除去を行います。寝ている間にすべての処置が終わるので犬本人は口の中をいじられたことを知らないうちに全ての処置が終わります。
動物病院で全身麻酔をかけて歯石除去を行うメリットは3つあります。
- 口を触られるのが嫌な子でも歯石取りができる
- 歯の裏や歯周ポケットも綺麗にできる
- 必要な場合は抜歯を行うことができる
その一方でデメリットも3つあります。
- 全身麻酔をかけなければいけない
- 費用がかかる場合が多い
- その後何も歯石対策をしなければ半年から1年で元に戻る
全身麻酔をかけるので歯の裏側や歯周ポケットまで歯石取りをすることができます。さらにポリッシングと呼ばれる歯面研磨を行うので歯石が付きにくい状態にすることができます。
そのため一度しっかりとスケーリングとポリッシングをしてしまえば数年間は歯磨き等で歯石による問題の発生を防げます。
動物病院で麻酔を使わずにおこなう
全身麻酔をかけて行う歯石除去は負担少なく確実なスケーリングとポリッシングが行えます。しかし全身麻酔に抵抗があったり心臓病などで全身麻酔が危険な場合は麻酔を行わずにスケーリングをすることがあります。
動物病院で麻酔を使わずにスケーリングを行うメリットは2つあります。
- 全身麻酔の必要がない
- 費用が麻酔を行う場合と比較して安い
一方でデメリットは3つあります。
- 強引に犬を抑え込んでスケーリングをするので、処置後口を触られるのを嫌がるようになる可能性がある
- 歯周ポケットや歯の裏側は歯石除去できない
- ポリッシングが出来ないので歯石が付きやすくなってしまう可能性がある
歯医者で歯周ポケットを掃除するとチクチクすると思います。犬も同じでなかなか触らせてくれる子はいません。全身麻酔を行わずにスケーリングを行っても歯周ポケットや歯の裏側まで綺麗にするのは難しいです。
そして歯周ポケットや歯の裏側までスケーリングを行わなければ歯肉炎の予防効果や口臭の軽減効果は少なくなってしまいます。
一時的に表面が綺麗になるだけの処置ですが全身麻酔が出来ない・抵抗があり、処置後には歯磨きなどが出来る場合は無麻酔でのスケーリングを選択するといいでしょう。
自宅で歯石取りグッズを使用しておこなう
通販サイトや動画サイトでスケーラーや歯石取りペンチなどが売られ使い方が解説されています。
歯の表面の歯石を取ることができるので一見すると綺麗になるのですが、強引にやったり痛い思いをするとそれ以降口を触らせてくれなくなってしまう可能性があります。歯茎を傷めたり歯を折ったりしないよう気を付けながらおこないましょう。
自宅で歯磨きグッズを使用する
人の歯磨きと同じで、歯ブラシや歯磨き粉、歯磨きシート、歯磨きガムが売っています。これらを使うことで歯垢を落とし食べかすを取り除くことができます。歯垢が少なくなれば歯石が出来にくくなります。
ただしそのままでは磨きにくいので歯磨き粉を使用します。歯磨き粉は人間と違って色々なフレーバーが用意されていてミントやグリーンアップル、チキンなど様々です。
おいしい香りがするので犬も歯磨きを喜んでやらせてくれてやりやすくなるのでお好みのフレーバーを使用するといいでしょう。チューブ状の物やジェル状の物がありますが効果よりも使いやすさや犬の好みでどれを使うか決めましょう。
歯磨きガムは歯垢から歯石になりかけてしまった状態でも使用することができます。歯磨きと併用することで磨き残して歯石になりかけてしまった場所も綺麗にすることができます。
歯磨きガムは噛むことで歯石をはがします。そのため丸呑みすると効果が全くないのでしっかりと噛むようにして与えましょう。そのためにガムの端を持って反対端からかじらせるようにすることが上手くガムが噛めるコツです。
犬の歯石取りの費用は?
無麻酔での歯石取りは1~2万円、全身麻酔での歯石取りは3~4万円かかります。ただし年齢、体格・体重、歯石の付着状態、抜歯の有無、麻酔前検査によって値段は前後します。値段は歯石取りを行う前に獣医師に確認しましょう。
保険会社によっては保険料が下りる事があります。歯肉炎や根尖膿瘍などの病名が付く場合は「治療が必要な処置」となり保険がおりやすいです。歯石取りを行う前に保険会社に保険が適応されるか事前に確認しておきましょう。
犬の歯石予防には適切な歯磨きが効果的
歯石予防として自宅でできる最大の方法は「歯磨き」です。歯石になる前の歯垢の段階で歯ブラシや歯磨きシートでお手入れすることが大事です。
動物病院で歯石取りを行えば一時的に歯石は無くなります。しかし歯石取りは犬にとって負担があること、また歯石取り後に放置すれば1年で元に戻ってしまうことからも自宅での予防が大切です。
しかし自宅で歯磨きをするといっても、小さいころから口の中を触って歯磨きの練習をしていないと難しいかもしれません。
嫌がってしまう時に無理をして歯磨きをしてしまうとさらに嫌いになってしまいます。少しずつ口の中を触って歯磨きに慣らすようにしましょう。
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まとめ
歯石取りをするための方法を紹介しました。一度歯石がついてしまうと取るためには麻酔をかけたり専用のペンチやスケーラーで取る必要があります。
犬にとってはどちらの方法でも負担がかかってしまいます。数万円といった費用も掛かってしまうため普段から自宅で予防を行うことが大事です。
自宅で予防するためには子供のころから歯磨きに慣れさせて習慣づける必要があります。老犬になってから急に始めようとしてもうまくいかないことが多いです。
おいしい香りのする歯磨き粉を使って「歯磨きは楽しい」ということを教えてあげてください。普段から仲良く歯磨きをして歯石が付かないようにしましょう。