犬の体を維持するための必要エネルギー量とは
多くの場合、ドッグフードに表示されている1日の給与量は月齢別と体重別に分けられています。成犬になると、給与量は体重で計算され【目安として】表示されています。この給与量の目安通りにご飯を与えているのに、太りすぎ、痩せすぎという差が出てしまうのはなぜなのでしょうか?
総合栄養食ドッグフードに表示されている給与量の目安とは
- 1歳以上の健康な犬(理想体型=理想体重)
- 平均的な運動量が毎日維持されている犬
- オヤツなどの間食がない習慣の犬
- 平均的な骨格筋量、内臓脂肪量の犬
これらの条件を満たす犬の体重に合った給与量が、目安となっています。
犬のための総合栄養食とは、その犬が【ドッグフードと水だけ】で健康な体を維持していくために考えられた栄養バランスのフードです。
つまり、ドッグフード以外にオヤツや人間のご飯のおこぼれをもらってしまうと、栄養バランスは崩れてしまいます。オヤツを全く与えてはダメということではなく、1日のドッグフード給与量の15%~20%(g)であれば、総合栄養食の栄養バランスに影響がないとされています。
給与量の目安となっている、平均的な犬の条件に当てはまらない場合、給与量とその犬の必要なご飯の量には、誤差がうまれます。
犬の体に必要なエネルギー量とは
犬の総合栄養食で、全年齢対応と表示されているフードは、幼齢期から高齢期まで全ての年齢において、健康を維持できる栄養バランスということになりますが、1つの種類のご飯で体重に合わせた給与量の調整だけでは、健康に育てていくことは不可能です。
幼齢期には、目まぐるしい体の成長で、たくさんの栄養が必要になり、給与量は多くなります。成犬期には、バランスのとれた体を維持するために、個体に合う栄養が必要になります。高齢期には、幼齢、成犬期に比べ、エネルギーの必要量が減り、給与量は減ります。
このように、これら全ての年齢に1つのフードと水だけで対応するのは、不可能です。高齢になって、内臓数値が悪くなったり、コレステロール値が高くなったりするのは、年齢に合わせた栄養内容ではなく、給与量だけで食事管理をされていることも原因の1つです。
表示されているドッグフード給与量は体重の増減で変動させる?
小中型犬種の場合、10か月~1歳、大型犬種の場合、1歳半程度で、成犬期(体型維持期)になります。
幼齢期には、月齢や体重に合わせて増量させていたフードは、成犬期には〝理想体型″に合わせた量で安定させます。
成犬期に入っても、体重の増加に合わせてフード量を増やし続けてしまうことが、肥満の大きな原因の1つです。
※フードに記載されている成犬期の給与量は、【維持したい体重に合わせた給与量】です。
つまり、体重5㎏で理想体型の犬が、目安給与量を食べ続けていて体重が8㎏になったからといって、ご飯の量を8㎏体重に合わせて給与量を増量してしまうと、太ってしまいます。
逆に、体重10㎏で理想体型の犬が、目安給与量を食べ続けていて体重が8㎏になったからといって、ご飯の量を8㎏の体重に合わせて給与量を減量してしまうと、痩せすぎてしまいます。
成犬期の犬は、体重の増減に合わせて給与量を変動させるのではなく、個体に合わせた給与量の調整が必要です。
体重が同じでも与えるご飯の量が違います
近年、ドッグフードの研究が進み、犬種別、体質別、療法食、ボディケア食など、素材、栄養バランス、味付けや形匂いなど、とても多くのフードが販売されています。
どのフードであっても、【総合栄養食】と書かれているフードを選んで、適量を与えていれば、他の食材などで補わなくても、大きく栄養バランスが崩れる心配はありません。※特別療法食や体重コントロール専用フードは当てはまりません。
ですが、なぜ、体重が同じ犬でもフード給与量が異なるのでしょうか?
