ヴィーガンフードを食べている犬の飼い主へのアンケート
愛犬のためのフードを探していて気づかれた方もいるかもしれませんが、ヴィーガンフードやベジタリアンフードなど、植物性原材料を中心としたドッグフードが少しずつ増えています。
しかし長年にわたって「犬は肉食に近い雑食性なので植物中心のフードは体に良くない」と言われ続けて来たので、「大丈夫なのだろうか?」という不安があります。
一方で食資源の減少などサスティナビリティ(持続可能性)という点から見れば、人間のための食事で植物性タンパクの加工食品が増えているのと同様にドッグフードにもこのトレンドが来ることは当然とも言えます。
最も大切な「ヴィーガンフードが犬の健康に与える影響」については、科学的な研究が不足している状態です。
このたびイギリスの動物栄養学の専門家によって、3〜12ヶ月間ヴィーガンフードを与えられた犬たちの健康状態を飼い主にアンケート調査した結果が発表されました。
結論から言えば、回答した飼い主の声は「健康に良い影響があった」というものが多数派でした。
そのため、イギリスなどのいくつかのメディアで「ヴィーガンフードは犬の健康に良い」という形で紹介されているのですが、調査結果についていくつか知っておいた方が良い点があります。
飼い主からは健康状態の改善が報告された
この調査はヴィーガンフードのメーカーであるオムニ社の依頼によって実施されました。あらかじめ登録された同社製品の購入者に対してオンラインアンケート調査への参加を依頼し、100名からの回答を集計したものです。
回答者の犬は3ヶ月〜12ヶ月にわたってオムニ社のヴィーガンフードを食べており、アンケートでは愛犬の健康状態や食欲について観察した結果が質問されました。
アンケートでの健康に関する項目は排便の安定性、皮膚の状態、被毛の状態など身体的なものから、分離不安など精神的なもの、攻撃行動や社交性など行動に関するものまで多岐に渡りました。
ヴィーガンフードに対する嗜好性は90%以上の犬が問題なく完食しており、スムーズに受け入れられたようです。食欲や体重に関して悪影響は報告されませんでした。
体調面では胃腸の調子が悪かった犬の90%以上に改善が見られ、フケが観察された犬の77%がフケが軽減または完全に無くなったと報告され、皮膚の赤みや痒み、被毛の艶、排便の状態についても改善が報告されました。
精神や行動の面では不安を示す行動や攻撃性が軽減されたと報告されています。
この調査について研究者自身があげている注意点
このようにヴィーガンフードによって犬の健康状態が改善されたという印象のある調査結果ですが、調査を行った研究者自身がこの調査には限界があり注意するべき点があると述べています。
まず3ヶ月〜12ヶ月という給餌期間の短さと、100人の回答者というデータの少なさが回答の信頼性への限界を示しています。
回答者は自主的にヴィーガンフードを与えることを決めた人たちなので、ヴィーガンフードに対して「健康上のメリットがあるに違いない」というバイアスがかかっている可能性があります。
また調査を依頼した購入者のうち、実際に回答した調査解答率は32.6%と非常に低いものでした。
一般的に科学的な調査としてのアンケートでは60〜80%の回答率が期待されます。回答しなかった67.4%の飼い主の愛犬についてはヴィーガンフードを食べた結果はわかりません。
回答されたデータは体重以外が全て飼い主による主観的なものです。回答に対して要求された具体的な追加情報についても提供した回答者は50%しかいませんでした。そのため、この結果にはある程度の懐疑的な見方が必要であると研究者自身が述べています。
また「この調査は、ヴィーガンフードのメーカーであるオムニ社の依頼で行われたが、同社関係者は調査には携わっていない」と注釈されています。しかしフードメーカーの依頼による調査であることは知っておく必要があります。
実際にヴィーガンフードの影響を確認するためには、ヴィーガンフードではないフードを食べた対照群との対象臨床試験が必要です。
まとめ
イギリスで実施された一定期間ヴィーガンフードを与えられた犬の飼い主へのアンケート調査から、飼い主はヴィーガンフードの健康効果を認識したという報告をご紹介しました。
調査報告では「ポジティブな健康効果が認められた」と締め括られていますが、実際にはまだわからないというのが正直なところです。代替タンパク質を使ったフードの開発は重要なことですので、今後さらに効果的な研究が進められるのを待ちたいと思います。
《参考URL》
https://www.fortunejournals.com/articles/reported-health-benefits-of-a-vegan-dog-food.pdf