鯉を使ったドッグフード
『ベア・イット・オール』という、アメリカのシカゴを拠点とする小規模なペットフードメーカーがあります。その小規模なメーカーが、大手ペットフードメーカーの主催する、ペットのための発明を競うイベント「ペットケア・イノベーション賞」で、2018年のグランプリを受賞しました。
ノミネートされた面々は、バイオ技術を使ったペット用サプリメントや、ペットの健康管理アプリなど、いずれも強豪たちです。
それらのライバルを抑えてグランプリに輝いた『ベア・イット・オール』が出品したのが、「鯉を原材料にしたドッグフード」でした。
確かに鯉が原材料のドッグフードというのは珍しいけれど、何がグランプリを獲るほどのイノベーションだったのでしょうか?
アメリカで生態系を脅かす「アジアン・カープ」
鯉というと、日本では淡水に住む害の無い魚という印象ですが、アメリカでの野生の鯉は、日本におけるブラックバスやブルーギルのように、元々の生態系を脅かす迷惑な外来魚という位置づけです。
河川や湖の増え過ぎた藻や、虫を駆除するための対策として輸入され、放流されたアジアン・カープ=鯉たちは、その強い繁殖力と旺盛な食欲で、先住の他の生物を押しのける形になってしまい、ミシシッピ川や五大湖周辺で、大きな問題になっています。
人間の食用に捕獲しようという試みもあったそうですが、鯉はアメリカ人の口に合わず、ほとんど消費されることはありませんでした。
そこに目をつけたのが、ベア・イット・オールの創設者コーディーさんと、ハニーカットさんでした。
鯉はペットフードの原料として理想的な魚
そんなふうに、数が増え過ぎてアメリカの河川や湖を占領している鯉ですから、ドッグフードの原材料に使いたいというアイデアは地元から歓迎されました。
最初にフードを試食するモニターになったのは、コーディーさんとハニーカットさんの愛犬たちでした。友人の愛犬たちもモニターに加わり、評判は上々でした。
鯉はドッグフードのタンパク源としてとても優秀で、理想的なのだそうです。低脂肪高タンパクで、必須脂肪酸のオメガ3脂肪酸が豊富で、しかも海洋魚と違って水銀を含む心配がありません。さらに、栄養的によく似ているサーモンなどに比べると、ずっと低コストです。そして何と言っても、増え過ぎた鯉を有効に利用することができると、メリットだらけですね。
ベア・イット・オールではドッグフードの他に、鯉の魚肉をフリーズドライ加工した犬用トリーツも販売しています。また、今年度中にはキャットフードの製造販売もスタートする予定だそうです。
まとめ
アメリカのシカゴで、外来魚として迷惑な存在になっている鯉を原材料にして、ドッグフードを製造販売しているベア・イット・オールというメーカーのお話をご紹介しました。
川や湖の生態系を脅かす問題の解決につながり、栄養価が高く、犬の体にも優しいという理想的な原材料ですね。これは考えてみれば、日本でのブラックバスやブルーギルにも応用できそうな方法です。日本流にアレンジした方法で、犬の体にも飼い主のお財布にも優しい高品質なフードが製造されればいいのになあと思います。
ペットフードメーカーの方、このアイデアいかがですか?
《参考》
https://www.bareitallpetfoods.com