ペットフードの環境負荷も考える時代
気候変動やそこから来る自然資源の減少は、地球規模の問題で政治家、企業、科学者とさまざまな分野での取り組みが注目されています。
私たちが毎日愛犬に与えているペットフードも例外ではなく、この数年のうちに原材料やパッケージの「サスティナブル=持続可能性」が重視されるようになり、ペットフードが地球環境に当たる影響にも配慮しようという動きが高まっています。
食品の生産は環境負荷のほぼ4分の1を占めているそうです。犬や猫などコンパニオンアニマルの頭数は増加傾向にあり、彼らが食べているペットフードの重要な部分である食肉は最も環境負荷の高いものです。
過去の研究では、ペットフードは食肉の環境負荷全体のうちの約4分の1を担っているとも言われています。
この度、ブラジルのサンパウロ大学獣医学部動物科学の研究者チームがペットのためのドライフード、ウェットフード(缶詰やパウチ)、自家製フードについて環境に与える影響を評価し、その結果を発表しました。
900種類以上のペットフードの環境負荷を調査
研究者はドッグフード618種(ドライ316種、ウェット81種、ホームメイドタイプ139種、ウェブサイトに掲載されていた自家製フード82種)、キャットフード320種(ドライ180種、ウェット104種、ホームメイドタイプ11種、自家製フード26種)を対象としてそれぞれの環境負荷を調査しました。
フードの原材料に基づいて、温室効果ガス排出、土地利用、海洋酸性化、海や河川の富栄養化、水の使用などを評価しました。
これらのペットフードのラベルやウェブサイトから確認できた原材料は212種類で、動物性原材料は98種類(46.2%)植物性原材料は114種類(53.8%)でした。
市販のドライまたはウェットフードでは動物性49.5%植物性50.5%、ホームメイドタイプまたは自家製フードでは動物性45.3%植物性54.7%でした。また動物性か植物性かを問わずタンパク質、脂質、代謝エネルギー源が評価されました。
ウェットフードの環境負荷が最も大きかった理由
フードの原材料が環境に与える影響を評価した結果、温室効果ガス、土地や水の使用、排泄物などによる汚染など全ての要素においてウェットフードが最も環境負荷が大きく、ドライフードが最も小さく、自家製フードはその中間に位置することがわかりました。
体重10kgの犬が1日に500キロカロリーのドライフードを食べた場合の1年間の二酸化炭素排出量は828kg、ウェットフードでは1年間の二酸化炭素排出量は6,541kgになります。
これはウェットフードから摂取できるカロリーの90%が動物性原料に由来するのに対し、ドライフードでは45%であったためです。これは食品生産の中でも食肉の生産が最も環境への影響が大きいことからも分かります。
ペットフードによる環境負荷をより小さくする方法のひとつには、植物性原材料を増やすことがありますが、肉食寄りの雑食性である犬や肉食性の猫にとって健康上のリスクがあります。
人間の食用にしない内臓肉などの副産物の使用は食資源の有効利用につながりますが、この研究が行われたブラジルでは、ペットフードの製造に使用されている副産物は全体の約13%しかないことが指摘されています。
研究者が解決策として考えるのは、昆虫などの代替タンパク質を使用することです。昆虫の養殖に伴う二酸化炭素排出量は従来の食肉に比べて10分の1に抑えられます。
また過剰な栄養素の摂取を避けることも重要であるとしています。ペットとして飼育されている犬や猫の肥満は、世界の多くの国で問題視されています。
それぞれの動物に必要な栄養量を把握して、フードやトリーツを与え過ぎないことはペットの健康と環境負荷の両方の点から重要です。
まとめ
900種類以上のペットフードの環境負荷を調査した結果、地球環境に与える影響が最も大きいのはウェットフードで、ドライフードの8倍近くにもなるという研究結果をご紹介しました。
大切な愛犬や愛猫に品質の良いもの、美味しいものを食べさせたいと考えるのは自然なことですが、一方で地球の環境も一人一人が考えなくてはいけない問題です。頭の痛い問題ですが、フードやトリーツを選ぶ際の基準のひとつとして知っておく必要があります。
《参考URL》
https://www.nature.com/articles/s41598-022-22631-0