幼少期の食事が犬のアトピー性皮膚炎に関連する可能性【研究結果】

幼少期の食事が犬のアトピー性皮膚炎に関連する可能性【研究結果】

犬のアトピー性皮膚炎について、幼少期の食事がその発症と関連するかもしれないという研究結果が発表されました。その内容をご紹介します。

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記事の監修

東京農工大学農学部獣医学科卒業。その後、動物病院にて勤務。動物に囲まれて暮らしたい、という想いから獣医師になり、その想い通りに現在まで、5頭の犬、7匹の猫、10匹のフェレットの他、ハムスター、カメ、デグー、水生動物たちと暮らしてきました。動物を正しく飼って、動物も人もハッピーになるための力になりたいと思っています。そのために、病気になる前や問題が起こる前に出来ることとして、犬の遺伝学、行動学、シェルターメディスンに特に興味を持って勉強しています。

犬のアトピー性皮膚炎の発症率と関連する要因をリサーチ

体を掻く犬

アトピー性皮膚炎はヒトにも犬にも多く見られる慢性的な皮膚の炎症で、アレルギー疾患の1つです。痒みを伴い根本的な治療法がないるため、ヒトにも犬にも辛い疾患です。

この度フィンランドのヘルシンキ大学の研究者が、犬のアトピー性皮膚炎の発症と関連しているかもしれない食事に関する要因と環境要因を特定したと発表しました。

この研究はヘルシンキ大学の「Dog Risk」という、犬の病気の背景にある特定の栄養学的要因、環境要因、遺伝的要因などについて研究するプログラムで集められた、飼い主からのアンケート調査結果を用いて行われました。

今回の研究では、過去に別の研究によって指摘されていた、母犬がアトピー性皮膚炎を持っていること、アレルギーが起きやすい犬種あること、その犬の被毛の50%以上の色が白いことがアトピーの発症率に関連している可能性が同様に示されました。

今回の研究ではそれに加え、12,000人以上が回答したアンケート結果を利用し、出生前から新生子期、幼犬期、成犬期を通じた食事内容とアトピー性皮膚炎の発症率との関連が調査されました。

妊娠中の母犬と離乳期直後の食事内容がアトピー性皮膚炎の発生率に関連があった

ドライフードと生肉ベースの食事

今回の研究では、アトピー性皮膚炎の発症率と関連があった食事に関する要因は、母犬の妊娠中と離乳期直後(生後1~2ヶ月)の食事内容でした。

比較分析されたのは、生の肉をベースにした45℃以上での加熱をしていない材料のみを使ったあまり加工されていない食事と、ドライフードに代表される炭水化物ベースの超加工食品で、母犬が妊娠中に、母犬が授乳期に、子犬が離乳直後(生後1~2ヶ月)に、子犬が幼犬期(生後2~6ヶ月)にどちらを食べていたのかを調べ、アトピー性皮膚炎の発症率を比較しました。

その結果、母犬が妊娠中と、子犬が生後1〜2ヶ月に与えられていた食事が、あまり加工されていないものだった場合、成犬になった時のアトピー性皮膚炎の発症率が有意に少なかったそうです。

反対に、同じ時期に与えられていた食事が炭水化物ベースの超加工食品だった場合は、成犬になった時のアトピー性皮膚炎の発症率が高かったそうです。

このリサーチは飼い主からのアンケートに基づいた統計調査結果なので、なぜそのような差が出たかまでは判っていません。

今後は、調理の有無が与える影響や、遺伝的要因との関連、子犬の時期の食事内容と腸内細菌との関係などの研究も必要であると研究者らは述べています。

その他のアトピー発症率の関連要因

ジャーマンシェパードの親子

今回の研究において、以下の要因があった場合にアトピー性皮膚炎の発症率がそうではない犬と比べて低かったそうです。

  • 妊娠中の母犬で駆虫が行われていた
  • 生後1~2ヶ月の時期から、一日に1時間以上の日光浴をしていた
  • 生後2ヶ月の時点で、子犬のボディコンディションスコアが標準(痩せても太ってもいない)であった
  • 生まれた家庭で暮らし続けていて、最低生後6ヶ月までは常に他の犬が一緒に暮らしている環境であった
  • 生後2~6カ月の間に、土の上や芝生の上で過ごす時間があった

