フードの計量方法として最も一般的な計量カップ
犬の毎日の食事として最も多く利用されているのはドライフードです。毎回何らかの形で計量して所定の量を与えている方がほとんどですが、計量に使われる器具で手軽で一般的なのは計量カップです。
カナダのゲルフ大学の研究者が、飼い主が愛犬のために計測しているフードの量は、どの程度正確なのかをリサーチし、その結果を発表しました。
その結果、計量カップでの計測は不正確であることが多く、犬の体重管理などにかかわる問題点も浮かび上がってきました。
フードの計量はどの程度正確にできているかをリサーチ
研究チームは、このリサーチのために犬の飼い主100人を募集しました。参加者たちは3種類の計量器具の中からそれぞれ指定された一種類を使用して、指定された3種類の分量のフードを計測するよう依頼されました。
計量器具は以下の3種類が用意されました。
- ペットフード計量用に市販されている目盛り付きスコップ(容量は2カップ)
- 料理用の液体計量カップ(容量は2カップ)
- ペットフード計量用の目盛り付き計量カップ(容量は1カップ)
参加者は割り当てられた器具を使って、4分の1カップ、2分の1カップ、1カップ分のフードをすくい、すくったそれぞれのフードの重さをスケールで測定し、正確な重量と比較して誤差を算出しました。
測定と誤差の算出の結果、正確な量よりも48%少なすぎた計測から152%多すぎた計測まで、不正確な結果が多く見られました。
特に4分の1カップのフードを計測したときに最も大きな誤差があり、正確ではない結果が多かったことがわかりました。また2カップの液体計量カップを使用した人は、3種類の分量の計測全てにおいて最も正確ではない確率が高かったこともわかりました。
容量2カップの器具で4分の1カップや2分の1カップを計測するとき、カップの持ち方や目盛りの見方ひとつで誤差が出やすくなります。また、容量1カップの計量カップで1カップ分の計測を行ったパターンが最も正確でした。
不正確な計量の弊害と対策は?
少ない分量の計測に誤差が多いことは、注意が必要な点の1つです。フードの分量が少ないのは小型犬です。人間の目には小さな誤差に見えても体の小さい犬にとっては大きな差になりがちです。
毎日のカロリー摂取量が過剰になったり、反対に少なすぎたりすることで健康を害するリスクが小型犬ではより高い可能性が示されました。
小型犬に限らず、体重過多や肥満は常にペットの健康問題の上位にあります。今回の研究でも参加者たちがフードの分量を計測する際に、正確な量よりも多過ぎる計測をする例が多かったことから、給餌量の正確な計測が肥満予防や健康管理に重要であることも改めて確認されました。
正確な計測のためには、必要な給餌量に合わせた計量カップを使用するというのはひとつの方法です。毎食4分の1カップを給餌する場合には、4分の1カップの容量のカップを使用する方が正確にフード量を計測できるということです。計測したい分量とカップの容量の差が大きくなるほど誤差も大きくなります。
最も正確な方法は、キッチンスケールを利用してフードを重量で計測することです。最初は少し面倒な感じがするかもしれませんが、慣れてしまえばどうということはありません。
まとめ
犬の飼い主たちにドライフードの分量を計測してもらうリサーチを通じて、きちんと計量していると思っていても実はかなり不正確であることが明らかになったという結果をご紹介しました。
良質のフードを吟味して与えていても、量が少なすぎたり多すぎたりしては健康を保つことが難しくなります。
毎日正しい分量のフードを与えることが、健康的な体重と健康管理につながるということを改めて知らされるリサーチ結果でした。
《参考記事》
https://phys.org/news/2019-10-dog-owners-inaccurately-kibble.html
《紹介した研究の論文》
この研究の以前にもカップでドライフードを量った場合の不正確さを指摘している論文はあり、本研究では様々なタイプのカップで様々な分量を量った場合の正確さの違いを評価するために行ったということです。フードの計測に使われたドライフードは、ロイヤルカナンの中型犬用の製品で、粒の大きさは15.5×15×7.5(mm)です。また、本論文ではカップの大きさを1カップや2カップと表現していますが、1カップの容量は国によって異なります。今回の研究で使用されたカップはおそらく1カップが240mLのものと考えられ、私たちがイメージするカップよりも少し大きなものが使われています。
この記事に書かれているように、研究者たちはキッチンスケールを使ってフードの重量を量ることをベストな方法として推奨しています。また、カップを使用する場合には、特に小型犬のために少量のフードを計測する場合、量り取る量のできるだけ近い容量の少ないカップを使用する以外に、1回に量る量を多くする、つまり、フードを与える度に1回分を計量するのではなく、一日分の量をまとめて計量しておき、それを与える回数に分けて与えることを薦めています。
ちなみに、この研究に参加してくれた人たちには、フードを計量するための量りがプレゼントされたとのことです。そして、最初はキッチンスケールを使ってフードを計量していた人は約20%いたけれど、今もそれを続けている人はわずか2人しかいなかったことからも、スケールをプレゼントされたことやスケールでドライフードを計量するデモンストレーションをすることなどによって、どのくらいの飼い主がスケールを使うようになってくれるか調べてみたいと研究者たちは言っています。