老化を予防すると言われる栄養成分は犬にも効果的?
全ての生き物は必ず年を取っていきます。私たちと暮らしている犬たちも当然例外ではなく、加齢に伴って記憶力などの認知機能も低下していきます。
このような老化を防止または遅くすると言われる栄養成分は色々と発見されており、サプリメントなども販売されています。人間だけでなくドッグフードにもこれらの成分が添加されて栄養強化されているものも少なくありません。
このような栄養強化されたフードが犬の認知機能低下防止に役立つことは、過去のいくつかの研究によって示されています。しかしそれらは均一な環境で飼育された、均一な犬種や年齢の実験用の犬で研究した結果です。
このたびオーストリアのウィーンにあるメッサーリ研究所の研究チームによって、飼育環境も犬種も様々な家庭犬で栄養強化フードの効果を検証する研究結果が発表されました。
老化に伴う認知機能低下と栄養成分の関連の調査内容
この研究に参加したのは一般から募集された、雑種を含む30犬種119匹の家庭犬でした。
犬たちの簡単なデータは以下のようなものです。
- 研究開始時の平均年齢は9.1歳(6〜14歳)平均体重は22kg(7〜42kg)
- 痛みを伴う疾患、運動能力に影響する疾患、視覚や聴覚障害がないかを含めた健康診断済
- 過去のトレーニング経験について聞き取り調査して数値でスコア化
犬たちは60匹と59匹の2つのグループに分けられました。それぞれのグループは上記のデータを参考にして、2グループがほぼ同じ条件になるように考慮されています。
どちらのグループの犬も研究所からフードが支給され、1年間に渡ってそれぞれ支給されたフードだけを食べさせました。フードはどちらも米、家禽および家禽副産物、小麦、トウモロコシ、コーングルテン、小麦グルテン、ビタミンミネラルなどを含む総合栄養食ですが、1つのグループには基本的な原材料のみのフード、もう1つのグループは同じ原材料で老化予防に良いと言われる栄養成分を添加したフードが支給されました。
添加された栄養成分は、抗酸化物質(ビタミンC、ビタミンE、緑茶ポリフェノール)オメガ3脂肪酸(ドコサヘキサエン酸)リン脂質(ホスファチジルセリン)とトリプトファンでした。2種類のフードのカロリーはほぼ同じになるよう調整されています。
1年後、犬たちの認知機能テストに変化はあったか?
このように1年間という長期に渡って食事の効果を検証する調査が行われました。
全ての犬たちは調査開始する前と1年間の食事療法を終えた後に所定のテストを受けて、一般的、社会的、身体の状態とそれに関連する行動が測定されました。測定結果は比較分析のために全て数値化されます。
一連のテストの結果は、問題解決能力、社交性、大胆さ、依存傾向、トレーニング性能、行動の自立性の6つの要素で比較されました。
それぞれ違うフードを与えられた2つのグループの犬たちの間に、上記6要素では大きな違いは認められませんでした。また過去のトレーニング経験の違いも、脳の老化に関して大きな違いを示しませんでした。
均一な状態で飼育されている実験用の犬では非常に効果があったと見られる栄養強化フードですが、新しい調査結果は家庭で飼育されている全ての犬にその効果が当てはまるわけではないことを示しています。
研究者はこの結果を受けてこれらの栄養成分が老化防止に効果がないというわけではないこと、健康に害を及ぼすものではないことを協調しながらも、ドッグフードにこれらの成分が使用されている製品の宣伝文句に踊らされ過ぎないよう注意を促しています。
まとめ
老化防止に効果があるという栄養成分を強化したドッグフードを1年間与えた犬と、普通のフードを1年間与えた犬の認知機能をテストして比較したところ、あまり大きな違いが見られなかったという研究結果をご紹介しました。
研究者はこの結果について、以前の実験用の犬を対象にした研究と違う結果になったことを指摘しています。実験室で飼育されている犬と違って、家庭犬は様々な違う環境で暮らしています。つまり健康状態を決定するものは食事だけではなく、毎日の遊びや運動、睡眠、住環境など総合的に考えることが大切だと言えますね。
また、この調査に使用されたフードの原材料を上に記していますが、残念ながらあまり質の良いものとは言えません。これは推測ですが、ベースになるフードの質が良くないと、成分を強化しても高い効果は出ないということもあるかもしれません。
はっきりした結論が出ていない研究結果も、犬の食生活についてじっくり考えるきっかけになればいいですね。
《参考URL》
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0238517