人気上昇中のホームメイドタイプの冷蔵フード
この数年、アメリカのドッグフード市場で少しずつ売上を伸ばして注目が集まっているホームメイドタイプのフードがあります。従来のドライフードとは見た目も販売方法も全く異なっている、このホームメイドタイプとは一食ずつのパッケージで冷蔵または冷凍で販売されています。
当初は犬のサイズに合わせた一食分ずつのパッケージを1週間分などの単位で宅配するという形がメインでしたが、人気が高まって参入業者が増えるにつれ大手ペット用品店などに専用の冷蔵庫を設置しての店頭販売も出てきています。
フードは肉、野菜、イモ類、穀類などを煮たりローストしたりした、家庭で作る手作り食のような見た目です。小さく切った原材料が全て目で見て確認でき、一見すると人間のために作った食事のようでもあります。
これらのフードは、ヒューマングレードと呼ばれる人間の食べ物として適格と認められた原材料が使用されています。さらに原材料からだけでは摂取できないビタミンやミネラル類はサプリメントとして添加されており、従来のドッグフードのように必要な栄養素が揃った総合栄養食でもあります。
そしてこの度初めて、このホームメイドタイプのヒューマングレード・ドッグフードについて栄養と消化性に関するリサーチが行われました。
ホームメイドタイプのフードのアミノ酸の消化率を調査
リサーチを行い発表したのはアメリカのイリノイ大学の農学、環境科学の研究チームです。
人気が高まっているにも関わらず、今までほとんど研究されてこなかったホームメイドタイプのドッグフードについてテストを行いました。テストされたのは、同一の会社の6種類のフードです。この会社のフードはアメリカ農務省が人間の食用に適すると認定したヒューマングレードの原材料のみを使用していると公表しています。
テストされたフードはビーフ&ポテト、チキン&ホワイトライス、フィッシュ&スイートポテト、ラム&ブラウンライス、ターキー&全粒粉マカロニ、ベニソン(鹿肉)&スクウォッシュの6種類です。
全てのフードを凍結乾燥して粉砕し、ニワトリに食べさせてその便を分析し原材料がどの程度消化されているかが調査されます。なぜドッグフードなのにニワトリ?と思いますよね。しかしニワトリは食性が雑食で恒温動物である点や分泌される消化酵素や消化器官の構造が、ヒトや犬に類似する点が多いそうです。
さらに消化管が比較的短いため食物が通過して消化する時間も短く、調査に最適なのだそうです。
ホームメイドタイプは非常に消化率が高い
テストの結果、6種類のフード全てにおいて非常によく消化されていました。特に大切なアミノ酸の消化率は全てのフードで85%以上となっており、90%以上の消化率を示すものもありました。これは従来のドライフードのアミノ酸消化率55%〜83%と比較すると、その消化性の高さがよく分かります。
このようにヒューマングレードの原材料を使用したホームメイドタイプのフードは消化率が高いため、従来のドッグフードのガイドラインを適用すると栄養が過剰になる可能性も指摘されています。
今回のテストは一社のフードだけを対象に行われましたが、同研究チームは他のメーカーの同じタイプのフードでもリサーチを継続しています。
まとめ
アメリカで人気が高まっているヒューマングレードの原材料を使ったホームメイドタイプのドッグフードの栄養と消化性に関するリサーチから、このタイプのフードは非常に消化がよく栄養素が効率よく摂取できるということが分かった結果をご紹介しました。
日本でも必要な栄養素を全て調整した手作りタイプのフードは販売されていますが、非常に規模が小さくまだまだほとんど知名度がありません。
愛犬の食事を手作りする人はかなり定着してきましたが、手作り派の人にとってはホームメイドタイプのフードは忙しい時など、臨時で利用するには理想的とも言えます。
犬にとって美味しくて、消化が良く栄養のバランスが取れているのも魅力のあるフードです。お値段はどうしても高くなってしまいますが、このような選択肢が増えて行くのはありがたいことです。日本でも冷蔵または冷凍タイプのホームメイドタイプのドッグフードが今後増えて行くことを期待したいですね。
《参考URL》
https://academic.oup.com/tas/advance-article/doi/10.1093/tas/txz175/5660976