昆虫を原料にしたドッグフード
2019年の1月、イギリスでは初となる昆虫を原材料としたドッグフードが発売されました。昆虫から作られたドッグフードは、アメリカとドイツで販売されているのですが、今回イギリスで販売が開始されたものは、それら従来の製品よりもずっと昆虫の割合が高いのだそうです。
ドッグフードメーカーの名前はYORA。今のところ昆虫ベースのドライドッグフード1種類だけを販売していますが、年内にはウェットタイプの発売を予定しているとのことです。フードは粗タンパク質23%、粗脂肪13%、粗繊維 5%と、栄養成分は一般的なドッグフードと変わりないものです。合成の酸化防止剤や着色料、フレーバーなどは一切使われておらず、高品質と言える内容です。
お値段は1.5kgバッグが13.99ポンド(日本円にして約2000円)と、手頃な価格帯のプレミアムフードと同じくらいです。気になる原材料の昆虫は、オランダの会社で養殖されているブラックソルジャーフライというハエの幼虫が使われています。
原材料の虫の栄養価は非常に高く、必須アミノ酸、オメガ3を含む必須脂肪酸、ミネラル類を含んでおり、犬にとって消化しやすいものだそうです。現在の製品にたどり着くまで29のレシピを試して、試行錯誤を繰り返してきた自信作だとYORA社の創設者は述べています。
なぜ昆虫なのか?
しかし、YORA社が最もアピールしているのは、昆虫ベースフードの味や栄養価よりも、地球環境に及ぼす影響の少なさです。現在世界中で、犬や猫などのペットが消費している肉や魚は、全体の約20%だと言われています。
「ヒューマングレード」と呼ばれる人間が食べるものと同じグレードの食肉が使われる傾向のために、ペットフードに使用される食料の割合は高くなっています。食肉の生産が環境に及ぼす悪影響は長く叫ばれていますが、ペットフードは食肉生産の環境インパクトの約4分の1を占めると推定されています。
昆虫は養殖をする際のスペースも食餌や運搬のコストも小さく済むため、食肉生産よりも環境へのダメージがずっと小さくなります。また成長のスピードがとても早いため、継続的な供給がしやすいという点でも環境への影響が少ないものです。
昆虫フードは地球を救うか?
地球環境の専門家や科学者は、世界の食料不足を解消し、食肉生産による環境への悪影響を減らすのに役立つ食料として昆虫を推奨してきました。人間の食料として伝統的に昆虫を食べ続けている地域もあります。地球温暖化により、将来的に食料の確保は難しくなっていくと考えられる中、昆虫は理想的なタンパク質源として期待されています。
上に挙げたような食肉生産の環境への悪影響や食料不足を見越して、植物ベースのベジタリアンペットフードも販売されていますが、雑食性の強い犬はともかく、肉食の猫には植物性のフードは難しく、イギリスの動物虐待防止協会は「猫にベジタリアンフードは相応しくありません」との警告も発しています。YORAは今のところドッグフードのみを販売していますが、昆虫食は犬にも猫にも未来の明るいものと言えるでしょう。
まとめ
このたび、イギリスで発売された昆虫を原材料にしたドッグフードについてご紹介しました。虫と言うと抵抗を感じる方もいるかもしれませんが、YORAのドッグフードの見た目は茶色い三角形のごくごく普通のフードです。発売されたばかりなので、消費者のレビューなどはまだ少ないのですが、概ね犬の食いつきも良く、満足している飼い主さんが多いようです。
私たちは愛する犬のために少しでも良い品質の食べ物をと考えますが、一方で地球全体の環境も無視することはできないものです。昆虫を原材料にしたドッグフードというインパクトのある話題が、地球の環境を考えるきっかけになれば良いなと思います。
《参考》 https://www.theguardian.com/environment/2019/jan/10/dog-food-made-from-insects-on-sale