犬は他の犬の顔を覚えることはできるの?

犬は他の犬の顔を覚えることはできるの?

犬は他の犬の顔を覚えることができていると思いますか?毎日のお散歩ですれ違うワンちゃんや、公園で会ったら一緒に遊ぶワンちゃんなど、覚えていてもおかしくない気はしますよね。犬は他の犬の顔を覚えることはできるのか調べてみました。

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記事の監修

東京農工大学農学部獣医学科卒業。その後、動物病院にて勤務。動物に囲まれて暮らしたい、という想いから獣医師になり、その想い通りに現在まで、5頭の犬、7匹の猫、10匹のフェレットの他、ハムスター、カメ、デグー、水生動物たちと暮らしてきました。動物を正しく飼って、動物も人もハッピーになるための力になりたいと思っています。そのために、病気になる前や問題が起こる前に出来ることとして、犬の遺伝学、行動学、シェルターメディスンに特に興味を持って勉強しています。

記憶の仕方は動物によって異なる

砂浜に並んで立つチワワとパグ

愛犬に仲良くしている犬の友達はいますか?性格によって他のワンちゃんと遊ぶことを好まない子もいるので、友達を作ろうとしない子もいると思いますが、毎日のお散歩ですれ違うワンちゃんや、よく行くペットサロン、またお世話になっている動物病院で、何度か顔を合わせる他の犬もいると思います。

少しでも交流があれば飼い主さん同士は、互いを覚えていることも多いですよね。そして犬もお互いを記憶していると考えられます。ただし、人間とは違う覚え方をしているかもしれません。

記憶の種類

一緒に走るキャバリアとトイプードル

記憶には様々な分類の仕方がありますが、物事を記憶している時間で分類すると、主に短期記憶と長期記憶に分けられます。犬の記憶力についても多く研究が続けられていますが、言葉でコミュニケーションができない相手だということもあり、まだまだ未知の部分が多くあります。しかし、犬に記憶力があることは確かであり、記憶力があるからこそ、「オスワリ」や「マテ」など、しつけによってコマンドを覚えることができるのです。犬の記憶力も、記憶の持続時間から短期記憶と長期記憶に分けられます。

短期記憶とは

短期記憶は数十秒程度しか保てず、保つことができる内容が少ない記憶。例えば、人間の場合、誰かの電話番号などを紙に控えたいとき、目で見て一瞬だけ覚えて紙に書き写すことができますよね。しかし、数分後にその電話番号は頭の中に記憶されていないはずです。これが短期記憶。

良いことや悪いことと関連づけがあるか、また繰り返されるかどうかによって、その短期記憶がどの程度保持されるのか、長期記憶に移行するのか、または忘れ去られてしまうかは変わりますが、犬は人間よりも短期記憶が得意ではないのでは、と言われてきました。犬は短期記憶が苦手なのでしつけの際に「イタズラは現行犯で叱らないといけない」とも言われますが、ごほうびを与えるにしてもやってはいけないことを叱るにしても、その行動の直後でないといけないのは、短期記憶の保持時間が短いからだけではありません。記憶にある自分の行動とごほうびや叱られたことの関連付けが、行動の直後以外ではできないからです。人間同士であれば、なぜ褒められたのか・叱られたのかは、推測や言葉による説明によってできますが、犬は「これをしたらおやつをもらえた」「これをしたら叱られた」という条件付けによってでしか行動と出来事の関連付けができないのです。イタズラしたことを覚えているかいないかではなく、イタズラしたことと叱られたことを関連付けられるかどうか、どうやったら関連付けられるか、ということなのです。

【犬の短期記憶についての補足】

 犬は短期記憶が苦手だ、犬の短期記憶は数秒~10秒程度しかもたない、などともよく言われていますが、動物の記憶に関する実験は難しく、多くの意見が推測によって言われているのではないかとも感じます。2015年に発表された動物の短期記憶に関する論文では、ハチからイルカまで、25種の動物の記憶についての過去の研究の解析が行われていますが、その論文では、25種の動物の短期記憶が続く平均時間(記憶が失われるまでの時間の半分の時間)は27秒であり、犬の場合には71秒であった、人では48時間以上記憶を容易に維持させることができる、としています。
《参考論文》
Lind J, Enquist M, Ghirlanda S. Animal memory: A review of delayed matching-to-sample data. Behav Processes. 2015 Aug;117:52-8.
https://doi.org/10.1016/j.beproc.2014.11.019

獣医師:木下明紀子

長期記憶とは

長期記憶は数時間から、長ければ一生保つことができる記憶。何度も繰り返し同じ経験をすることで、習慣化されたものを含みます。飼い主さんがリードを手に取ると「お散歩だ!」と理解するのも長期記憶の力によるものです。

【犬の長期記憶についての補足】

 動物の長期記憶に関する実験もまた難しいため、犬における実験のデータは少ないのですが、犬にも宣言的記憶(陳述記憶)があり、24時間経っても飼い主がしたことを覚えているという実験結果や、犬にもエピソード記憶があるという実験結果も報告されています。記憶の内容に基づいた分類の一つである宣言的記憶は、過去の出来事や経験を覚えていて、それを思い起こすことができる記憶であり、エピソード記憶も宣言的記憶の一つになります。
《参考文献》
Fugazza, C., Pogány, Á. & Miklósi, Á. Do as I … Did! Long-term memory of imitative actions in dogs (Canis familiaris). Anim Cogn 19, 263–269 (2016).
ttps://doi.org/10.1007/s10071-015-0931-8