食事の件と同様にこれらの要因とアトピー性皮膚炎発症との因果関係も推測の域を出ず明らかになっているものはありませんが、人間で考えられているのと同様に、犬アトピー性皮膚炎の発症は生活の中で接する細菌への曝露と関連がありそうだと推測されています。

まとめ

食事中の子犬

妊娠中の母犬の食事と生後1~2ヶ月の子犬が離乳して初めて食べる食事が生肉ベースのあまり加工されていない食事だった場合、成犬になってからのアトピー性皮膚炎の発症率が有意に低かったというリサーチ結果をご紹介しました。

この研究では生肉をベースとした食事か炭水化物の割合が高い超加工された食品(主にドライフード)かという、やや極端な選択肢で比較をしていて、加熱した手作り食や高品質の動物性タンパク質の割合が多いドライフードやウェットフードではどうなのかについては検討されていません。それらについても判っていくといいですね。

犬のアトピー性皮膚炎は人間と共通する点も多いため、発症に関連する要因や予防につながる要因が明らかになれば、人間の医療への応用も期待できるということです。今後の研究に期待したいと思います。

《紹介した論文》
Hemida M, Vuori KA, Salin S, Moore R, Anturaniemi J, Hielm-Björkman A. Identification of modifiable pre- and postnatal dietary and environmental exposures associated with owner-reported canine atopic dermatitis in Finland using a web-based questionnaire. PLoS One. 2020 May 29;15(5).
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0225675

【論文についての補足】

紹介されている研究は、DOHaD(胎子期と生後早期の栄養は将来の健康に大きく影響する)という概念を犬で初めて検証したものだそうです。そして、犬アトピー性皮膚炎の発症と出生前から生後早期にかけての様々な栄養学的要因、環境要因、遺伝的要因などとの関連を調査するために行われました。

この研究で示された犬アトピー性皮膚炎の発症率を高める可能性のある要因、低める可能性のある要因については、同様の結果を示す過去の論文や人間における研究結果がある一方で、異なる研究結果を示す犬での過去の研究結果や人間での研究結果もあります。また、それらの要因と実際の犬アトピー性皮膚炎の発症との因果関係についても、推測されるものはあるものの証明されたものはまだありません。今後の更なる研究が待たれるところです。

 この研究のもととなったアンケートは、論文中にも紹介されていますが現在でもネット上で見ることができます。論文には詳しく書かれていませんが、監修者がGoogle翻訳を利用して見てみたところ(アンケートはフィンランド語でのみ書かれています)、食事内容についての質問は、母犬と生後2ヶ月までのものは「家庭での手作り食」か「市販されているドッグフード」、またはその両方から選択するのみのようです。生後3か月以降に食べていた食事内容についての質問では、ドライフード、調理されたまたは未調理の肉や魚、卵、乳製品、野菜などから選べるようになっています。よって、この論文では「生肉をベースとしたあまり加工されていない食事」と「炭水化物ベースの超加工食品」との比較をした結果だと述べられていますが、母犬と生後2ヶ月までの子犬が食べていた食事内容については、本当に生肉ベースであったのか、どんな原材料が使われたどんなドッグフードであったのかまでは不明だと監修者は感じています。ただ、この論文での食品の分類は、人間の健康と食事の関係について調べるのに用いられているNOVA分類という分類法をまねており、「生肉をベースとしたあまり加工されていない食品」とはNOVA分類で最も加工の程度が低い食品グループ、「炭水化物ベースの超加工食品」とは菓子パンやインスタント麺に代表される「超加工食品」と呼ばれる食品グループに相当する食品グループとして位置付けています。

人間においても犬においても、アトピー性皮膚炎についてまだ分かっていないこともあり多くの研究が行われていますが、この研究がアトピ―性皮膚炎の予防法を確立するための研究に役立つと良い、とこの論文の筆者らは言っています。

獣医師:木下明紀子
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