動物達が犠牲になっているアニマル・ホーディング
皆さんは「アニマル・ホーディング」又は「アニマル・ホーダー」と言う言葉をご存知でしょうか?このアニマル・ホーディングとは、自らの飼育能力のの限界を超えているにも関わらず犬や猫、鳥類などの動物達を収集し多数飼育してしまう人達の事を言います。このアニマル・ホーディングは日本でももちろん世界中で問題になっています。
このアニマル・ホーディングは世界中で知られていますが、北米以外では科学的観点から研究がほとんどされていません。研究がほとんどされていない未知の状態のアニマル・ホーディングについて、過去にスペインで調査が行われ『Animal Welfare』に発表されました報告がとても興味深いものでしたので、今回紹介したいと思います。
スペインの動物愛護協会が行った「アニマル・ホーディング」の調査
研究の調査は、スペインの動物愛護協会 Asociación Nacional de Amigos de los Animales (ANAA)が2002年から2011年までの期間に報告された24症例、合計1,218頭の犬と猫とこの犬と猫の飼い主27人のアニマル・ホーダーを対象に行われました。この症例の多くがマドリッド在住のアニマル・ホーダーです。その他の地域については、動物愛護協会に報告がされていなかった為、調査する事が出来ませんでした。
スペインの動物愛護協会が行った調査によりますと、アニマル・ホーダーが飼育する動物達の平均頭数は50頭、犬又は猫のいずれか一方だけを飼育する傾向にありました。この調査では、犬だけのケースの方が多く報告されています。
アニマル・ホーダーが動物の飼育頭数を増やす原因は、不妊手術を行っていなかった為に偶然に増えてしまった場合、動物達を好意的に繁殖させたり野良犬や野良猫を持ち帰る為に探しに出たりする場合のいずれもありました。
アニマル・ホーダーの男女比は半々で、年齢で見ると65歳以上の高齢者が63%、残りの3分の1が中年齢層でした。アニマル・ホーダーの生活スタイルは、24ケース中21ケースの半数以上が一人暮らしをしており、社会的に孤立してしまっている状態だったと言います。さらに経済的にも困難な状況を送っていると調査対象のアニマル・ホーダー達が言っていたと言います。
多くのアニマル・ホーダー達は既に動物達の収集を5年以上も続けており、そのうちの3ケースは、ホーディングを初めたばかりの頃に周囲からの介入があったにもかかわらず、その後再びホーディングを開始してしまったものでした。アニマル・ホーダーの人々の中には、動物だけでなく物品をホーディングする人もいました。実際、アニマル・ホーダーの44%の人々が物品のホーダーと徴候も示していたそうです。
このようにアニマル・ホーダーのホーディングには病的な収集癖がみられ、今回の調査で明らかになった事は、一度介入して動物達が保護された時に、同時にホーディングの根底にあるとされている精神医学的な部分で問題を解決する為の手助けが行われていなかった事だと著者は言っています。
一般の人達がホーディングに不満を抱く理由に、
- 「飼育されている動物に治療が必要とされるケース」
- 「動物達が栄養失調又は虐待されているケースが多い事」
- 「飼育されている動物数があまりにも多過ぎる事」
の3点が一般的なものだそうです。「飼育されている動物に治療が必要とされるケース」、「動物達が栄養失調又は虐待されているケースが多い事」に関係する動物達の健康管理においては、ほとんどの動物がひどい健康状態で、適切な食餌やお水を与えておらず、75%のケースが怪我、寄生虫、感染症等にかかっている状態でした。さらにホーディングされた動物達には精神面でも影響がみられ、攻撃性や社会的恐怖を示す行動が一般的にみられました。
ホーダーの人々は、アニマル・ホーディング自体に問題がある事に気づいていないというケースが殆どです。今回の調査においても例外ではなく、調査された24ケース中3ケースがホーディングしている生活に問題がある事を認め、さらにそのうちの1人が動物の福祉が守られていないと認めました。
多くの動物達と生活するには、動物達の日々の世話や健康ケア等莫大な金額や手間暇がかかります。動物達に適切な飼育がされていないと、動物達だけでなくホーダーの健康にも影響がでてきてしまう可能性があります。それは、ホーダーだけでなく周囲に住む住人の方々にも及ぶ可能性が出てきてしまいます。
ホーディングされた動物達は、健康面でも精神面でも問題を抱えているケースが多い為、保護団体に救出されたとしても簡単に里親が見つかる状態ではないそうです。
まとめ
アニマル・ホーディングの問題は世界中で起きています。この問題は、私達が住む日本でも度々ニュースに取り上げられている程問題になっています。そして、多くの動物達が犠牲となっています。まだまだ多くの人達に広まっていない問題ですが、多くの人達がこの問題を社会問題と認識し、アニマル・ホーディングにより犠牲となってしまう動物達が少しでも減少してくれるといいですね。