犬が早食いしたり丸飲みするのはなんで?その理由と危険性

犬が早食いしたり丸飲みするのはなんで?その理由と危険性

ワンちゃんにご飯をあげて、ものの数分、いえ数秒で食べ終わるなんてこと、ありませんか?このような早食いや丸飲みはワンちゃんの習性や体の構造が関係しているため仕方がないことなのですが、病気や事故などを引き起こす可能性があるんです。そこで今回は、ワンちゃんが早食いや丸飲みをする理由と、その危険性についてご紹介します。

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記事の監修

東京農工大学農学部獣医学科卒業。その後、動物病院にて勤務。動物に囲まれて暮らしたい、という想いから獣医師になり、その想い通りに現在まで、5頭の犬、7匹の猫、10匹のフェレットの他、ハムスター、カメ、デグー、水生動物たちと暮らしてきました。動物を正しく飼って、動物も人もハッピーになるための力になりたいと思っています。そのために、病気になる前や問題が起こる前に出来ることとして、犬の遺伝学、行動学、シェルターメディスンに特に興味を持って勉強しています。

犬は「噛んで食べる」習性がない

横を向いている顔の犬

ワンちゃんは、ドッグフードやクッキーなど口に入る小さなものであれば丸飲みをしてしまうことがあります。それはどんな犬種であっても、子犬であっても、成犬であっても変わりません。

実はワンちゃんは、さまざまな理由から食べ物をしっかりと噛んで食事をする習性がないんです。

早食いや丸飲みをする理由

ご飯を前にする2匹の犬

歯の構造の問題

祖先がオオカミであるワンちゃんは、食べ物を「引き裂く」犬歯や前臼歯は発達していますが、「すりつぶす」役割をもつ後臼歯はあまり発達していません。そのため、食べ物を「噛む」や「すりつぶす」、「小さくする」などという動作が苦手といわれています。そもそもワンちゃんの歯は全てギザギザと尖っているため、歯と歯の接地面が少ない構造をしていることも、一つの要因として考えられます。

ご飯を奪われないための本能

犬の祖先であるオオカミは、「食いだめ」という習性をもっていました。食いだめとは、狩りができず食料を得られないときのために、胃の中に食べ物を詰め込むことをいいます。

また、野生では敵に食べ物を横取りされることがあるため、オオカミは捕まえた獲物を早く口に含み、飲み込む必要がありました。次にいつ食事にありつけるか分からない野生の世界で、この習性は当然のことかもしれません。

このようなオオカミの習性が、人間と生活している今も本能として残っているのでしょう。

多頭飼育している家庭のワンちゃんは、早食いや丸飲みをする子がより多くみられます。それは、他のワンちゃんに食べ物をとられないようにしているためと考えられます。一匹飼いのワンちゃんでも早食いや丸飲みをしてしまうのは、本能の名残といえます。

早食いや丸飲みの危険性

オヤツを食べるチワワ

喉に詰まったり、消化不良になる

「ワンちゃんは丸飲みをしても問題ない」と冒頭でご紹介しましたが、それは食べ物の種類によって変わります。

例えばドッグフードやクッキーなどの小さいサイズの食べ物であれば問題ありません。食道を通って胃に到達し、とても強い胃酸によって多くの食べ物は消化されます。

しかし、以下の食べ物やオヤツは注意が必要です。

  • 牛皮のガム
  • 大きく硬いホネ、ジャーキー

これらのような大きなものであれば噛み砕いて少しずつ食べていきますが、口に含むくらいの小さなサイズにまでなるとそのまま丸飲みしてしまう可能性があります。唾液で溶けないガムやホネ、ジャーキーは喉や食道に詰まったり、消化不良を起こし長時間胃内に残って体調を崩すこともあるため、飼い主さんは気を付けてあげてください。きちんと喉を通って消化できるよう、小さくカットしてあげましょう。

胃がねじれる病気「胃捻転」の発症

早食いをすることによって、「胃捻転」を発症する危険性が高まります。

胃の中が大量の空気やガスなどで膨らんだ状態を「胃拡張」といい、その状態のままねじれてしまった状態を「胃捻転」といいます。食後すぐの運動や水のとりすぎなどの他に、食事のタイミングやストレスなども関与して発症すると言われています。

胸が深い大型犬は胃の中の空気やガスを排出することが苦手であるため、またお腹の中に胃が動けるスペースがあるために胃捻転になりやすいといわれています。

胃捻転を発症した場合、ねじれた胃を元に戻さなければならないので早急な外科手術が必要となります。胃拡張だけで済み予防手術を行っていない場合には再発する可能性がある病気なので、頻回の通院も必要となるかもしれません。ゲップが頻繁に出たり、吐き気、吐こうとしているのに何も出ない、異常に膨らんだお腹などがみられたらすぐに動物病院で診てもらいましょう。

まとめ

早食いや丸飲みを防ぐには、飼い主さんの気遣いが必要です。
例えば、食事の回数を分けることで胃への負担を減らすだけでなく、胃拡張・捻転の防止にもつながります。また、ドッグフードを人肌程度のぬるま湯でふやかすと食べにくくなるため、早食い防止になり、さらに喉を通りやすく、胃に優しいので効果的です。

習性だからといって、ワンちゃんの行動を放置するのは禁物です。ワンちゃんの好きな食べ物や苦手な食べ物、食べづらそうな仕草などを把握することが、早食いや丸飲みによる危険を予防できるのではないでしょうか。

監修獣医師による補足

おもちゃや小石など、食べ物ではない物を食べてしまった場合に胃や腸で詰まることがあるのはもちろんですが、食べ物であっても、大きさや食べ方(早食いや丸飲み)によっては食道や胃、腸で詰まることがあります。

ガムやジャーキーなどの硬い食べ物も与え方に注意が必要ですが、果物も意外と詰まってしまうことの多い食べ物です。一口大に切ったりんごやなし、房ごとのみかんなどが、飲み込んだ時に食道に詰まるケースがあります。

どんな食べ物でも、一口大ではなくもっと小さく切って与えるか、逆に何回も噛んで食べないと飲み込めないくらいの大きさで与えましょう(丸飲みをしない子の場合)。また、食べ物を投げて犬にキャッチさせて食べさせることも、犬が丸飲みしやすくなるので注意が必要です。

食事を早食いしてしまう子では、フードと一緒に空気を多く飲み込んでしまう傾向にあります。空気を多く飲み込むと、胃拡張になりやすくなります。胃拡張・捻転は小型犬でも発生します。

最近はドライフードを食べにくくしてゆっくりと食事をさせるための食器も売られていますので、あまりにがっついて食べる場合にはそのような食器を使うことも検討してみて下さい。(食べ物を食べにくくし、食事に時間をかけさせることは、わんちゃんの暇つぶしと脳の活性化にもつながります。)

獣医師:木下明紀子
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