知らないと危ない!犬の食物アレルギー【獣医師監修】

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記事の監修

  • 獣医師
  • 平松育子
  • (AEAJ認定アロマテラピーインストラクター・ペットライター )

獣医師・AEAJ認定アロマテラピーインストラクター・ペットライター
山口大学農学部獣医学科(現:共同獣医学部)卒業。2006年3月~2023年3月 有限会社ふくふく動物病院 取締役・院長。ジェネラリストですが、得意分野は皮膚疾患です。
獣医師歴26年(2023年4月現在)の経験を活かし、ペットの病気やペットと楽しむアロマに関する情報をお届けします。

犬も食べ物からアレルギーになる??実はなるんですよ。犬の食物アレルギーがどのような症状なのかそしてどんなものがあるのか詳しくお話ししましょう。

そもそもアレルギーってなに?

『アレルギー』とは、過剰な免疫反応のことを言います。
私たち人間を含め、生き物の体は体の中の免疫により外部からの菌などから守られているのですが、しかし、ある時をきっかけに原因物質が体内に入り込むとそれは本来なら害がないものなのに過剰に攻撃し、さらに体に影響を与えてしまうのです。
これがアレルギー反応なのですが、その中でも『食物アレルギー』とは特定の食物の成分に対して過剰反応を起こし、アレルギー反応を示すことを言います。

犬のアレルギー症状ってどんなもの?人との違いは?

人がアレルギーを起こすと、体が痒くなったりお腹が緩くなったりという症状が出るのですが、犬も同じような反応症状が起こります。

  • 体のかゆみ
  • お腹の張り
  • 脱毛
  • 体を引っ掻く、傷ができる
  • お腹が鳴ってしまう
  • 発熱
  • 嘔吐や下痢
  • 膿皮症
  • 外耳炎

犬の食物アレルギーが起こるメカニズム

犬の食物アレルギーは、原因物質である「アレルゲン=抗原」が深く関わっているのですが、このアレルゲンが食べ物であるというところが他のアレルギーとは違う点です。

では一体どのようなメカニズムで犬の食物アレルギーが起こるのでしょうか。

食物アレルギー反応には型がある

実は食物アレルギーには二種類の型があり、「Ⅰ型」と「Ⅳ型」に分かれています。
「Ⅰ型」は、アレルゲンである食品を摂取してから短時間で症状が現れます。
このタイプの型は犬でよく見られる皮膚疾患の「アトピー性皮膚炎」で、それに対し「Ⅳ型」はⅠ型よりも反応が遅く出る傾向にあり、症状が徐々に現れるタイプで、「接触性アレルギー」という疾患になります。

アレルギーが出るまではどのぐらいで症状がでるの?

犬が特定の食物を摂取してから症状が出るまでは、「Ⅰ型」では30分、「Ⅳ型」では24時間以上かかると言われています。
「Ⅰ型」であればすぐに見てわかるのですが、「Ⅳ型」の場合、症状が出るまでにかなりの時間がかかってしまうので、飼い主さんが犬の異変に気付きにくいという難点があります。

犬の食物アレルギーは「Ⅰ型」も「Ⅳ型」も症状のメカニズムは一緒で、アレルゲンである食物を犬が摂取し、それが腸の中に運ばれ部分的に作用した後に血液によって流され全身に散らばります。
これによりアレルギー症状が現れるのですが、症状の持続性については違いがあり、「Ⅰ型」は症状が早く現れた分、引いていくのも早いのですが「Ⅳ型」の場合一度症状が出るとひどい場合は数週間も症状が持続してしまう傾向にありとても厄介です。

アレルギー症状が出やすい食べ物

2015年の調査の結果では以下のことが分かりました。

  • 動物食品………牛肉、鶏肉、豚肉、ラム肉、魚、卵
  • 植物性食品……小麦、大豆、米、とうもろこし

その中でもダントツでアレルギーを引き起こすのが牛肉で34%、続いて乳製品で17%鶏肉で15%という結果が出てしまいました。
どれも犬のフードに含まれているものばかりですし、犬のおやつなどでも乾燥した牛肉や鶏肉、乳製品の入った犬用のクッキーなどが多く売られています。
そうなるとなかなか食物アレルギーを防ぐというのは難しいものですね。

犬のアレルギー対処法!予防

なかなか防ぐのが難しい犬の食物アレルギーですが、しっかりと対策をすれば症状を抑えることができたり、ある程度防いであげることも可能です。

まずは動物病院での診察を

症状がどのように出ているのか、またどのぐらいの期間出ているのかしっかりメモを取るなどして動物病院へ診察に連れていきましょう。
診察してもらった結果、膿皮症や外耳炎を発症してしまっている場合は、抗生剤や抗真菌剤を処方してくれますし、そうじゃない場合も、症状によっては抗生剤や塗り薬を処方してもらえたりします。

痒みのひどい場合には痒み止めの薬が処方されることもありますが、痒みの原因が食物の場合には薬を注射したり飲んでも痒みが治まらないことがあります。しっかりアレルギー検査を行い原因がどこにあるのかを突き止める必要があります。

アレルギーの原因は一つでないことがほとんどで、同時に細菌感染が起きているとさらに症状はこじれます。皮膚疾患の治療は時間と根気が必要なことが多く見受けられます。

犬のフードやおやつを見直してみよう

4週間から6週間症状が続いてくると、原因であるアレルゲンが特定しやすくなってきますが、これ以上悪化させないためにも、原因として考えられる食品が含まれたフードは避ける必要があります。
その場合、素人判断でフードを選ばず、獣医師に相談したりペットショップで相談してみると良いでしょう。
フードにはアレルギー対策がされているドッグフードがあり、これらは原因となるアレルゲン食品が省かれて作られているためとても効果的です。

まとめ

食物アレルギーは私たち人間も長年悩まされている疾患ですが、犬も同じように食物でアレルギーを引き起こし日々悩まされています。

しかし、私たち人間と違うのは犬は言葉を発することができないということ。
どんなにかゆくても、どんなに辛くても犬は言葉にすることができません。
症状に早く気づいてあげられるのは、共に生活している私たち飼い主だけなのです。

食物アレルギーを防ぐことはなかなか難しいことですが、極力品質の良いドッグフードを与えたり、手作り食をはじめてみたりして辛いアレルギー症状から遠ざけてあげましょう。

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執筆ライター
19歳からトリマーの世界に入り専門学校でアシスタントをした後6年間ドックサロンで働いていました 。飼い主目線や犬目線を意識した 犬と飼い主の本当の幸せとは何かをお伝…