犬のサマーカットは注意が必要!熱中症の危険性あり 【獣医師監修】

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記事の監修

  • 獣医師
  • 平松育子
  • (AEAJ認定アロマテラピーインストラクター・ペットライター )

獣医師・AEAJ認定アロマテラピーインストラクター・ペットライター
山口大学農学部獣医学科(現:共同獣医学部)卒業。2006年3月~2023年3月 有限会社ふくふく動物病院 取締役・院長。ジェネラリストですが、得意分野は皮膚疾患です。
獣医師歴26年(2023年4月現在)の経験を活かし、ペットの病気やペットと楽しむアロマに関する情報をお届けします。

ざっくりAI要約

  • 犬のサマーカットは熱中症などのリスクが高まる
  • サマーカット以外の熱中症対策は犬の体を冷やす方が効果的

一般的になりつつある犬のサマーカットですが、その方法によっては犬には悪影響しかありません。犬にとって悪影響が多いとされる犬のサマーカットがなぜ悪いのか、注意点にはどういったものがあるのかを紹介したいと思います。

犬のサマーカットの目的

夏が近くなると街で見かける犬の被毛が短くカットされた犬、いわゆる「サマーカット」されている犬をよく見かけますね。

この「サマーカット」を行う目的は、犬を激しい暑さから守り、熱中症を起こさせないための対策だったりする場合が多く、短くカットすることで、飼い主や家族から見てもさっぱりと涼しく見えるからかもしれません。

その他にも、飼い主や家族にとって、被毛が短いという事はの手入れがしやすいですし、そんなこともあってか夏場は「サマーカット」をする飼い主さんが多い傾向にあるのかもしれません。

犬のサマーカットが必要な犬種

犬種の中にはサマーカットを必要とする犬種とサマーカットを必要としない犬種がいます。サマーカットを必要とする犬種としては、被毛が長い長毛犬種が多い傾向があります。
飼い主や家族が犬の毛が暑苦しいと思い、サマーカットを希望するケースが多いのです。

主なサマーカットが必要な犬種としては、

  • ゴールデン・レトリーバー
  • シー・ズー
  • ダックスフンドのロングコート
  • チワワのロングコート
  • シェットランド・シープランド

などがいます。

犬の被毛の種類

犬種には、被毛が長い犬種や、短い犬種など、いくつか犬の被毛には種類があります。
被毛が長い場合は「ロングヘアード」と呼ばれ、短い場合は「ショートヘアード」と呼ばれ、ごわごわした硬い毛をしている被毛の場合は「ワイアーヘアード」と呼ばれます。

ショートヘアードの主な犬種としては、

  • ラブラドール・レトリーバー
  • ビーグル
  • バセット・ハウンド
  • ブラッドハウンド
  • ブル・テリア

などがいます。ショートヘアードの犬種は、もともと短いために、カットをすること自体ができないので、サマーカットをすることはありません。

ワイアーヘアードの主な犬種としては、

  • エアデール・テリア
  • アイリッシュ・テリア
  • シュナウザー

などがいます。ワイアーヘアードは、ショートヘアードよりも長いですが、暑苦しいほど長いわけではないので、あまりサマーカットをする場合は少ないですが、飼い主や家族によっては行うことがあります。

さらに被毛の種類には、被毛が1つしかない「シングルコート」と、トップコートとアンダーコートの両方がある「ダブルコート」の種類があります。

ダブルコートの主な犬種としては、

  • ウェルシュ・コーギー・ペンブローク
  • ポメラニアン
  • シベリアン・ハスキー
  • 柴犬
  • セント・バーナード

などがいます。ダブルコートの犬種は主に寒い地域で生まれた犬に多く、抜け毛が多い犬種が多く、換毛期には、大量の毛が抜け落ちます。

シングルコートはダブルコートとは違い、暑い地域で生まれた犬種が多く、主な犬種としては、

  • グレート・デーン
  • グレーハウンド
  • ボクサー
  • パピヨン

などがいます。

犬の被毛の役割

犬の被毛の役割には、外敵からの攻撃から体を守るという役割や、水をはじくことで体が濡れることを防ぎ、体が乾燥することも防ぐことができ、病原体や寄生虫の感染や進入を防ぐことを役割としてあり、さらに体温調節の役割も担っています。

人は汗をかくことで体温調節をしますが、犬はほとんど汗をかきません。犬の体温調節の手段として、「あえぎ呼吸」と呼ばれる呼吸器系によってのみ行われるために、犬は体温調節が苦手な動物です。

また、犬の皮膚は人に比べて薄いため、紫外線や直射日光から犬を守るために被毛があります。例外としてメキシカン・ヘアレス・ドッグや、チャイニーズ・クレステッド・ドッグなど、被毛がない、もしくは被毛が少ない犬種と知られるヘアレスドッグは、他の犬種よりも皮膚が厚いといわれます。