生活環境で異なる給与量
【目安給与量より増量が必要なケース】成犬期
- 多頭飼育である
- 呼吸数が多い犬種
- スポーツをしている犬種
- 未去勢未避妊で縄張り意識が強い、異性別の犬の臭いに敏感
- マーキングが頻繁
- 落ち着きがなくいつも陽気で動き回っている活動的な犬
- 睡眠時間が短い犬
- 365日外飼育
- 筋肉質な犬種
- 寒がりな犬
【目安給与量より減量が必要なケース】成犬期
- 1頭飼育
- 毎日一人きりでお留守番
- インドアドッグ、毎日お散歩に行かない犬
- 去勢、避妊済みで他犬や臭いに対して興味がない
- いつも落ち着いていてあまり動かない
- 完全室内飼育で空調は365日整っている
- お昼寝もあわせて10時間程度の睡眠が毎日とれている
- 愛玩犬種
このように、生活環境や性格でも、その個体に必要なご飯の量は変わります。
犬種で異なる給与量
例えば、8㎏のプードルと8㎏のフレンチブルドッグでは、必要なご飯の給与量は異なります。どちらも活動的な個体が多い犬種ですが、生活環境がまったく同じであっても、給与量は同じ栄養バランスのフードでは、フレンチブルドッグの方が多く必要になります。
短頭犬種で呼吸数が多く、筋肉質な犬種です。骨格筋量もプードルと比べると多く、逆に脂肪量は少なめです。食欲旺盛な個体が多く、満足感を得られる給与量が多い犬種でもあります。
寒さ暑さに、特に弱いフレンチブルドッグは、生きているだけでプードルより多くのエネルギーを消費します。さらに、多頭飼育で他の犬と遊ぶ時間があり、未去勢未避妊で異性犬に対して敏感な犬は、さらにエネルギー消費が大きく、給与量が多くなります。
ボーダーコリーやシェットランド・シープドッグ、ハウンド系犬種などは、理想的な体型の維持には、多くの運動量が必要で、エネルギー消費も多いので給与量は多くなります。
必要なご飯の量は、空腹を感じさせない量
目安の食事量を与えていても、理想的な体型の維持に苦戦している場合は、愛犬にとって適切な食事量ではないことがあります。犬の健康管理で、体重の増減は病気のサインの場合もあるので、定期的な体重測定と、健康診断は欠かせません。
犬種図鑑に書かれている体重も、あくまでも目安です。大切なのは、愛犬に合わせた食事量を知ることです。
犬の理想体型の判断に、【くびれ】を指摘する飼い主さんが多くいます。理想体型とは、あばら骨が手で触って確認でき、緩やかなくびれが真上から見た時に分かることが、良いとされています。
ですが、飼い主さんによる感覚の違いが大きく、理想体型のガイドラインとしては不完全です。特に、初めて犬を飼う飼い主さんは【太らせない】ことにこだわり過ぎて、過度な食事制限をしてしまう方が多くいます。
食べたいだけご飯をあげれば良いのではなく、食後に満腹感が得られるだけの食事量は絶対に必要なのです。
空腹感のサイン
- いつまでも、いつまでも空になった自分の食器を舐め続ける
- 食材ゴミをあさる
- 拾い食いをする
- 胃液を吐くことが多い
- 食べることに異様な執着が強くなっていく
空腹で、食べ物に異様なほど執着し、ゴミなどを食べるなどして誤飲の危険が高まることは、愛犬にとって望ましい食環境ではありません。
太らせすぎて、急激な減量のダイエットも、大きなストレスです。
【○㎏だから〇g】と決めつけずに、バランスが良く健康的な食事で、精神的に満足できるだけの食事量を考えてあげましょう。
うちの子に合わせたご飯の量はどうやって決める?
まずは、現在の愛犬の体質をしっかりと把握しましょう。
- 筋肉質なのかどうか?
- 運動量が多いのかどうか?
- 健康診断の成績
- 皮下脂肪、内臓脂肪レベルの把握
- 獣医師による理想体型の判断
これらをもとに、現在のご飯の栄養バランスが、愛犬に合っているかを検討します。
フードを選定したら、まずは現在の体重の給与量を確認します。痩せすぎていたり、食後の満腹感が不足したりしていると感じたら、給与量目安の最大値を2週間~2か月与えて、体重の増減や体型の変化を観察します。
現在、理想体型であれば、目安給与量を2週間~2か月与えて、体重の増減や体型の変化を観察します。
食べ過ぎれば下痢になり、少なすぎれば食事の時間のまえに胃液を吐くこともあります。健康でなければ判断できませんので、必ず獣医師のアドバイスを受けるようにしましょう。
理想体重は個々に違う
近年、図鑑に記載されている一般的な犬種の理想体重が、当てはまらない個体が多くなってきました。生活環境や遺伝、性格などで必要エネルギー量が異なり、無理に理想体重にあてはめようとしても、目安給与量が適量ではないケースがとても多いのです。
ちょっとぽっちゃりなのかな?平均より体が小さいのかな?など、飼い主さんを悩ませる原因は多いかもしれませんが、健康で満腹を感じられる質の良い適量の食事を食べて、幸せに生きられることが最も大切なことです。
ぜひ、体型に過敏にならずに、愛犬の日頃の食環境をよく観察してみてください。
まとめ
一昔前には、愛犬を溺愛するあまり食事を与えすぎて、太りすぎてダイエットをさせられる犬が多くいました。近年では、肥満は病気の原因や足腰への負担が大きいことが、多くの飼い主さんに周知され、ドッグフードの目安量を守って与える飼い主さんが多くなりました。これは、とても良いことです。
しかし、犬も人間と同じように、食べても食べても太らない子もいれば、少し食べただけでも太ってしまう子もいます。また、活発な子は、体型に合わない食事量を必要とする子もいます。
年齢が同じ、体重が同じでも、食べたいご飯の量はそれぞれ違います。太らせ過ぎは良いことではありません。ですが、人間の世界でも痩せすぎたモデル体型の人が一般的ではないように、犬の理想体型も、体重モデル値が健康とは限らないのです。
短い犬生です。空腹で眠れない時間を過ごさせたり、誤飲のリスクを高めたりするよりも、健康的な体型の範囲内で、お腹いっぱい食べて、ぐっすり眠れる時間を大切にしてあげてほしいと思います。
体型の基準としてBCS(ボディコンディションスコア)というものがあります。
動物の体形を5段階に分け、体重と体格の評価をすることができます。生活スタイルや犬種によって1日に必要なカロリーは変わります。理想体型とはどのような体型なのかを確認し、その体型が維持できるドッグフードの量を見つけていくことも健康管理の上で大切です。
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/petfood_guide/pdf/8.pdf