2018〜19年に報告されたグレインフリーフードと心臓病の関連
最初は2018年のことでしたが、アメリカ食品医薬品局がグレインフリー(穀物を含まない)ドッグフードが犬の拡張型心筋症に関連しているかもしれないという報告を発表しました。
従来の拡張型心筋症が多発すると言われていた犬種以外での症例が散発しており、それらの犬の多くがグレインフリーフードを食べていたというのが理由です。グレインフリーのフードに多く使用されているレンズ豆やエンドウ豆などマメ科植物が関連するかもしれないという報告もありました。
続く2019年には同じくアメリカ食品医薬品局が、拡張型心筋症と診断された犬のうち10匹以上が食べていたフードのブランドを発表し、大きな話題になったことを覚えている方も多いかと思います。
この当時も詳しいことは分かっておらず、当局と学術研究者らが調査を続けていますが明確なことはわからないままです。
グレインフリーのフードと拡張型心筋症には本当に関連があるのかどうかという点について、BSMパートナーズという、ペットケアのリサーチとコンサルティングの企業が、獣医師、循環器専門獣医師、動物栄養士のチームを結成してリサーチを開始しました。
現時点でグレインフリーと拡張型心筋症の関連付けは不可能
調査チームは、犬の拡張型心筋症の原因に関する150件以上の研究を改めて検証し、その結果をレビューとして発表しました。
結論を先に述べると「犬の食事と拡張型心筋症の関連について正しい結論を出すにはさらなる研究が必要である」としながらも「拡張型心筋症に関連する文献の再検証からは、穀物を含まないフードおよびマメ科植物と拡張型心筋症の発生に明確な関係は見出せない」としています。
食品医薬品局のデータから特定のフードや成分を病気に関連付けることが不可能な理由としては、以下のようなものがあげられています。
現在の文献に基づくと、アメリカの犬の個体数全部における拡張型心筋症の発生率は0.5〜1.3%と推定されています。しかし食品医薬品局が報告した560匹という症例数はこの発生率をはるかに下回っており、病気との関連付けが不可能です。
また当局の報告では、犬が現在食べているフードについての情報だけで食事の履歴については不明、犬の年齢についても言及されていないなどデータとして不完全なため、適切な結論を出すことは不可能です。
今後の研究の課題
拡張型心筋症は、発症の原因となる因子が数多く証明されている多因子性の病気です。ですから拡張型心筋症の潜在的な原因を明らかにしていくためには、食事内容だけでなく遺伝的な要素、感染症、代謝などを研究する必要があります。
BSMパートナーズは今後これら多くの側面を調査する複数の研究を実施していく予定だそうです。そのためアメリカ食品医薬品局が昨年報告を実施した時のような小さいサンプル数ではなく、もっと大きな規模で客観的なデータを収集して分析する必要があります。
研究者はそのために全国の獣医師に対して拡張型心筋症の症例の提供を依頼するべきだとしています。
まとめ
昨年アメリカの食品医薬品局が発表した、グレインフリーフードと拡張型心筋症に関連があるかもしれないという報告に対して、民間企業の専門家チームが現時点ではフードと病気を関連付ける証拠は何もないと発表したことをご紹介しました。
大切な愛犬が毎日食べるフードですから、新しいニュースをキャッチできるようアンテナを張っておく必要がありそうですね。
《参考URL》
https://academic.oup.com/jas/article/98/6/skaa155/5857674