犬は、人のように服を着て紫外線や直射日光から身を守れるわけではなく、被毛がふく射熱や紫外線などから守る役割を担っています。人から見ると暑いと思われる被毛ですが、それがあることで、犬は夏場の暑さを乗り切ることができます。

犬は人よりも地面に近いので人よりもふく射熱の影響を受けやすく、暑さを感じやすいといわれます。

犬のサマーカットは被毛を梳き、短くカットするタイプと、バリカンなどで丸刈りにするタイプがありますが、丸刈りにするタイプなどで犬の被毛を短くし過ぎると、犬に直射日光が当たり、サマーカットをする目的である「犬の暑さや熱中症対策」の意味がなく、逆効果となる場合もあります。

犬は体内の熱をあえぎ呼吸でしか放出されないために、被毛が少なくなり、短くなることで、熱がより溜まりやすくなり、さらに暑さを感じ、熱中症になりやすくなります。

犬のサマーカットの危険性

犬のサマーカットをした際の危険性としていくつかありますが、サマーカットを行う場合は、その危険性も十分考慮して、手入れが簡単だからという理由だけで犬のサマーカットを行うことはやめましょう。

特にバリカンでの極端な丸刈りは危険であり、犬の暑さ対策や熱中症対策にもなりません。

犬の被毛がなくなってしまい、短くなりすぎることで、直射日光から皮膚を守り、陽が当たりすぎることによる犬の体温上昇を防ぐ役割が失われ、熱が溜まりやすくなり、逆に犬が暑さを感じやすくなり、熱中症になりやすくなる場合もあります。

ただしドッグスポーツ大会などに出場を目指している犬などは、激しいトレーニングをする犬もいるので、そのとき犬はサマーカットをすることで熱を放出する量が増加するため、犬のサマーカットを行う意味があります。

サマーカットで犬をバリカンで丸刈りにすると、毛質や毛色が変わることや、伸びた被毛の長さにムラが出てしまうことがあります。特にダブルコートの犬種には、その変化が現れやすいといわれます。また、サマーカットで犬をバリカンで丸刈りにすると、生えにくくなる場合もあります。

サマーカットで犬をバリカンで丸刈りにすると、犬の被毛の役割には他の犬からの攻撃を直に受けたりもするので、怪我も大きくなりやすく、細菌や寄生虫、病原菌などの感染や進入の可能性も高くなります。必要以上に体を濡らしても、その水分が蒸発するときに乾燥しやすくなります。

犬にとって被毛が少なくなり、なくなってしまう犬のサマーカットは、デメリットが大きく、熱中症対策にもならないのであれば、犬のサマーカットをするときには、トリマーさんとよく相談して、どの長さまでカットするのか、その必要があるのかを確認しましょう。

犬のサマーカット以外で熱中症対策

犬のサマーカットは暑さや熱中症対策にはならないのであれば、それ以外の方法で、犬の暑さや熱中症対策をする必要があります。

犬のサマーカット以外で熱中症対策としては、タライや子ども用プールなどに水を入れて、その中に犬の肢をつけることで、犬の太い血管が冷やされるので、体内をまんべんなく冷やすことができます。犬に水をいつもより飲ませ、クールマットやクールウェアを利用することでも熱中症対策としては十分です。

保冷剤も犬の熱中症対策には効果がありますが、保冷剤の中には犬が口にすることで有毒な、中毒症状を示す成分である「エチレングリコール」が含まれている場合もあるため、使用する際には注意が必要です。保冷剤で犬を冷やす場合、首から背中、脇の下からお腹、股関節までをタオルなどで包んだ保冷剤で冷やすようにします。

屋外飼育をしている犬の場合は特に熱中症対策が必要であり、1番の対策は日陰を作ることですが、日陰は太陽の傾きによって変化することもあるため、どの時間帯であっても日陰がなくならないようにする必要があります。風通しが良い日陰の場所を選んであげましょう。

室内飼育をしている犬の場合は、室内温度をいつもより1~2度下げてあげると、犬は快適に過ごすことができます。

散歩や出かけるなどの外出の場合は、昼間の暑い時間帯を避けて外出するようにし、外出する際は犬用のクールウェアを利用するようにします。

暑い時間帯は、気温以外にもアスファルトが気温以上に暑くなり、犬の肢の裏が火傷をするなどふく射熱により、犬は人よりも熱く感じやすくなるため、それが原因で熱中症にもなりやすいので注意が必要です。

まとめ

犬のサマーカットは、飼い主や家族が思っている以上に犬には負担になることもあり、犬のサマーカットはあまりお勧めできません。犬のサマーカットで熱中症対策をするのであれば、それ以外の方法で熱中症対策をした方が効果的であり、犬にとっても優しい対策といえます。

熱中症の対策は大事な犬にとって最も効果があり、犬のためとなる対策を行いましょう。

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執筆ライター
動物系の専門学校を卒業後、ペットに関するの仕事に従事していました。今は15歳になるMixの愛犬と暮らしています。仕事や学校で学んだ、犬種やしつけ、病気や健康管理など…