Fugazza C, Pogány Á, Miklósi Á. Recall of Others' Actions after Incidental Encoding Reveals Episodic-like Memory in Dogs. Curr Biol. 2016 Dec 5;26(23):3209-3213.
https://doi.org/10.1016/j.cub.2016.09.057

獣医師:木下明紀子

犬はニオイも使って認識し、記憶は感情によって強化される

散歩中に出会って鼻を合わせる2頭の犬

五感を使って記憶する

皆さんご存じの通り、犬の嗅覚は非常に優れています。人間は視覚に頼って物事を識別することが多いですが、犬が何かを識別するときは視覚の他に嗅覚にも大きく頼っています。人間が目で物を見て多くのことを確認し、情報を集め、そして記憶していくのと同様、犬は目で見て、ニオイを嗅いで認識、記憶していくことが多いでしょう。

そして、犬は聴覚も非常に優れています。毎日一緒に生活している飼い主さんの声を覚えているのはもちろんですし、足音でさえ他の人と飼い主さんを区別しているでしょう。

犬が他の犬を識別するときも、人間が犬の体全体や顔の見た目で主に判断するのと違い、遠くからでも分かるその犬のニオイや歩き方によって判断しているのではないでしょうか。

感情が加わると長期記憶になりやすい

記憶は感情が加わると記憶される時間が伸びたり忘れにくかったりします。これは人間も犬も同じで、嬉しかったことはよく覚えていますし、嫌な体験は忘れずに嫌なことが起きた場所や状況を避けようとします。よく行く公園、好きなお散歩コースなど、「楽しい」や「好き」などの感情があると、ニオイとともにその場所も記憶しているでしょう。

また、飼い主さんに褒められたときの優しい声は、「喜び」の感情として、また叱られたときの声は「不安」や「怖い」などの気持ちとともに記憶しているでしょう。これが、しつけの基本となる「関連付け」となっているのです。
視覚だけではなく、嗅覚、聴覚などによる情報は、感情、更に「同じ経験を繰り返す」ことを重ねることで、自然と長期記憶として残っていきます。

犬は他の犬の顔を覚えることはできるの?

芝生で戯れあって遊ぶ3頭の柴犬

犬は視力だけに頼らなくても他の犬を識別できる

上記でも書いたように、動物の記憶については研究が難しく、解明されていないことも多くあります。また、視覚については犬と人間では多くの違いがあります。犬は物の輪郭をはっきりと見る力は人間より弱く、色も人間ほどには鮮やかに識別していません。犬の目に映る世界は「くすんだ黄色」「青っぽい色」「暗いグレー」の3色とそれらの中間色と言われています。

逆に犬の視覚において人間より優れている点は動体視力と広い視野、また薄暗い中で物を見る能力です。

犬は他の犬の顔を覚えている?

このように、犬は視覚以外の感覚にも大きく頼っていることを考えると、犬が他の犬を識別する時、その犬の顔を覚えていることは、あまり重要ではないのかもしれません。

例えば多頭飼いのご家庭では、飼い主さん家族も犬同士も仲間だという認識を犬は持っているでしょう。飼い主さんが家の外から帰ってくる時に、物音や足音などで飼い主さんが見える前から帰ってきたことが分かったり、飼い主さんの存在をニオイでも認識していたりするのと同様に、同居の犬同士もまた、お互いのニオイや動き方で相手を識別しているのではないでしょうか。また、お散歩中に何度も会って遊んだことがある、相性の良いワンちゃんであれば、相手の顔はぼんやりとしか見えていなくても、相手を動き方やニオイによって他の犬とは区別して記憶でき、経験値、楽しいという感情によってその記憶が長く残ることになるのではないでしょうか。

犬は近くの物がぼやけて見えていますが、犬にとってはそれが当たり前の世界。飼い主さんが笑っているときの表情や怒っているときの表情、また落ち込んでいるときの表情などを見分けることができる生き物です。さらに、見た目だけではなく飼い主さんの雰囲気を感じとることもできますし、飼い主さんの体調や感情によって変わるニオイすら嗅ぎとっている可能性もあるのです。

【獣医師の補足】

この記事の通り、動物の記憶に関しては分からないことも多くあります。しかし、犬は、人や猫、牛など犬以外の動物と犬の頭部の写真を見て、どんなタイプの犬(短頭種か長頭種か、長毛か短毛かなど)であっても犬とその他の動物を区別することができた、という研究結果もありますので、犬の能力としては犬が顔によって相手を識別し、それを覚えることもできるのではないかと考えられます。
《参考文献》
Autier-Dérian, D., Deputte, B.L., Chalvet-Monfray, K. et al. Visual discrimination of species in dogs (Canis familiaris). Anim Cogn 16, 637–651 (2013).
https://doi.org/10.1007/s10071-013-0600-8

獣医師:木下明紀子

まとめ

3枚の写真を見ている犬

愛犬と日々暮らしていると、様々なシチュエーションで「覚えているんだなぁ」と感じることがありますよね。犬を含め、動物の記憶力については解明されていないことも多いですが、どんな動物においても好きな物や人に対しての記憶は、長期記憶になりやすいと言われています。

大好きな飼い主さんや、仲の良い犬の友達との楽しい経験を何度も繰り返すことで、愛犬にとって幸せな長期記憶が増えていくようです。犬のお友達や私たち飼い主のことも、ずっと覚えていてくれると嬉しいですね。もしかしたら犬は顔を見て犬のお友達や私たちのことを認識しているのではないかもしれませんが、犬なりの最良の方法で好きな人やお友達のことを分かっているのでしょうね。

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