アメリカ食品医薬品局が出しているペットフード取り扱いのガイドライン
犬や猫と暮らしている人なら毎日扱うペットフードですが、一般の飼い主さんはそれらを正しく取り扱っているだろうか?という調査が、アメリカのノースカロライナ大学の分子科学生命学の研究チームによって実施され、その結果が報告されました。
アメリカで食品や医薬品の承認や規制、安全性などを管理するアメリカ食品医薬品局は、ペットフードの取り扱いについてのガイドラインを公開しています。
この調査では、このガイドラインに基づいた「正しい取り扱い」が行われているかどうかが焦点となりました。ガイドラインの内容は次のようなものです。
- 1. フードを購入する時はパッケージの破損や変質がないことを確認する
- 2. ペットフードを取り扱う前と取り扱った後には石鹸とぬるま湯で最低20秒かけて手を洗う
- 3. フードをすくう道具とペットの食器は使用するたびに洗剤で洗う
- 4. フードボウルでフードをすくわない
- 5. 古いフードや変質したフードはビニール袋の口をしっかり結んで捨てる
- 6. 残ったウェットフードは必ず冷蔵庫で保存する
- 7. ドライフードは乾燥した25℃未満の冷暗所で保管する
- 8. ドライフードはコンテナなどに移さず元の袋のまま保管する
- 9. 残ったフードはしっかりと封をする
飼い主へのアンケート調査を実施
上記のようなフード取り扱いのガイドラインがどの程度知られていて守られているのか、SNSや地元動物病院などを通じて募集した飼い主へのアンケート調査が実施され、417件の回答が寄せられました。
最も基本的で大切なのは、ガイドラインが周知されているかどうかなのですが、食品医薬品局のペットフード取り扱いガイドラインの存在を知っていると答えた回答者は5%未満という少なさでした!
このガイドラインをどこで知ったかという質問については8%が食品医薬品局から、41%がフードのラベル、28%が獣医師、11%が購入店からというものでした。
(たとえその存在を知らなくても)ガイドラインにある項目を守っているかどうかについての質問では、以下の項目については75%以上の人が「守っている」と回答しました。
- パッケージが破損していないか確認する
- フードボウルでフードをすくわない
- 残ったフードはしっかりと封をする
- フードを捨てる時はペットが触れないようにする
反対に「守っている」と言える回答が25%未満だった項目は以下の通りでした。
- ペットフードを扱う前に推奨される方法で手を洗う
- フードを食べ終わった後の食器を推奨される方法で洗う
- フードをすくった道具を推奨される方法で洗う
フードボウルについている細菌の数を調査
研究チームはさらにフードやボウルの取り扱いの正しい手順に従うことが、ボウルの細菌汚染にどのくらい影響するのかを評価するため、アンケート参加者の中から68頭の犬の飼い主50人に、フードボウルの細菌数の調査を依頼しました。
参加者は全員が最初に普段通りに扱っているフードボウルを綿棒で擦って、ベースラインとなるサンプルを採取しました。次に参加者は無作為に3つのグループABCに分けられました。
Aグループはペットフードを扱う前後に石鹸で手を洗う、フードボウルでフードをすくわない、使用後は毎回ボウルとフードをすくう道具を洗剤とお湯で洗うという、ガイドラインに従うよう指示されました。
Bグループはガイドラインよりもさらに厳しく、手洗いは石鹸とお湯で最低20秒、フードボウルは洗剤とお湯で洗い、すすぎは70度以上のお湯で30秒以上、その後清潔なタオルで完全に拭き取るよう指示されました。
Cグループは特別な指示は与えられず、2回目のサンプル採取の予定日のみが伝えられました。こうして全員が最初のサンプル採取から8日目に2回目のサンプルが採取され(ボウルを綿棒で擦る)ボウルの表面の細菌数が比較されました。
結果は明白で、AグループとBグループでは1回目のサンプルと比較してボウル表面の細菌数が著しく減少していたことが分かりました。
しかし、1週間指示に従って手やボウルを洗浄した飼い主のうち8割の人々が、この手順を続けられるとは思えないと報告したそうです。また指示を受けなかったCグループのサンプルは、1回目よりも2回目の方が細菌数が増えていました。
調査に参加した50人の参加者の多くは犬のフードボウルを毎回は洗っていませんでした。アンケートとボウルの細菌数調査の結果から、研究者は食品医薬品局のガイドラインをペットフードのパッケージに添付、獣医師からの指導などで周知する必要性に言及しています。
まとめ
アメリカで犬の飼い主を対象に行われた、ペットフードやフードボウルの衛生に関するアンケートの結果、衛生と安全のためのガイドラインは非常に知名度が低く、理想的な手順を守っている人も少なかったことと、フードボウルの細菌数調査でも推奨される手順に従うと、細菌数が大幅に減少することがわかったという結果をご紹介しました。
この調査はサンプル数の少ない小規模なものでしたが、得られた結果から今後の対策に何が必要かのヒントが得られました。
ほとんどの飼い主は、ペットフードの食器が家庭内に細菌を拡散する源になり得ることに気づかずにいます。このリスクを軽減するには、ペットフードの保管や衛生管理をすることが重要です。
《参考URL》
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0259478