犬の避妊・去勢手術に関するメリットとデメリット【獣医師監修】
2019年03月04日更新
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記事の監修
- 獣医師
- 加藤桂子
- (大学病院 獣医師)
日本獣医生命科学大学卒業。北海道の大学病院で獣医師として勤務。一般診療をメインに行いながら、大学にて麻酔の研究も並行して行う。「動物と飼い主さんに寄り添った治療」を目標に掲げ、日々診療に励んでいます。
愛犬に避妊・去勢手術を受けさせた方、迷っておられる方は多いかと思います。体にメスを入れるだけに、慎重な選択や決定が必要となるこの手術には、メリットもあればデメリットもあります。飼い主さんは、その点をよく理解しておくことが必要です。この記事では、犬の避妊・去勢手術について、詳しくご説明します。これから手術を考えている方は、是非参考になさってください。
犬の避妊・去勢について
犬の避妊・去勢手術について、いつ行うか、リスクはないのかと悩んでらっしゃる飼い主さんは、少なくないのではないでしょうか?近年では必須とされる手術ですが、大切な愛犬に手術を受けさせることに対しては、やはり躊躇してしまうものです。
しかし、手術時には犬に負担をかけてしまうものの、その後の生活においては、犬自身が快適に過ごすことができるのも事実。
ここからは、避妊・去勢手術のメリット、デメリットや注意点など見ていきましょう。
避妊・去勢手術の目的
避妊・去勢手術の目的は、意図しない繁殖を防ぐ事にあります。
これは、不幸な犬達を増やさない為にも有効です。飼い犬が飼い主の知らない間に妊娠してしまい、出産後貰い手のなかった子犬が捨てられてしまったり、迷子になった犬が外で繁殖して野犬が増えてしまったりなどというケースは未だに多く、幼くして殺処分されてしまう犬もいます。
健康な体にメスを入れるのは人間のエゴだという考えもあり、その是非は一概には言えませんが、手術をするにしろしないにしろ、犬の発情に関する部分を人間がサポートしていくことが必要です。
他のメリット
生殖器の病気を防ぐ
①女の子の場合
乳腺腫瘍、子宮蓄膿症は、性ホルモンにより発症する病気です。避妊手術を行っていない犬や手術が遅かった犬に発症しやすく、特に乳腺腫瘍はわんちゃんの場合は良性であることのほうが多いとされていますが、悪性である可能性もありますので命に関わります。また子宮蓄膿症も命にかかわる疾患です。
②男の子の場合
男の子の場合は去勢手術により、前立腺肥大、会陰ヘルニア、肛門周囲腺腫、精巣腫瘍などの病気を防ぐ事ができます。
性格の変化
避妊・去勢手術を行うと、性格が穏やかになると言われます。これは性格というよりも、生殖本能やホルモンが影響する行動に関係しています。
生殖器がある場合は、本能やホルモンにより、激しいマーキングや攻撃性、落ち着かないといった様子が見られますが、手術で除去することでこういった行動が和らぐと言われます。
いつもの生活を保てる
成熟した雄犬は、パートナーを探す為脱走したり、散歩やドッグランで出会う雌犬を追いかけ回したりしてしまうことがあります。また、雌犬には発情期前に生理が来て、発情期には不安そうな様子を見せます。
他の犬と触れ合うと迷惑をかける事もある為、発情期には犬をなるべく室内で過ごさせる方も多いでしょう。そうすると、犬はストレスを抱えてしまいます。避妊・去勢手術は、こういった発情による日常生活の壁を取り除く為にも有効です。
デメリット
手術による負担
犬の避妊去勢手術は、手術により行われます。全身麻酔による身体の負担は勿論、手術の不具合により命を落としたという例も存在します。定番の手術ではありますが、体にメスを入れる以上、簡単に考えることはできません。
肥満になりやすい
手術後の犬は、やや肥満になりやすい傾向にあります。カロリー管理を徹底し、回復後の適度な運動も忘れずに。
手術をする前に
手術のタイミングについて
男の子の場合は、約半年を過ぎてから手術をすることが可能です。女の子の場合は、初回のヒートが来る前に手術するのが理想とされ、初回以降になるとぐっと病気にかかる確率が上がってしまいます。ヒートは生後7ヶ月〜10ヶ月位に来る事が多いようです。
また、犬の体調も手術のタイミングを決める上で大切。体や免疫面が出来上がっていない生後半年までは避け、その後体調の良い時期に早めに行うのが良いでしょう。
病院選びについて
病院選びは何よりも大切。現在は多くの動物病院がありますが、手術の腕やアフターフォローの良し悪しにはそれぞれ違いがあるものです。
口コミなども確認し、評判が良く、信頼できる病院にお願いしましょう。犬が幼いうちから病院に通い、獣医師との信頼関係を築いておくのもおすすめです。
まとめ
犬の避妊・去勢手術について、ご紹介しました。
手術については迷われる方も多いかと思うので、メリットやデメリットをよく理解し、家族や獣医師と相談しながら方針を決めましょう。
また、手術を行った場合には、術後のケアを忘れずに。術後服やカラーで傷口を守り、痛みがあるであろう犬が安心できるよう、気遣ってあげてください。避妊・去勢については、飼い主さんが正しい知識を持っておく事が何より大切です。