エリザベスカラーが犬のストレスになる?問題点とストレス軽減法【獣医師監修】

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記事の監修

  • 獣医師
  • 平松育子
  • (AEAJ認定アロマテラピーインストラクター・ペットライター )

獣医師・AEAJ認定アロマテラピーインストラクター・ペットライター
山口大学農学部獣医学科(現:共同獣医学部)卒業。2006年3月~2023年3月 有限会社ふくふく動物病院 取締役・院長。ジェネラリストですが、得意分野は皮膚疾患です。
獣医師歴26年(2023年4月現在)の経験を活かし、ペットの病気やペットと楽しむアロマに関する情報をお届けします。

傷口や患部を舐めてしまうことを防ぐために犬の首に巻いて装着するエリザベスカラー。見るからに不便そうですし、ストレスがたまってしまいそうですよね。ストレスを軽減させてあげる方法をご紹介します。

問題点①:お水が飲みづらい

エリザベスカラーを着けていると、お水が飲みづらい、または全く飲むことができないことがあります。エリザベスカラーがお皿に当たってしまって、どんな一生懸命に舌を伸ばしても、お水まで届かないのです。

喉が渇いているときに邪魔されてしまっては「お水が飲みたいのに!」とイライラしてしまいますよね。ごはんを食べるときには取り外してあげるでしょうけれど、傷口や患部を舐めてしまわないようにエリザベスカラーを着けているのであれば、お留守番している間は着けておかなければならないですし、ストレスはたまるばかりです。

お水が飲めないことで、脱水症状や熱中症になってしまわないよう、注意しなければなりません。

問題点②:周りの物にぶつかってしまう

犬の顔の大きさよりも、ずっとずっと幅の広いエリザベスカラーがあります。傷口や患部を舐めてしまわないようにするため、どうしても大きなエリザベスカラーを着けなければならないことがあるんです。

ただ歩いているだけなのに、壁にぶつかってしまったり、家具にぶつかってしまったり。自分の寝床であるケージの中に入りたいのに、入り口よりもエリザベスカラーの幅の方が広くて入れないなど。

何かにぶつかるたびにイライラしたり、ビクビクしたり、ふだん通りに行動することができなくてストレスになってしまいます。

問題点③:周囲の情報を得づらい

犬は、鼻でニオイを嗅ぐこと、目で見ること、耳で聞くこと、手足の裏で感じることなどによって情報を得ています。エリザベスカラーを着けていることで、その情報を得られなくなってしまうことがあります。

顔全体を覆うようなエリザベスカラーであれば、音が反響してしまい、上手く聞き取ることができないかもしれません。周りがよく見えず、上手く距離をつかむことができず、物にぶつかってしまうかもしれません。

床や地面のニオイを嗅ぎたいのに、エリザベスカラーが当たって上手く嗅げないかもしれません。

しっかり情報を得られないことで不安や恐怖を感じ、敏感になってしまうことで、ストレスになってしまいます。

「ベル型」のエリザベスカラーはNG

プラスチック製の犬の首に丸めるようにして付けるタイプエリザベスカラーのことをベル型と呼びます。

このベル型の場合、お水が飲みづらいかったり、ぶつかってしまったり、情報が得られなくなってしまったりするため、犬にとってストレスの原因になるタイプです。また、プラスチック製なので、物にぶつかったときの音を不快に感じる犬も多いです。

エリザベスカラーによるストレス軽減法

ドーナツ型のエリザベスカラーを選ぶ

犬のストレスを少しでも軽減させてあげたいという思いから、最近ではドーナツ型というエリザベスカラーを選ぶ飼い主さんが増えています。

プラスチック製ではなく、布製やスポンジ製のエリザベスカラーなので、ぶつかってしまっても不快な音は出ませんし、動きやすいですし、ちょっと狭いケージの入り口にも入りやすいです。大きさもちょうどよく設計されているので、視界を遮ってしまいにくく、お水も飲みやすいです。

布製やスポンジであることによって、寝るときにはクッションのような役割をし、寝づらいこともありません。

しかし、ひとつだけデメリットがあります。ドーナツ型のエリザベスカラーは傷口や患部に届きやすくなってしまうということです。傷口や患部の状態がある程度良くなってからドーナツ型に変えてあげるという方法が良さそうです。

お洋服でカバーする

術後の犬であれば、術後服がおすすめです。エリザベスカラーを着けることよりも、ずっとずっとストレスを感じることなく過ごせると思います。

ただし、これもまた傷口や患部に届きやすくなるというデメリットがあるため、傷口や患部を気にするうちは控えた方が良さそうです。

取り外してあげる時間を作る

お留守番の間や目の届かない間は、どうしてもエリザベスカラーを着けておかなければならないですが、様子を見ていてあげられる、少ない時間だけでも取り外してあげることで、ストレスを軽減させてあげることができます。

取り外している間はおもちゃで遊んであげたり、たくさん話しかけてあげたりして、犬が傷口や患部に集中してしまわないようにすることで、舐めてしまうことを防ぐことができます。

まとめ

ケガをしてしまったとき、皮膚に炎症があるとき、術後など、どうしてもエリザベスカラーを着けて過ごさなければならないことがあります。傷口や患部を舐めてしまって状態が悪化してしまうことを防がなければならないからです。

軟膏などのお薬を塗っておかなければならないときは、尚更に舐めてしまうことを防がなければなりません。

ストレスになりやすいベル型のエリザベスカラーで防ぐことが最も適切かもしれませんが、ある程度状態が良くなったときには、ドーナツ型や術後服などに変えてあげることでストレスを軽減させてあげることができれば良いのではないでしょうか。

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執筆ライター
ポメラニアンの女の子、柴犬ミックスの男の子、黒猫の男の子と暮らしています。二十数年、犬と暮らしてきた中で経験したことや実感したことを交えながら、犬に関する情報…