犬のアトピー性皮膚炎のための新しい薬
犬のアトピー性皮膚炎は、アレルギーの一つで環境中のアレルゲンに反応して起こります。強い痒みや皮膚の乾燥を伴うため、足で掻いたり噛んだり舐めたりすることで皮膚が傷つきただれてしまうこともよくあります。
痒みは痛み同様に犬の生活の質を大きく低下させます。絶えず痒がっている様子を見る飼い主さんの心の負担も大きいものです。現在も治療のために内服薬や外用薬が使用されていますが、この度アメリカの医薬品会社キンドレッド・バイオサイエンスが犬のアトピー性皮膚炎のための新しい薬の試験で有効な結果が出たことを発表し、期待が寄せられています。
新しい薬KIND-016
犬アトピー性皮膚炎のための新しい薬の名前はKIND-016と言います。痒みを引き起こす物質インターロイキン31(IL-31)を標的とする、イヌ化モノクローナル抗体医薬品です。
キンドレッド社はKIND-016の試験のために、アトピー性皮膚炎を患っている62匹の家庭犬を登録しました。犬の掻痒(そうよう。痒いところを掻くこと)の重症度とアトピー性皮膚炎の重症度は、それぞれのスコアで指数化されています。KIND-016またはプラセボ偽薬を投与して、4時間後、1〜3日後の掻痒の重症度スコアが評価されました。アトピー性皮膚炎の重症度は投与当日と、その後1、2、3、4、6、8週目のスコアが評価されました。評価されたスコアが投与時のベースラインから50%以上減少した場合を治療の成功と定義しました。
アトピー性皮膚炎重症度スコアでは、KIND-016投与グループは1週目でスコアが70%減少する例が見られました。また4週目にはKIND-016投与グループの60.7%が治療成功基準を満たしたのに対しプラセボ投与グループでは33.3%でした。
掻痒重症度スコアでは、4時間後にはKIND-016投与グループに減少が見られ、24時間後には有意に有効性が示されました。
最も辛い症状である痒みが投与後数時間で減少し、その後も持続するというのはとても嬉しい結果と言えますね。
アトピー性皮膚炎で苦しむ犬の希望となる可能性
現在、世界中の犬の10〜15%がアトピー性皮膚炎に罹患していると推定されているそうです。薬を使わずに日常生活の注意でコントロールできるくらいの軽度なら良いのですが、重症のアトピー性皮膚炎は本当に辛いものです。そのような重症の犬と飼い主さんにとって、新しい薬の試験結果が良好であったというのは大きな希望となることでしょう。今回の試験はKIND-016の5回目の有効性試験で、キンドレッド・バイオサイエンス社はいよいよKIND-016の製造工場の試運転を開始すると発表しています。
動物病院でこの薬が処方されるようになるのは、まだもう少し先ですが、治療の選択肢が増えるのは朗報と言えますね。
まとめ
アメリカの医薬品会社が犬のアトピー性皮膚炎の新しい薬を開発し、その試験結果が良好であったというニュースをご紹介しました。大切な愛犬が病気を患っているのは辛いものですが、獣医学も進歩し続けています。今辛い思いをしている飼い主さんも希望を捨てず、少しでも多くの犬と飼い主さんが長く笑顔で過ごせることを願ってやみません。