オーストラリアでの調査、犬種グループと虐待には関係があるか

オーストラリアでの調査、犬種グループと虐待には関係があるか

オーストラリアの動物虐待防止協会が、通報を受けた虐待の種類や件数と犬種グループごとに違いや関連があるだろうか?という調査の結果を発表しました。日本でも共通する点がありそうなその結果をご紹介します。

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犬種グループごとに虐待の種類は異なるだろうか?というリサーチ

様々な犬種の犬たち

犬への虐待には様々な形態があります。犬に対して暴力を振るうことだけでなく、適切な世話をしないネグレクト、必要な医療を受けさせない、劣悪な生活環境なども種類の違う虐待です。

そしてこの度オーストラリアのクイーンズランド大学の研究者とクイーンズランド州の動物虐待防止協会が共同で、犬種グループによって受けていた虐待の種類にどのような違いがあるのかというリサーチを行い、その結果が発表されました。リサーチに使用されたデータは2008年から2018年にかけて同動物虐待防止協会が受けた107,597匹の犬の福祉に関する通報が使用されました。

言うまでもなく犬が虐待を受けたり劣悪な環境でネグレクトされているような状態は、犬の福祉を大きく損ない、重要な社会問題でもあります。過去の統計から、犬種の違いは犬の福祉が低下することに対するファクターとして特定されているそうです。今回のリサーチはこのファクターをさらに掘り下げるものなのだそうです。

純血種とミックスとの比較

身体状態の悪い雑種犬

まず最初に比較されたのは純血種全体とミックスや雑種と呼ばれるグループでした。この2つのグループでは虐待の種類に有意な違いが見られました。

全ての形態の虐待(犬の福祉が侵害されている状態)については、ミックスや雑種のグループの方が多くの通報が寄せられていました。ミックス雑種グループの犬では、身体的な暴力による怪我や火傷、気候から身を守る環境や水/食料の不足など劣悪な生活環境の虐待が多いことが分かっています。

一方で、以前の別の研究では動物保護団体やシェルターなどから譲渡された保護犬(多くの場合ミックスや雑種)の飼い主は、ブリーダーや店舗など他の方法で取得した犬の飼い主に比べて、犬を頻繁に動物病院に連れて行き、1000ドルを超える高額な治療費も支払う意思があると答えた人が多いことも分かっています。ミックス雑種グループの犬の福祉は、高いレベルと低いレベルの両極端な傾向があるのかもしれません。

純血種の犬種グループごとの傾向

悲しげなシェルティ

純血種の犬はオーストラリアナショナルケネルクラブが定める犬種グループに従って分類され比較されました。
以下はそれぞれのグループと、グループごとに通報の多かった虐待の形態です。カッコ内は日本でよく使われるアメリカンケネルクラブでの呼び方です。

  • トイグループ 医療ネグレクト、高温の車内放置
  • テリアグループ 飼育放棄、身体的暴力、他の動物への攻撃
  • ガンドッググループ(スポーティング) 身体的暴力、身体状態の悪さ 
  • ハウンドグループ 身体的暴力、他の動物への攻撃、身体状態の悪さ
  • ワーキンググループ(ハーディング) 食料/水、身を守る環境、運動の不足
  • ユーテリティグループ(ワーキング) 食料/水、身を守る環境、運動の不足
  • ノンスポーティンググループ 医療ネグレクト、高温の車内放置、身体状態の悪さ

虐待の通報が最も多かったのは、テリアグループ、ユーテリティグループ、ワーキンググループの犬についてでした。

テリアグループでは、スタフォードシャーブルテリアやピットブルテリアなどが違法な闘犬に多く使用されることが関連していると考えられます。ユーテリティグループやワーキンググループの犬は元々の犬種の目的から豊富な運動量が必要とされるため、適切な環境が与えられていないことが影響していると考えられます。

虐待の通報が少なかったのはトイグループ、ノンスポーティンググループ、ガンドッググループでした。

犬種グループごとにどのような種類の福祉の侵害が起こっているかを具体的に知ることで、自治体や動物虐待防止協会などが公的な教育プログラムを改善し、犬を飼おうとする人々の意識の向上や教育の徹底に役立てることができます。

まとめ

家族と黒ラブ

オーストラリアで実施された、犬種グループごとの虐待(福祉の侵害)の傾向の調査結果をご紹介しました。犬を迎える前にしっかりと予習することの大切さがしっかりと表れた結果だと思います。特に自分が迎えたいと思っている犬がどのような犬種グループに属するのかを見れば、犬種が作り出された元々の目的が分かり、何を必要とする犬種なのかが良く分かります。

犬への虐待というのは、身体的な暴力を振るうことだけでなく、無知や不注意から来るものも含まれています。そのような犬の福祉の侵害を少なくするためにも公的教育の改善は大切で、このような調査が役立てられる局面です。

《参考URL》
https://www.mdpi.com/2076-2615/9/7/390/htm
http://ankc.org.au/Home

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